押井監督「無能で物語を持たない3代目を描く」──実写版『機動警察パトレイバー』

押井監督「無能で物語を持たない3代目を描く」──実写版『機動警察パトレイバー』
押井監督「無能で物語を持たない3代目を描く」──実写版『機動警察パトレイバー』

記者会見中の押井守監督

『機動警察パトレイバー』実写版プロジェクト「THE NEXT GENERATION -PATLABOR-」の製作発表記者会見が、2013年9月25日(水)に行われた。発表には、押井守監督、キャストの真野恵里菜さん、福士誠治さん、太田莉菜さん、千葉繁さん、筧利夫さんが登壇した。

押井守監督、真野恵里菜さんら主要キャストが登場

1988年から、TVアニメ・OVA・劇場版・マンガ・小説というメディアミックスの手法でスマッシュヒットを記録し、現在も多数のファンが存在する名作『機動警察パトレイバー』。汎用多足歩行型作業機械のパトレイバーを乗りこなす、警視庁警備部特科車両二課中隊、通称“特車二課”のメンバーの活躍(?)を描いた物語。

かねてから発表されていた通り、20年以上もの時を経て、現在、実写版プロジェクトが動き出している。そして、こちらも既にHPなどでは明らかになっていたが、監督をつとめるのは、原作者の一人でもあり、OVA・劇場版では監督、TV版では脚本を担当した、押井守さんだ。

泉野 明役の真野絵里菜さん

製作発表記者会見では、キャストも初発表となった。ネット上では既にすっぱ抜かれていたが、主演をつとめるのは、特車二課所属の泉野 明役の真野絵里菜さん。そして、同じく特車二課の指揮担当の塩原 佑馬役の福士誠治さん、ロシアからの研修生・カーシャ役の太田莉菜さん、整備班班長のシバシゲオ役の千葉繁さん、そして後藤田継次役の筧利夫さんだ。

無能で物語を持たない3代目を描く

これまでの「パトレイバー」を知っている人間には、登場人物の役名は、見覚えがあるようでいて違和感を覚えることだろう。それもそのはず、実写版「パトレイバー」は、これまでの特車二課の面々ではなく、彼らに酷似した名前を持つ3代目を描く完全オリジナルとなるからだ。

アニメ同様千葉繁さんが演じる、かつて整備員だったシバシゲオのみ整備班班長に出世して再登場しているものの、今回登壇したキャスト陣が演じるのは、どこか似通った名前の登場人物たちだ。かつての特車二課第二小隊の泉 野明(いずみ のあ)ではなく、真野さんが演じるのは泉野 明(いずみの あきら)、といった具合だ。

押井監督曰く、アニメとどうやって違うことをやるか。同時に、25年間アニメに付き合ってくれたファンとどう向き合うか。その矛盾したテーマへの一つの解答が、3代目を描くことだったという。OVAやTVアニメ版のキャラクターたちを初代、劇場版などに少しだけ登場する2代目、そして今回はさらに3代目を描くことが、実写化にあたって“必要な設定”だったと語った。

個性的な初代。無個性な2代目。そして、無能で、物語をもっていない3代目。それを描くことによって、同時代的なテーマに辿り着くのではないか。今という時代をどういう物語として背負っていくのか、それがシリーズのテーマ。押井監督のコメント

後藤田隊長だけは、後藤隊長の後を継いだ2代目という設定だが、メンバーはそれぞれ3代目としての物語を引き受けていくこととなる。

ちなみに、2011年に角川より発行された押井さん執筆の小説『番狂わせ 警視庁警備部特殊車輛二課』では、実写版と同じくアニメ版からかなり時間が経ち、既にパトレイバー自体がお払い箱になった後の特車二課を描いており、こちらにも後藤田隊長と泉野 明という男性のキャラクターが登場する。本作とその小説版との関係も気になるところだ。

イベント上映7章+劇場版

10分程度の第0話に加え、シリーズ本編は各48分程度の第1~12話で構成される。気になる放送形態だが、松竹配給で、2014年4月からシリーズ全7章として劇場でイベント上映され、2015年に長編映画が公開される。

これまでの『機動警察パトレイバー』も、近未来の東京を描いていたが、今作では、時代設定は2013年であることも明らかになった。

20年前に構想はあったものの、当時は映像技術追い付かず断念。そして、25年の時を経て、最先端のVFX技術が実写化を可能にしたとのこと。7章+劇場版1作で、総制作費は20億円となる。

また、押井監督と長年タッグを組んでいる川井憲次さんが音楽を担当することも決まった。

実物大イングラムもお目見え

既にネット上では目撃情報が多数寄せられていたが、押井監督とキャストたちが記者会見を行う会場の後ろには、全長8mにもなる実物大のパトレイバーがそびえ立っていた。なぜ完全CGではなくあえて全長8mにもなる実物大のパトレイバー、98式イングラムを制作したのかというと、押井監督のたっての願いからだったそうだ。

つくってみたかった。どのくらいのものなのか見てみたかったので、お金も時間も、説得の時間もかかったけれど、つくらなければやらないくらいにかなり強引にお願いした。押井監督のコメント

実物大のパトレイバーをつくったことで、嬉しい誤算として、すべてのスケールが大きくなったそうだ。舞台空間のスケールだけではなく、演技にも奥行きが出たと語っている。「撮影の後にどうしたらいいのかが心配」とのことだが、後々は展示してファンが観に行けるようにしてほしいところだ。

今作には、南雲しのぶの継承者は存在しないのか等、これまでのファンには気になるところがまだまだ残っているだけに、今後の続報にも期待したい。

また、同時に、「THE NEXT GENERATION -PATLABOR-」の公式アプリがAndroidユーザー向けに配信開始された。ダウンロードは無料ながら、発表されたばかりの登場人物の紹介はじめ、大ボリュームで公式設定資料集が公開されている。

作品情報

『THE NEXT GENERATION -PATLABOR-』シリーズ全7章

総監督押井守
各話監督押井守ほか
脚本押井守/山邑圭
音楽川井憲次
原案ヘッドギア
制作東北新社/オムニバス・ジャパン
配給松竹

2014年4月より順次 新宿ピカデリーほか上映開始
0話:約10分、1~12話:各約48分

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