ケータイ小説と『小悪魔ageha』ブーム
ギャルとは闇(病み)である。ギャルの一番病んでいる部分を抽出したかのようなケータイ小説が生まれ、2006年に『恋空』や『赤い糸』などが大ヒットした。どちらも携帯の小説投稿サービス「魔法のiらんど」(1999年〜)から生まれた素人の手による投稿小説である。これらが書籍化されると、たちまち1週間で100万部といった驚異的な売れ行きを記録していく。どのケータイ小説も“実話”であることが喧伝されたが、内容は似通っていた。
その多くが、10代の少女が主人公となる悲恋もの。仲が良かった彼氏とのケータイメールを通じて深まった恋が、突然の難病(または交通事故)による彼の死で締めくくられる。病み語り(メンタルヘルスにダメージを受けた実体験)、つまりトラウマ語りの要素が出ているものが多い。
ヒロイン(自分)は、すべては終わってしまったというあきらめの境地で語っている。それは浜崎あゆみの歌詞に通じる部分があり、実際、作中で彼女の曲の歌詞が引用されることも多い。ケータイ小説もまた、浜崎あゆみの派生文化に見えてくる。 「闇(病み)」と「盛り」をワンセットにしてパッケージングしたのが、雑誌『小悪魔ageha』だ。『小悪魔ageha』は、2006年に月刊誌として創刊されたキャバクラ嬢向けの雑誌である。ページに収まる情報量が極めて多く、ド派手な誌面構成。読者モデルが多く起用されたが、その多くが地方のキャバクラ嬢たち。とはいえ、水商売に限らず、一般(?)ギャルたちの支持を集めていた。
『小悪魔ageha』の伝説は2009年2月号で打ち立てられた。読者モデルたちが、自分のネガティブな部分について赤裸々に語るという特集内容。表紙にはポエム風の見出しが踊っていた。
「病みから闇へ 漆黒でも暗黒でもない 私たちの黒い闇 服を脱いだら 皮膚をはいだら 私たちは決して白くない」。ギャルとは「闇(病み)」と「盛り」が共存した存在だということが、ここで強く印象づけられた。 2000年代のギャルは、弱さを人にさらけ出すことのできる強い存在になった。まるでハードボイルド映画の主人公だ。いや、たぶんギャルはハードボイルドの一形態なのだ。
そういえば、『小悪魔ageha』の創刊編集長である中條寿子は、こんなことを言っていた。『小悪魔ageha』は、一切「モテ」を意識しない誌面づくりに気を使っていたと。これは、明らかに当時の女性誌の反主流をいくものだった。
エビちゃん(蛯原友里)が表紙だった時代の『CanCam』が当時の王道。つまり「モテ服」「ゆるふわ・スイーツ系」といった女性誌の全盛期に『小悪魔ageha』は、そのオルタナティブとして登場したのだ。ハードボイルドだ。
コギャルの時代から10年以上の歳月が経ち、ギャルは単なる一時のファッションの流行ではなくなっていた。ギャルはスタイルとして定着し、20代を超えてもギャルで居続けることも自由になった。誰も浜崎あゆみにはなれないけど、ギャルにならなれる。「ギャルとは、ライフスタイルである」──そんな呼び方もまったく違和感はない。
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今井夏帆
セクシー女優
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速水健朗
編集者・ライター
主な著書に映画やドラマに描かれた東京を論じる『東京β 更新し続ける都市の物語』(筑摩書房)や『フード左翼とフード右翼』(朝日新書)。『バンド臨終図巻』(文春文庫)などがある。佐藤大、大山顕らと結成する団地団にも在籍中。現在、1980年代のバブル時代の文化やドラマについての書籍を執筆中。
Twitter:https://twitter.com/gotanda6
Blog:https://hayamiz.hatenablog.com/
連載
女性における日本特異の文化として、時代の流行とも絡みながら平成の30年間に独自の変遷をたどってきた「ギャル」。 振り返れば常にギャルがいた平成から令和を迎え、その元年が終わろうとするいま。2020年という新たな10年間を前に、1990年代/2000年代/2010年代と時代を彩ってきたギャルを振り返る。 書き手は1973年に生まれ『ケータイ小説的。』(2008年)で浜崎あゆみらギャル文化の象徴とケータイ小説との密接な関係に切り込んだライターの速水健朗。 象徴的なアイテム・制服をまとい各年代のギャルを演じるモデルは、ギャル女優として活躍するセクシー女優のAIKAと今井夏帆というギャル文化をリアルタイムで経験してきた2人。 当時のギャルを取り巻く環境とその中で彼女たちが武装化、部族化、ハードボイルド化していったのか。それぞれが経験してきた(または未体験の)ギャル文化に思いを馳せてほしい。
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