4億円男bambooインタビュー エロゲ会社の社長が語る終幕とお金集めの未来

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アニメやゲームへの貢献「まだ成否は判断できない」

──顧問としての2年間で、クラウドファンディング業界を俯瞰的にみる機会も増えたと思います。プラットフォームの増加に伴い、競争は激化しているんでしょうか?

bamboo 一時的に細かなジャンルに特化するかたちで数がぐっと増えて、その中で生き残ったプラットフォームによって棲み分けされている印象です。

たとえばガジェットに強かったり、地域貢献に関するプロジェクトが充実していたり、結果的にジャンルよりも少し大きな枠で、各社が特色を出しています。CAMPFIREでいうとサブカルチャーでの実績がストロングポイントです。 bamboo 一方で、「ファンティア」や「BOOTH」など、様々なクリエイター支援サービスも増えています。オタク系のイラストや音楽はそういったサービスと親和性が高いですし、BtoCが増えてきたのはクリエイターとしてもミュージシャンとしても大歓迎です。

10年前からいわれている「ファンが1000人いれば一生食っていける」ということが、より現実的になってますよね。

──アニメやゲームといった業界で、クラウドファンディングはどれだけの可能性を示したと言えるのでしょうか?

bamboo 本格的に成功したと言える作品はまだ少ないと思います。なぜかって、資金調達がうまくいっても、現段階で作品をつくっているプロジェクトが多いから。ほとんどのプロジェクトが、作品が完成してファンに届けるという最終的な成否が判断できる地点まで到達していない状況です。

目標金額以上の資金が集まって、つくられた作品自体もヒットしたと言えるのは片渕須直監督の『この世界の片隅に』くらいじゃないですか。

とはいえ、可能性は出てきています。当然、映画の配給やアニメ・ゲームの制作(開発)費を100%調達したいとなったら、前段階の準備を長年かけて仕込まないといけません。

でも、パイロット版の制作費など、つくりたいものをある程度かたちにして、大きな会社に売り込んで次のステップに進むための方法論としては非常に優秀です。

──CAMPFIREも含めてクラウドファンディングの直近の課題と感じていることはありますか?

bamboo 発送関係ですね。国内のプラットフォームのほとんどが、リターンの中に送料もインクルードしています。そうすると海外へ発送する場合、想定外にコストが膨らんでしまうケースが出てきています。

僕自身、目標金額の95%が海外からという案件を経験したこともあります。オタク系のプロジェクトは海外からも多くの支援が集まりやすいですし、個人的に日本国内で展開していくには限界があると思っているので、海外発送も考慮した資金調達の仕組みをつくらないといけないと思っています。

ブランド終了は「2億円調達できたら撤回するかもしれない」

──最後に『MUSICA!』をもって終了する美少女ゲームブランド・OVERDRIVEについてもお聞きします。率直に、本当に終了するんですか?

bamboo 終了します。OVERDRIVEのレーベルとして出すのが最後になるというだけで、会社を畳むわけではありません。まあ1つ看板を外そうかなと。

理由として体力的・精神的な問題もあります。45歳になって若い人のセンスにはかなわなくなってきたと感じることがあったり、自分自身いろいろな肩書きや看板があったりするので、徐々に外していって音楽だけにシフトしていく気持ちもなきにしもあらずです。

──それでも12年続けたエロゲ業界です。処女作である『エーデルワイス』、その後『キラ☆キラ』『DEARDROPS』『僕が天使になった理由』などのタイトルを経て、『キラ☆キラ』の正当後継作品である『MUSICA!』で最後の花道を飾る。去り際の想いはあるのではないでしょうか?

bamboo エロゲ業界って、「あのブランドどうなったのかな?」って公式サイトを見にいくと「404 not found」になっていたり……ひっそりと解散するブランドが多くて、そうはしたくないって気持ちがあります。

僕らはゲームだけでなく、ライブをはじめイベントが結構あったので、そういう時間・空間を一緒に楽しんできた人たちも多い。
『OVERDRIVE 10th FES -LAST DANCE』
bamboo そんなブランドが知らない間に消えていくのは嫌だし、バンドだって解散ライブを派手に開催するじゃないですか。それなら「12年間楽しかったね!」と笑ってにぎやかに終わりたいです。

──『MUSICA!』のクラウドファンディングのリターンの1つ「OVERDRIVE支援同業他社専用コース(100,000円:限定数10)」からは、業界への恩返しなのかなとも思いました。

bamboo 実はギャグで用意したものなんです。ラストのスタッフロールに他のメーカーのブランドロゴが入っていたら超かっこいいなと思って(笑)。

ただ、2006年から2007年くらいが、個人的にエロゲが一番がおもしろかった時期で、チャレンジブルな作品がいっぱい出ていた印象です。いまはエロゲも売れない時代なので固いところを狙いがちですけど、昔みたいにクレイジーなゲームがいっぱい出るようになったら楽しいなと。

そのために僕には何ができるのか考えて、僕が独立したときに業界の先輩方にすごく助けてもらったので、自分がその人たちの年齢になったいま、若い人たちにお金は出せないけど、戦い方は教えられるんじゃないかと思いました。

──それでも12年続いたOVERDRIVEの看板が見られなくなるのは寂しさを感じます。

bamboo 今回のクラウドファンディングで2億円調達できたら、撤回するかもしれません。その場合は「新OVERDRIVE」もしくは「元祖OVERDRIVE」を新たに立ち上げます(笑)。だってそれくらい儲かるならやるでしょう、手のひらめっちゃ返しますよ!

冗談はさておき、本質はお金を集めた上でつくったものとその反響。大事なのはもちろんそこですけど、CAMPFIREで一番最初の1億円プロジェクトになりたい気持ちはあります。 ──ちなみに、ブランド終了後に計画中の企画はありますか?

bamboo いますぐ具体的な取り組みとしてスタートするわけじゃないですけど、AR(拡張現実)を使ったライブのショー演出にすごく興味があります

僕らはゲームを通じて、架空のロックバンドを生み出して育てるということに10年間注力してきた。

当然、最終作である『MUSICA!』に登場するバンドが受け入れられるのであればという前提です。次につながるようなかたちで評価されるなら、次世代のライブ演出として架空のバンドの現実化に挑戦していきます。

※記事初出時、一部記載に誤りがございました。お詫びして訂正いたします。
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商品情報

OVERDRIVE FINAL PROJECT 『MUSICA!』

ジャンル
ADV(ビジュアルノベル形式)
プラットフォーム
Windows
メディア
DVD
対象年齢
全年齢(クラウドファンディング発売版)
18禁(クラウドファンディング成功後の一般発売版)
発売日
2019年春
原画・キャラクターデザイン
すめらぎ琥珀
シナリオ
瀬戸口廉也
音楽
milktub
ディレクター
楢崎陽
プロデューサー
竹内"bamboo"博
企画・開発
OVERDRIVE

関連キーフレーズ

bamboo

milktub/OVERDRIVE

日本のゲーム&アニメ業界で活動しているロックナンバーが特徴のロックンロールユニット「milktub」のボーカル&作詞&物販を担当。
PCゲームレーベル「OVERDRIVE」の代表を務め、「キラ☆キラ」「DEARDROPS」「超電激ストライカー」「僕が天使になった理由」「グリーングリーン」など数多くの美少女ゲームの企画やプロデュースを行っている。
海外では「Mangagamer.com」のプロデューサーを務め、数多くの美少女ゲームを海外に送り出すなど、ゲーム&アニメの楽曲プロデュースのみならず様々な活動を精力的に行っている。
2017年4月1日、OVERDRIVE設立10周年を記念しディファ有明にて『OVERDRIVE 10th FES -LAST DANCE-』を開催。
約1,400人のファンを集め、長年の夢だった「ライブハウスでのフリーライブ」を行なった。
2018年にはOVERDRIVEとしての最終作品になる『MUSICA!』の開発を開始し、クラウドファンディングで開発費を調達。
クラウドファンディング開始後約30分で目標金額(約4,000万円)まで達成し、現在では約8,800万円まで達成している(2018年9月10日現在)。

milktubの活動として、2010年にはTVアニメ『バカとテストと召喚獣』EDテーマを担当し、さいたまスーパーアリーナで開催された「Animelo Summer Live 2010」に出演を果たした。
2013年にはTVアニメ『有頂天家族』OP主題歌「有頂天人生」をリリースし、2014年には4枚目のフルアルバム「春夏冬ROCK'N'NROLL」をリリース。
2016年にmilktub結成25周年を迎え、東名阪ツアー「M25」を開催し好評を博す。
2017年4月にTVアニメ『有頂天家族2』OP主題歌「成るがまま騒ぐまま」をリリース後、6月に3年振りのフルアルバム「M25」をリリースした。

milktub Official Website:http://milktub.com

かーず

ライター

個人サイト「かーずSP」管理人、フリーライター、製麺業の三足のわらじを履く二次元美少女研究家。アニメ、マンガ、ゲーム、ラノベの「萌え」を探求している。

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