地下アイドルとして過ごした6年 卒業を決めた本当の理由

  • 0
地下アイドルとして過ごした6年 卒業を決めた本当の理由
地下アイドルとして過ごした6年 卒業を決めた本当の理由

POPなポイントを3行で

  • エレクトリックリボン・ericaさんが9月で卒業
  • かつて「アイドル脱退理由ベスト3」を執筆した自身が卒業について執筆
  • 「アイドルであること」とは?
現役アイドルが赤裸々に綴る「アイドル脱退理由ベスト3」という記事を公開してから2年。遂に自身がアイドルを卒業する運びとなりました。 私が「エレクトリックリボン」というグループに加入してから、ちょうど5年が経った昨年末。グループ自体も活動10周年を迎えました。加入した当初からは大幅にグループの色も変わり、「そろそろ卒業かな」と決意して発表したものの、いまだに気持ちの整理がついていないのも事実です。

エレクトリックリボン結成10周年ワンマンライブ

そんな中、今年に入って様々なアイドルグループの解散や、グループの中心メンバーの卒業が続々と発表されています。2018年のアイドル界隈は年明け早々波乱の予感…!

私自身もアイドルを卒業する側ではありますが、「アイドルを卒業する」アイドルの心境とは、一体どのようなものなのか? 今だから、私も書けることがあります。

文:erica(エレクトリックリボン) 編集:新見直

戦国時代を生き抜いたアイドルたちの解散や卒業

昨年末から今年にかけて、立て続けにアイドルグループの解散やグループの中心人物の卒業発表が多く見られます。メジャーアイドルから地下アイドルまで、いまや日本のアイドルグループは数え切れない程増えていますが、アイドルの数だけ様々なドラマがあるのと同様に、卒業やグループ解散は避けられないものとなりました。

2011年の夏にAKB48のライバルグループとして乃木坂46が誕生。そして2010年〜2012年にかけての地下アイドル界隈は、BiSBELLRING少女ハートゆるめるモ!LinQなど、地下アイドル業界の中心となるグループが結成され、業界全体が盛り上がり始めた印象にあります。

私は2012年の12月にエレクトリックリボンに加入しましたが、今思えば、その頃に「アイドル戦国時代」というものが始まったように感じます。 そして、昨年末から今年にかけて立て続けに起こった、アイドルグループの解散や主要メンバーの脱退の傾向をみると、一つの仮説が浮かび上がります。

乃木坂46の生駒里奈さんや、元でんぱ組.incの最上もがさんを筆頭に、2011年〜2012年頃にアイドル活動を始めたグループやメンバーが解散や卒業を(発表)しているように見えます

単なる偶然かもしれませんが、アイドル戦国時代を最前線で戦いきったグループやメンバーがそれぞれの事情でステージを降り始めているというのが、今起こっていることなのかもしれません。

不動の人気を得ている地下アイドルたちの、唯一の共通点

私自身、「アイドル戦国時代」のど真ん中で地下アイドル業界を6年ほど見てきましたが、ここ最近の激変するアイドル業界を見ると、寂しい気持ちがないわけではありません…。

その一方、アイドル戦国時代を生き抜き、着実に力をつけていったグループが現在、不動の人気を手に入れています。

そういったグループには共通点があります。それは、「メンバーチェンジがほとんど行われない」ことです。

具体例として、歴史あるローカルアイドルが次々と解散する中、今年活動15周年を迎える新潟のNegiccoを筆頭に、PASSPO☆、9nine、東京女子流、夢見るアドレセンスなどが挙げられます。

一度もメンバーチェンジがないグループはいませんが、加入や脱退を繰り返す他グループと比べて、相対的に安定したグループだと言えます。

グループから脱退メンバーが出ると、確実にグループの雰囲気が変わり、それと同時に脱退メンバーについていたファンも徐々にライブに足を運ばなくなります。

新陳代謝という意味では必ずしもネガティブな側面だけではありませんが、脱退が増えるとどうしてもグループ全体の士気も下がる傾向にあります。

メンバーチェンジを経ても頑張ってグループを続けている子たちが大半ですが、「メンバーチェンジ」が少ないということは、それだけメンバー全員で同じ目標を向いているとも言えます。

ファンからしても、いつ辞めるか分からないアイドルを推すより、安定したグループを応援する方が、アイドルと一緒に無心で夢を追いかけることができます。

「石の上にも3年」という言葉の通り、戦国時代に地道にコツコツと力をつけていったアイドルたちが、今、人気グループとして生き残っている印象です。

女性アイドルからは話が逸れますが、最近では男性による地下アイドルグループの人気も高まっています。

今まで地下アイドル業界と言えば女性が主流でしたが、ここ2〜3年で、女性地下アイドルの運営が男性地下アイドルを新たにつくり始めています。

男性地下アイドル市場はすごい勢いで成長していて、一時期の「アイドル戦国時代」が男性アイドルでも起こっているのかもしれません。

地下アイドルは忙しく、それほど稼げない

かつて「現役アイドルが赤裸々に綴る『アイドル脱退理由ベスト3』」という記事でズバリ「地下アイドルは忙しい、にも関わらずそれほど稼げない」と述べましたが、改めて自分自身と周りを見ると、やはり「地下アイドル」だけで生活していくのは、相当な努力と人気と実力(と運)が必要です。

例えば、一般的基準として、大卒新入社員の初任給が20万円ほどだとしましょう。地下アイドルの一般的な給料はライブの際に撮影するチェキの枚数に応じた報酬、いわゆる「チェキバック」が主流です。もちろん事務所所属のアイドルは事務所から固定給が支払われている場合もありますが、初任給よりは少ない場合が非常に多く見受けられます。

チェキバックの割合もグループごとに違いますが、例えばアイドル側に1000円のハーフバックだとすると、チェキ1枚撮影あたり500円。月20万を稼ぐためには、単純計算して月400枚のチェキを撮らなければなりません

ライブは平均して週に2〜3本。物販は大体1時間ほど。それで月400枚を回すのはかなり大変で、あまり現実的ではありません。

仮に、毎日ライブをして毎日ファンが50人以上来てくれたとしても、毎回その50人全員がチェキを撮影してくれるという訳でもないので、なかなか月20万円の壁は越えられないグループが多いのが実情です。

「忙しいわりに稼げない」というのは実は非常にリアルな話で、空いた時間でアルバイトをして、頑張ってお金を節約して美容院やネイル、ファッションに気をくばるアイドルの努力は計り知れません。

私が卒業を決めた理由。卒業と脱退の違い

ただ、私が卒業を決めたのは、経済的な理由ではありません。

アイドルの脱退理由ベスト3として、「学業、仕事優先のため」「体調不良のため」「モチベーション低下」がありますが、私が卒業を決めたのは「グループの世代交代」が大きな理由です。 必ずしもアイドル陣営がそのニュアンスを使い分けているわけではないのですが、私は、「脱退」と「卒業」では大きな違いがあると思っています。

脱退は「志半ばで、グループを卒業せざる得なかった場合」で、卒業は「グループでやれることは全てやりきった、若しくは自分に新たな目標が出来たため、先に進むための前向きな決断をした場合」だと捉えています。

そういったことを踏まえて、自分の卒業は「グループに対して、やれることは全てやりきった」という気持ちが非常に大きいです。

エレクトリックリボンは昨年末で結成10周年。私は加入して5年が経ちました。その間にエレクトリックリボンを脱退・卒業していったメンバーは7名。先輩も後輩も沢山送り出してきました。 アイドル戦国時代とともにエレクトリックリボンも変化を重ね、加入当初とはガラリと違う雰囲気のグループにもなりましたが、「『エレクトリックリボン』という名前だけは守りたい」という気持ちで活動していた5年間でした。

なかなか地下アイドルで10年続くグループも珍しいので、11年目からは新しい世代が新しいエレクトリックリボンをつくり、エレクトリックリボンという名前を背負っていってほしいと思い、卒業を決断しました。

ステージで卒業を発表するericaさん

グループの中心メンバーが卒業してもエレクトリックリボンの魂を途絶えさせない、「いつ来てもエレクトリックリボンは音楽が良くて、安定感がある楽しいグループだね」とファンの方に言ってもらえるようなグループとして、これからも成長していくことを願っています。

自分自身、卒業を考えたタイミングはちょうど1年前の今頃で、新メンバーオーディションが行われるタイミングでした。

今まで何度もオーディションを重ねては、新メンバーが加入して1年程で脱退していく流れの中、「もう、このメンバーチェンジで最後にしたい」という思いが次第に自分の中で強くなり、「次、誰かが脱退したらグループ解散かな」とも考えていました。

そんな中、2017年には2名の脱退がありましたが、それでもエレクトリックリボンは前を向いて走ることが出来ました。「解散」という言葉は長くエレクトリックリボンを続けてきた私の頭の中にしかなく、他メンバーは「何とかエレクトリックリボンを存続させたい」という気持ちでグループと向き合ってくれました。

ericaさんの発表を見守るメンバーのyuさん

そんな頼もしいメンバーが現れてくれたからこそ、この先、後輩を「脱退」という形で見送るならば、自分が良きタイミングで卒業して、その先もエレクトリックリボンが続いてほしいという気持ちが大きくなったので10周年のタイミングで卒業を発表しました。

メンバーチェンジは士気を下げる可能性があるという話をしましたが、エレクトリックリボンのメンバーたちは、私の卒業で士気が下がる子たちではないと信じています。

Azumiさん

私は、地下アイドルでは異例とも言える、卒業発表から卒業ライブまで9ヶ月という非常に長い期間を設けています。その間に引き継ぎをゆっくり行ながら、後任メンバーを新メンバーオーディションで見つけ出せたらと考えています。

聞こえなかった「やめないで」の声

私自身の今後の方向性としては、30歳を迎え、いち人間として、音楽以外の興味のあることにも沢山チャレンジしていきたいと考えています。

エレクトリックリボンに加入する前から始めていたDJ活動も、改めて勉強し直したいことが沢山あるので、アイドル活動に当てていた時間をDJの勉強などに費やしていけたらと考えています。

また、歌に関しては、昨年から運良く映画やドラマのお仕事をさせていただくようになり、自分はまだまだ歌で勉強しなければいけないことが沢山ある。と思っているので、引き続き皆さんに歌を聴いてもらう機会を積極的に設けていきたいです。

結婚に関しては、半分冗談ではありますが、やはり、いち女性、いちアーティストとして、人生を豊かにしていけたらという気持ちもあります。グループでアイドル活動をしながら結婚となると、例えば子供を授かった時にグループに多大な迷惑をかけることもあるため、きっちりアイドルグループを卒業してから、第二の人生を歩めたらと考えています。

そして、今まで自由奔放にアイドル活動を行えたのも、ファンの方の応援があったからこそだと思っています。

アイドル活動だけではなく、全ての芸能活動をする人にとってファンの方の力は絶大です。これは紛れもない事実で、実際応援してくれる人がいなかったら活動は自己満足に過ぎず、いずれその炎も途絶えてしまうからです。

なので自分が自分らしく活動して、それを「良い!」と言ってくれる人は一人でもかけてはいけないと思っています。
 
私にとってのファンは、下手したら自分の親よりも私のリアルな心情を知っていて、理解してくれている人だと思っています。

だからこそ、その時その時の素直な気持ちをファンの方には一番最初に伝えたいと思っているので、卒業発表も10周年ライブでお伝えしました。 きっと私のことをアイドルとして一番に気にかけてくれている人は、前々から私が卒業発表するのは勘付いていたかと思うので、皆さん優しく受け止めてくれた気がします。

エレクトリックリボンをやりきったからこそ、卒業発表の時にファンから起こるお約束の「やめないでー!」という声援は、あまり聞こえなかった気がします もちろん「やめないでー!」という気持ちでいっぱいの方もいるかと思いますが、今までの私をしっかり見てきてくれた人は「お疲れさま」と声をかけてくれる人が大半です。

それだけで、私はエレクトリックリボンというアイドルグループに加入して幸せだったと思います まだまだあと6ヶ月ありますが、最後までやりきって、私らしく卒業していけたらと思います。
エレクトリックリボン「星屑ハイランド」

私は“アイドル”をやめない

最後に。

あなたもきっと誰かにとってのアイドル!」と2年前に書きましたが、今もその気持ちは変わってません。

「アイドル」という言葉を見ると「歌って踊って可愛くてキャピキャピした存在」という「アイドル像」が出てくる人が大半かとは思いますが、今ではその印象も変わりつつあります。

アイドルというものは、その人の人生に少しだけ刺激を与えてくれる人のことだと私は常日頃から思っています。

アイドルグループに所属して歌って踊っていましたが、根本的な所は何も変わらず、「歌が好き、音楽が好き」という気持ちで活動してきました。

それはエレクトリックリボンに加入する前も、卒業した後も変わりません。 アイドルグループを卒業したからといって、誰かにとってのアイドルではなくなるとは思っていません。私の音楽を応援したい! という人がいる限り、私は誰かにとってのアイドルです。

学生時代、クラスメイトの中に「アイドル的存在」の人がいたのと同じように、誰かにとっての「人生のスパイス」になっていたら、例えどんな人であってもアイドル。誰かの心の中にずっと生き続けられるように、これからも自分らしく生きていけたらと思っています。

ericaさんが執筆した記事をもっと読む

この記事どう思う?

この記事どう思う?

関連キーフレーズ

erica

エレクトリックリボンのメンバー

東京都出身/O型/乙女座

好きな食べ物:納豆、酒の肴、オムライス

趣味:飲み会、マッサージ、ダイエット
口癖:「ビールください!」
ステージ上ではビールを飲んだりと基本自由奔放だが、その反面、音楽大学声楽科を卒業しており、歌声には定評がある実力派。
また「どこか懐かしい」をテーマにiPadのみでプレイするDJ、【DJ四捨五入】としても活躍している他、TRASH-UP!!!やKAI-YOUなどでライター活動も行っている。
2018年9月をもってエレクトリックリボンを卒業。
LINE Blog/Twitter

0件のコメント

※非ログインユーザーのコメントは編集部の承認を経て掲載されます。

※コメントの投稿前には利用規約の確認をお願いします。