導凰がアルバム『COUNTER WAVE』に込めた、自分を拡げるための試行錯誤
── レコーディングを進める中で印象に残っているエピソードはありますか?
導凰 特定の出来事というよりは、アルバム全体を通して感じたことがあります。これまでシングルを5曲リリースしてきたんですが、今回の新しい5曲はどれも、それまでの私のイメージからは想像できないような新しい試みになっていて。
一つの表現だけでは駄目だという感覚があったので、かなり自分の体を追い込んで、本当にたくさん歌って。少し前に、POPUP STOREでリスナーさんたちにも先行で聴いていただいたんですけど。私の変化に気づいてくれた方もいてうれしかったです。
私の変化をたくさん 感じられるアルバムになったのかなっていう達成感が あります!
── これまでにリリースした曲でも、同じように追い込んでいたんですか?
導凰 これまでのシングルは、ベースハウスやドラムンベースがベースにあるハードなダンスミュージックとか、自分の得意な分野が多かったんです。どう声を当てていくかも想像しやすかったですし、得意な部分が大きかったので。
もちろん、そこに対してもいろいろ考えていましたが、今回はそれまでとは全く違う方向で自分を追い込みました。すごく楽しかったですね。
水槽 自分は「不可侵」の時に立ち会ってるんですが、導凰さんはレコーディングまでにすごく練習してきてくれたのが伝わりましたね。これまでに20〜30曲ほど楽曲提供をしてきたんですが、仮歌を聞き込んで家で練習してきた人と、そうでない人はすぐに分かるんです。
導凰さんは音程だけではなく、歌い方の癖まで拾ってくれているなと、勝手にですが思っていました。
導凰 私は昔から水槽さんの曲が本当に好きで! 勝手にシンパシーも感じてたんです。
そんな憧れの水槽さんにはじめて曲を書いていただいたので、水槽さんの良さを自分のせいで損なわせたくないという気持ちがあって。
導凰 私は我が強いので、意識しなくても自分らしさは出ると思っていたんです。そして、私は水槽さんではないので、完全に同じように歌うことはできない。だからこそ、できなかった部分が最終的には自分のオリジナリティになると思っていて。
そこをちゃんと広げるためにも「水槽さんはここでどうやって呼吸してるんだろう?」とか考えながら、かなり練習しました。
水槽 レコーディングの時には本当に仕上がっていて。たとえば、語尾を少し下げる歌い方や譜割り、リズムの取り方、休符への音の入れ方といった細かいニュアンスの部分までトレースしてくれていました。
仮歌をかなり聴き込んで、練習してきてくださったんだと思いましたね。その分収録もすごくスムーズに終わりました。
── 導凰さんの場合は、自分らしさが自然に出ることを前提に、相手の表現を取り入れていったんですね。
導凰 先ほどアルバム制作の話を聞いてると、朔雀ちゃんは自分自身のキャラクターや世界を追求していったんだと思います。私はむしろ逆で、自分の世界を外に広げていくようなイメージで。そこも、私たち2人が対になっている部分なのかな。
自分の名刺が欲しい──朔雀がアルバム『REVERSE WAVE』に込めた目標
── 朔雀さんは、レコーディング時に意識したことはありますか?
朔雀 私はこれまで、キラキラ感やシュワシュワした雰囲気の楽曲が多かったんです。今回もそういう曲はありますし、エモーショナルな曲も多いんですが、このアルバムでアーティストイメージを固めたかったんです。
名刺代わりのアルバムというか、「朔雀といえばこれだよね」と思ってもらえるように、自分の声を何度も聴き比べる作業をしました。
── ジャンルが違っても、自分のオリジナリティを出したいということですね。
朔雀 そうですね。曲によって雰囲気は全然違っても、その中に私らしさを感じられる部分は持っていたいと思っていました。アップテンポの曲でも、ゆっくりした曲でも、「朔雀はこうだよね」と感じてもらえるような自分の雰囲気を出せるように考えていました。
ただ、そうやって考えていたら最後に風邪をひいちゃって(笑)。3週間くらいレコーディングができなくて、当日に歌おうとしても歌えないということを繰り返してしまって……本当に申し訳なかったです。その後は、3曲を一気に録るような進め方になりました。
── 最終的にどういった意識でレコーディングに挑みましたか?
朔雀 レコーディングに行く前に、家で歌って自分の声をとにかく聴き込みました。ただ歌いやすいように歌うだけだと、曲のニュアンスが自分の中のイメージと違ってきてしまうこともあるので。
声色もかなり意識していますが、やりすぎてキャラクターソングのようになってしまうのも嫌なので、そのさじ加減を調整してからレコーディングに向かいました。
Daoko 実際に聴いてみて、朔雀さんは本当に器用だと思いましたね。私の曲は結構独自性が高いと思っているので、ラップの独特なフロウを、真似ではなくちゃんと自分のスタイルに落とし込めているのがすごい。
もうその時点で朔雀さん自身のフロウが確立されているように感じましたし、楽曲全体の雰囲気にも自然と寄り添ってくださっていて、そのあたりも本当に器用な方なんだなと思いました。
対になった2つのアルバム、互いの曲をどう思った?
──『COUNTER WAVE』と『REVERSE WAVE』は、お互いの冒頭曲とラストが呼応するような構成になっています。「Common Days」と「Revolution Eve」、あるいは「La vie en Glitch」と「Étoile Polarizer」といった対になる楽曲を、それぞれ聴いてどのように感じましたか?
ジャケットのデザインも共通点が見える『COUNTER WAVE』と『REVERSE WAVE』
朔雀 「La vie en Glitch」のレコーディングに行った時、先に導凰ちゃんがいて。その時に録ってたのが「Revolution Eve」だったよね。
導凰 そうだね!
朔雀 その時にはじめて聴いたんですが、何も知らずに「レコーディングしてるんだな」と思って聴いていた曲が、その後もずっと印象に残っていて。帰り道でも頭の中で流れていました。
完成版もすごく好きで、「もしかしたら一番好きかも」と思うくらい何度も聴いています。多幸感の中に切なさやエモさ、Hyperpopのケロケロしたサウンドがあって、私の曲っぽさを少し感じる部分もあるんですが、それでいてちゃんと導凰ちゃんらしさもある。本当に好きな曲です。
私の「Common Days」はどうだった?
導凰 朔雀ちゃんがラップをしている楽曲って、今まで意外と少なかったんですよね。
フューチャーベースのイメージはあるんですが、ラップの印象はあまりなかったので、こんなに素敵な形で、ポエトリーのような朔雀ちゃんのラップが聴けるなんて本当に新鮮で。「Daokoさん本当にありがとうございます」って感じです!
一曲を通して聴くと、不思議と空の上から朔雀ちゃんの日常を見ているような気持ちになるんです。
伝わりづらいと思うんですけど、私の中ではもともと朔雀ちゃんと「空」という概念で結びついていて。「Common Days」を聞いて、改めてそのイメージが強くなりました。そして、そのあとに私の「Revolution Eve」を聴くと、本当に全く違う場所にいた二人が出会ったんだということを感じられるんです。「Common Days」は大好きな曲です!
朔雀 やったー!!
導凰 ちなみに、私は朔雀ちゃんが歌う前のDaokoさんのデモから聴いていたんですが、その時点で「これは絶対に素敵な曲になる」と確信してました。
朔雀 普段は、制作途中の楽曲を導凰ちゃんに他のメンバーに共有することってほとんどないんですけど。Daokoさんのデモがあまりに良すぎて、導凰ちゃんにも送ったんですよね。
Daoko 本当ですか! かなり思い切ってラップに振り切った曲だったので、実は求められているものと違う提案になってしまったんじゃないかと結構不安だったんです。
水槽さんの楽曲が先にあって、そのあとに私がつくる流れだったので、「対になる楽曲」にすることは私にとっても一つの挑戦になると感じていました。
それでも導凰さん側の曲名「Revolution Eve」──日本語にしたら「革命前夜」。その対になる言葉として「ありふれた日常」をイメージして、「Common Days」というタイトルや内容を考えていったんですよね。
水槽 そうだったんですね……! 逆に、自分は何も考えず、好きなようにつくってました(笑)。今のお話を聞いて、「Daokoさんが合わせてくださっていたんだ」とはじめて知りました。
水槽とDaokoがお互いの曲に感じた「らしさ」
── 水槽さんとDaokoさんは、実際にお互いの制作した曲を聴いてみてどうでしたか?
水槽 第一印象は、「やっぱりすごいな」でした。誰が聴いても「Daokoさんの曲だ!」と分かるんですよね。
Daokoさんに寄せているということではなくて、Daokoさんのフロウが自然と二人の中に入り込んでいて、その上で、それぞれの個性がにじみ出ている。そのバランスが、そのままオリジナリティになっているように感じました。
一聴して分かる個性がありながら、「Étoile Polarizer」はデュエットで歌もの寄り、「Common Days」はストイックなラップ主体と、スタイルは全く違います。
それでも、どちらもDaokoさんらしさがしっかり出ていて、その上に二人の個性が乗っている。そのバランス感覚が本当に素晴らしいと思いました。
Daoko 私は「不可侵」がすごく好きだったので、「Revolution Eve」も含めて、水槽さんとKOTONOHOUSEさんのタッグだからこその楽曲の強さをすごく感じました。
キャッチーですし、今回は私もはじめてKOTONOHOUSEさんとご一緒したんですが、自分の曲を完成させるまでに、お二人の作品はとても参考にさせていただきました。
それから、水槽さんの楽曲を聴くと、「やっぱり水槽さんらしい」と私にも分かるんです。最近は番組でもご一緒する機会があって、勝手にご縁を感じていたんですけど、改めて、水槽さんはラッパーとしての一面もすごく強い方なんだなと思いましたし、本当にラップがお上手ですよね。
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