VTuber事務所・ホロライブプロダクションを運営するカバー株式会社が8月12日、「第10期定時株主総会 質問への回答について」を公開した(外部リンク)。
資料では、6月25日に開催された定時株主総会で取り上げられた事前質問や当日質問などを含む、計198項目への回答を掲載。
その中でカバー社は、ライブや外部展開の多角化に伴い「日常の配信時間が減少した傾向」を認識していると説明。今後、大型イベントの実施頻度を精査し、通常の配信活動とのバランスを見直す方針を明らかにした。
また「タレントが案件や企画を断る意思の尊重」「マネージャーを介さない相談経路の整備」「外部の制作/事務スタッフの活用」など、所属タレントが活動方針を決定するための環境についても回答している。
カバー社「日常の配信時間が減少した傾向は認識」
今回公開された資料は、カバー社が6月25日に開催した第10期定時株主総会に寄せられた質問への回答をまとめたもの。
事業戦略や海外展開、タレントのマネジメント、ホロスターズの運営体制変更、サービスを終了したメタバース「ホロアース」など、幅広いテーマについて回答している。
そのうち、ライブ/イベント関連の質問では、株主から「昨年度はソロライブやユニットライブなど、既存ファンの満足度を高めるイベントが増えた一方」で、「通常の配信活動については総配信回数・総配信時間が低調だったように見受けられる」との指摘が寄せられた。
これに対してカバー社は、「ライブや外部展開の多角化に伴い、日常の配信時間が減少した傾向は認識しております」と回答。
今後は大型イベントの実施頻度を精査。タレントが日常的な配信活動に注力できる環境と、大型企画を両立できるよう、スケジュールやサポート体制を見直すとしている。
別の質問でも、所属タレントの増加によって周年/生誕企画へのゲスト参加やダンスレッスンなどの稼働が増え、日常配信の頻度が下がる可能性が指摘された。
カバー社は「タレントの稼働とコンテンツのバランスは重要」とし、イベントやレッスンと日常配信を両立させるため、稼働管理とサポート体制を強化すると説明している。
タレントが案件を断る意思を尊重、相談経路も整備
タレントの活動をめぐっては、株主から「案件や企画について、タレントが断る権利を持っていることは、タレント本人に対してどのように周知されていますか」「形式上の権利であっても、事実上断りにくい雰囲気があれば意味をなしません」との質問があった。
カバー社は、タレント本人の意思を尊重することをマネジメントの基本方針と説明。
案件や企画を相談する際には、マネージャーを通じて本人の意向を確認することを原則とする一方、「制度として存在するだけでは十分ではなく、実際に使いやすいものであることが重要」と回答した。
さらに、マネージャーを介さない相談経路の確保を含め、タレントが意思を伝えやすい環境づくりを進めるとしている。
健康管理についても、カバー社はマネージャーによる日常的な状態把握、活動量の調整、休養期間の確保に加え、マネージャーを介さない相談窓口を設置していると説明している。
外部スタッフを活用「活動形態や特性に応じた体制を柔軟に構築」
所属タレントが独立したマネージャーや制作補助・事務補助など外部の支援人材を利用する場合についても具体的な回答があった。
カバー社によれば、機密保持や競業避止や利益相反などの観点から一定の条件はあるものの、活動内容や契約面を踏まえて個別に判断。会社側からも複数の選択肢を提示し、タレントの希望に合わせて調整を行うという。
2026年3月には、所属タレントの星街すいせいさんが個人事務所「Studio STELLAR」を設立。
ホロライブプロダクションへの所属を継続しながら、ソロアーティストとしての音楽活動や配信活動、新規のグッズ販売などを個人事務所へ移行し、株式会社NERDがマネジメントを担当する新たな活動体制へ移行した。
今回の株主への回答でもカバー社は、Studio STELLARと直接の資本関係はなく、NERDとの関係についても互いの独立性を維持した共同事業と説明。
タレントの創作環境について「特定の形態に固執することなく」、活動形態や特性に応じた体制を柔軟に構築していく方針を示している。
ホロアースやホロスターズを再編──経営資源の再配分を進めるカバー社
カバー社は2026年4月から、代表取締役社長の谷郷元昭さんがタレントマネジメント部門を直接統括。
今回の資料では、活動歴の長期化によってタレントのライフステージや必要なサポートが多様化する中、「従来の体制では十分に応えきれず認識の齟齬が生じていた」と説明している。
配信頻度や時間をモニタリングして過剰な稼働を防ぐほか、会社負担による健康診断の受診支援などを実施。タレントごとのキャリアフェーズに応じた、画一的ではないマネジメントを進めるとしている。
一方、4月には男性VTuberグループ・ホロスターズについて、会社主導のグループ活動から個人活動を主軸とする運営体制への変更を発表。
今回カバー社は、これを「男性タレント事業を今後より安定的かつ持続可能な形で運営していくため」の経営判断と説明。「単なる事業からの撤退」ではなく、固定費を最適化し、限られた経営資源を再配分する再編と位置づけた。
また、5月にはメタバース「ホロアース」のサービス終了を発表。31億9900万円の特別損失を計上し、開発に投じていた人材や技術などの経営資源を既存事業やタレント活動の支援へ再配分する方針を明らかにしている。
カバー社は今回の株主への回答で、動画配信プラットフォームだけに依存せず、タレントが長期的に、より大きな規模で活躍できる「舞台」を構築する方針を説明。TCGやゲーム、ライセンスなど収益源の多角化も進め、独自の経済圏の確立を目指すとしている。
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