声優・沼倉愛美ソロデビュー記念インタビュー 「一途」と「素直」の交差点

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声優・沼倉愛美ソロデビュー記念インタビュー 「一途」と「素直」の交差点
声優・沼倉愛美ソロデビュー記念インタビュー 「一途」と「素直」の交差点
「満を持して」とは、こういう時のために使うのだろう。声優の沼倉愛美さんが、2016年11月2日にリリースするシングル『叫べ』で、歌手としてフライングドッグよりソロデビューを果たす。『叫べ』はアニメ『魔法少女育成計画』のOP主題歌でもある。
2009年、ライブやアニメ化を通じて、“2次元アイドルの金字塔”となったゲームシリーズ『THE IDOLM@STER』の我那覇響役でデビューを飾って以降、数々の作品に出演。2013年に放送されタカオ役を務めたアニメ『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』では、同番組から生まれた3人組ユニット「Trident(トライデント)」としてもCDリリースやライブを行ってきた(Tridentは2016年4月の幕張メッセ単独講演をもって解散)。

この8月には“アニソンの祭典”と名高い「Animelo Summer Live 2016 刻 -TOKI-」で2万7000人の観客を前に『叫べ』を熱唱し、自らの花道を切り拓いてみせた。歌唱力やダンスは折り紙付き。大舞台も経験している。彼女のステージングを目にした人ならば、ソロデビュー発表には納得したはずだ。 「満を持す」には「弓をいっぱいに引きしぼる」という意味があるが、間もなくソロデビュー曲が矢のように放たれる。KAI-YOUではこのタイミングで、現在の心境だけでなく、これまで/これからの「沼倉愛美」を俯瞰する意味でも、今回は幼少期からさかのぼって彼女のヒストリーを多く聞いた。2016年で28歳を迎えた彼女だけに、そのバックグラウンドには2000年代初頭のカルチャーも強く影響を与えているようだ

アニメ好きだった少女はいかにして声優となり、どのような言葉に励まされてきたのだろうか。彼女は「人生にドラマチックなことはそうそう起きない」と口にする。だからこそ、正直で一途な日々の積み上げを何より大事にしているのかもしれない。

そして、そのヒストリーは、僕らが忘れてしまいがちな「素直であること」の大切さも教えてくれる。きっと彼女はその交差点に今、立っている。

取材・文:長谷川賢人 撮影:時永大吾 編集:新見直

TSUTAYAで育んだ「ひとり文化部」の日々

──別のインタビューで、もともとは「ソロ活動は自分には向いていない」と思っていたものの、周囲からの「大丈夫」「やれる」といった声を信じて挑戦してみようと踏み出したタイミングが今だったとお話されていました。何か明確なきっかけがあった、とかではなく?

沼倉愛美(以下、沼倉) 人生にドラマチックなことって、そんなに起こらないですよ(笑)。今のプロデューサーさんもTridentの時からご一緒させていただいて、ご縁というか、めぐり合わせが重なった感じです。ソロ活動は本人がやりたくても協力してくれる人がいなければできないことなので、私にとっては今がベストだったかなって。

──歌手活動ということで、音楽の体験を振り返ると、どういったアーティストをよく聞いていましたか?

沼倉 初めて買ったのは鈴木亜美さんのアルバム。中学生からはTSUTAYAでいろいろとレンタルをして聞くようになりました。SAYAKA(神田沙也加)さんとか、浜崎あゆみさん、KinKi Kidsと幅広く聞いていたんですが、ある時にふと洋楽でも聞いてみようかなって、BlueというイギリスのボーカルグループのCDを手にしたんです。その頃って、ちょっとそういう「気取りたい時期」ってありませんか?(笑)

──はい、よくわかります(笑)。

沼倉 ちょうど『One Love』ってアルバムが発売されたばかりで、真っ黒な背景にメンバー4人が立っているジャケットに惹かれて。洋楽で世間的に流行っていたのはバックストリート・ボーイズだったかもしれないけれど、Blueは「私が見つけた!」みたいな嬉しさもあったし、ハーモニーが美しくて、いい曲が多かったんです。中でも『Guilty』が好きで、今でも聞いています。それでBlueが大好きになって、ずっと聞いていました。
──当時はバンドブームといえるほどでしたが、むしろシンガーに興味が寄っていた?

沼倉 友達や周りはバンドを聞いていたけれど、結果的に私は「歌う人」に惹かれていたのかもしれません。そういえば、『叫べ』のカップリング曲をつくる時に、参考として送った好きな曲の中にもBoAさんや平井堅さんが入っていました。「この人のこの曲が好き!」というのが多くて、本当に良いと思ったものを延々と繰り返し聞くのは昔から変わりませんね。

音楽だけじゃなくて、読書も同じかも。当時から好きなのは田中芳樹さんで、あとは小野不由美さん、篠田真由美さん、北方謙三さん……中学生の頃に西尾維新さんがデビューしたときは『戯言シリーズ』を読んだりしていました。思い返せば、学校が終わったらまっすぐ家に帰って、たまにTSUTAYAへ寄って音楽やアニメを借りて、それを味わうという……すごく楽しかったですけどね。

──まるで「ひとり文化部」ですね。子どもの頃はどんな性格だったと思いますか?

沼倉 今より明るかったかも! 弟や従兄弟たち、近所の子どもたちの中でもいちばん年上だったから、みんなの面倒を見る「リーダーのお姉ちゃん」的な存在でした。外ではよく遊んでいて、お父さんに連れられてカブトムシを捕まえに行ったり。でも、習い事はお習字くらいで、体を動かすようなことは全然していなかったんですよね。

1枚のドラマCDから「声優」を意識し始めた

──アクティブに外で遊んでいた女の子が、そもそもアニメにハマっていったきっかけは?

沼倉 ちっちゃい頃から夕方に放映していたアニメは見ていたんですけど、小学校4年生での出会いが大きいです。ご近所に引っ越してきて友達になった女の子が、アニメやマンガを大好きで、ある日、彼女が『フルーツバスケット』のドラマCDを持ってきたんです。声優さんが声や音だけでキャラクターを表現しているのを聞いて、純粋に「すごいな」って思って。その時に初めて、お仕事として「声優」があるんだと意識しました

──いい出会いですね。『フルーツバスケット』なら配役も素晴らしい布陣ですし。

沼倉 その頃から雑誌の『花とゆめ』にハマりまして。『花とゆめ』は付録や応募者全員サービスでドラマCDを頻繁に付けていたんです。当時なら『はなきみ(花ざかりの君たちへ)』『せかきら(世界でいちばん大嫌い)』『っポイ!』とか。それで、今思えば不思議ですけど、セリフを書き起こして台本にして読んだりしてました。でも、声優さんがしゃべるスピードに書くのが追いつかなくて、どんどん汚い字になっていくのが嫌で、いつまでも台本が完成しない(笑)。

そうやって、声優さんへのあこがれがちょっとずつ募っていき、小学校を卒業するくらいのときには「声優さんってどうやったらなれるんだろう?」って考え始めて。中学校に上がると好きな作品や声優さんも増えて、声優雑誌を買うようにもなっていました。

中2のときに『機動戦士ガンダムSEED』がスタートして、「これがガンダムか!」と。いま思えば、それはガンダムの歴史の1ページでしかないのですけど……とにかくガンダムにハマり、『(機動戦士)Ζガンダム』の劇場版をやると聞いて、ちゃんと振り返ったほうがいいなと、高校時代に初期からのTVシリーズを全部見返しました。

──これもインタビューで「目標とする声優」に榊原良子さんを挙げられた理由がわかった気がします。ご活躍された年代が少し前だから不思議だったんです。

沼倉 ハマーン様ですから!『SEED』を見始めた頃に声優さんが出演されるラジオも聞き始めたんですよね。よく聞けばキャラクターと同じ声なのに全く違う人、という演技力だけじゃない存在感の魅力に、ドラマCDを聞いたときと似た衝撃を感じました。

──中でも衝撃が大きかった声優さんはいますか?

沼倉 声とのギャップがいちばん大きかったのは関智一さん。ラジオではあんなに……いや、でも、それもすごく面白くて(笑)。そういうのをひとつずつ見つけていくのが楽しかったですね。

──その日々を経て、声優という仕事が具体的になっていったんですね。

沼倉 そうそう。高校生って「将来は何になれるのか」を考える時期だと思いますが、私はビジョンがすごく曖昧で、会社員をやっている自分の想像がつきませんでした。

それでガンダムを見ながら、どうせだったら好きなこと、声優の勉強をしたいと思って、「学費は自分で払いますから養成所に通いたいんです」って親に相談をしました。同級生が働いていた靴屋さんでアルバイトをして、靴のことはわからないなりにスニーカー担当として在庫管理を頑張っていました(笑)。お金を貯め、高2で面接を受けて、高3の春から養成所に入ったんです。

──高校卒業後に養成所に入るケースはよく聞きますが、ダブルスクールにした理由は?

沼倉 声優になれる確率も低いと思っていましたし、試してみてダメなら早く切り替えたかったからです。あとは、高校時代に担任だった理科の先生が理解のある方で、入所の相談をしたら「勉強を始めるなら早すぎることはない。できるなら早くしたほうがいい」とアドバイスをもらって、「その通りだ!」と。高校生までお芝居も何もやっていなかったわけですから、できるだけ早くにと思いました。

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