スタイリッシュであり、唯一無二であるノイタミナとその音楽
──お二人から見たノイタミナ音楽の魅力ってなんですか?DJ和 DJという立場から見ると、全ての音楽がここにあると感じていて、ノイタミナを通して全ジャンルの音楽を聴けるので、いろんな音楽に触れられることが魅力だと思います。
吉田 いい意味で全アーティストにプレッシャーがかかっていると思うんです。ノイタミナは、アニメだけじゃなくて、意外なアーティストを起用したり、なおかつ作品のテーマに合わせた音楽が多くて、オープニングやエンディングもすごく評価されてる。
だから、ただ”アニソンをつくる”とはちょっと違う、大喜利のお題のような縛りとして”一体あのアーティストはこの作品にどんな音楽をつくってくるのか”という期待のプレッシャーがある。
たとえばそのプレッシャーをロックバンドなりにうまく解釈したのが、フジファブリックさんが歌う『つり球』の「徒然モノクローム」や、Base Ball Bearさんが歌う『図書館戦争』の「changes」になるんですよ。
彼らのロックバンドという自分たちの音楽性を残しながらも、ノイタミナというアニメを自分たちなりに解釈して、ファンの期待に応える曲を生み出した。
さらにもっと深く解釈したのが、ミネラル☆ミラクル☆ミューズさんが歌う『サムライフラメンコ』の「デートTIME」だと思います。agehaspringsの玉井健二さんがプロデュースしてるんですけど、僕がノイタミナの楽曲の中で1曲選ぶとするなら、この楽曲ですね。ノイタミナの音楽という状況を最大限に活かして、すごい楽曲をつくってきた。
DJ和 あれは究極ですね(笑)。
ノイタミナでは、1回やったことは禁止
──そうした音楽を生み出すノイタミナは、やはりほかのアニメ枠とは違ったモノとして捉えられると思うのですが、お二人はその点はどう感じていますか?DJ和 僕はすごくスタイリッシュに感じますね。ノイタミナを言葉に表すときに、何が適切なのか良く考えているのですが、やっぱりスタイリッシュであり青春をくれることだと思います。
──その青春を感じるのは、高校時代、本当はアニソンやJ-POPが好きだったけど、外にはHIPHOPが好きな素振りを見せていたようなモヤモヤがあったからなんですかね。
DJ和 それはあるかも知れないですね(笑)。中高生の頃を思い出すと、ノイタミナの作品のような楽しい日々ってあったかなぁって考えたり、こういうことあったらよかったなぁって浸ったりして、音楽を含めていろんな青春を思い出させてくれるかもしれないですね。
吉田 ノイタミナは結構シンプルだと思います。ノイタミナのプロデューサーの山本幸治さんが、この10年間ノイタミナを続けているのを見てきて、それを一言で言うとしたら「1回やったことは禁止」だと思うんですよね。
例えば『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない(以下、あの花)」がアニメファン以外にもウケたからと言って、もう1回泣けるような作品をやろうとしてないですよね。本当はやった方がいいかもしれないのに。
DJ和 確かに普通はヒットしたら「こういうものがみんな好きなんだ」という感じで、違う形で似たような内容の作品を出しますよね。
吉田 本当によく考えられていると思います。だからノイミタナで見る価値がなかった作品は1つもなかったと思います。
『あの花』を見た瞬間、「これだ!」と思った
──音楽への思い入れはかなりあると思いますが、楽曲抜きで思い出深い作品はありますか?DJ和 僕は『あの花』ですね。この作品で人生の方向性が決まったので(笑)。
この作品は、めんま(本間芽衣子)という存在に加えて、EDの「secret base~君がくれたもの~(10 years after ver.)」はもちろん、OPのGalileo Galileiさんの「青い栞」がぴったりで、アニメを見るごとに体に染み込んでいくような魅力がありました。
見た瞬間、おれが探してたのは「これだ!」と思って、改めて、アニメとJ-POPしか流さないと決めましたね。
吉田 僕は『PSYCHO-PASS サイコパス』ですね。この間、評論家の宇野常寛さんとお話ししている時に、僕たちは何をもってドラマやアニメ、映画を見ているのか考えてみたら“脚本厨”という言葉にたどり着いたんです。
脚本という視点から作品を見た時に『PSYCHO-PASS サイコパス』は本当に素晴らしい作品と思いました。社会を批判するフレームをつくったことがすごくて、しかもそのフレームが納得のいくフレームだった。
納得のいくフレームをどういう理論で乗り越えていくか、という論理性がきっちりしていて、かつ、この作品は脚本家が自分のために書いた脚本であるからおもしろいんだと思います。『PSYCHO-PASS サイコパス』はここ数年の中で一番良くできている作品だと思ってます。
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