ラッパーTohji、引退発表「きっとまたオレの人生とみんなの人生が交差することはある」

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KAI-YOU編集部_ストリートカルチャー部門

少し昔の話を聞いてください。

昔自分は、深い海の底みたいな場所にずっといるような気持ちでした。
冷たくて、暗くて、誰もいなくて、体は無駄に重くてデカくて
なんかもう、背中にコケが生えてるデカいクジラみたいな、そういう気持ちでした。

でも、なんとなく上の方に、なんか光があるのを感じて、そっちの方に海底から上がっていったら、少しずつ色んな魚たちと出会って。
例えば、大きいけどゆっくり泳いでる魚とか。小さいけど、群れになって泳いでる魚とか。
そういう海の潮の流れっていつも穏やかだけど、時にめちゃくちゃ荒くて、そういう場所で揉まれてる内に、いつのまにかオレの背中のコケとか全部洗い流されて、贅肉も全部削ぎ落とされて、なんかいつのまにか自分はなんかイルカみたいになってました。
なんか不思議なことに、あれだけ昔自分が頑固で、なんか老いぼれてるような心だったのに、人と出会うたびにどんどんなんか自分が柔かくなってって、なんかどんどん赤ん坊のような気持ちになってってます。

自分が音楽やってる間、ずっと大事にしてることが一つあって。
それは、自分の心の声に耳を澄ませるっていうこと。
いつも自分の心がこっちだっていう方に今まで歩いてきました。
で、今赤ん坊みたいになった自分が確かに言えることは、なんかオレはまだこの広い海の中で何も知らないっていうこと。
まだ自分が何もわかってないんだって言うことが、前に進むたびにどんどんそう感じて。
今はなんかそういう自分の中でのわかんなさとか、知らなさとか、
それって可能性でもあると思うし、なんかそういうものにゆっくり向き合いたいなって思ってます。

昔、東京のクラブで自分の曲をUSBに入れて配って回ってた時に、どこにも相手にもしてくれなくて、ライブ一回やるのもすごく大変でした。

でもそこから8年経って、今年仲間たちとソロでアリーナでライブを成功させました。

子供の頃に、母親と行ってた、はぐれたショッピングモールでそれから20年経って、自分の映画がそこで上映されました。

世界中を飛び回ってみたら、各地では仲間たちが待ってました。

こないだ朝起きた時に、朝焼けの中で自分の中でなんかこうしっくり来る気持ちがあって、今までやれることは全てやってきたし、まあすごい晴々とした雲一つないような気持ちでオレはいます。

聞いてください。
2026年、来年をもって僕は音楽活動を引退します。

でも、オレがオレっていう船を降りることは今までもこれからもないし
生まれた時から今もこれからもオレはずっと自分の王道を歩いてるし、
だからこれから先もきっとまたオレの人生とみんなの人生が交差することはあると思います。
ただなんとなく、ダラダラするのがオレ苦手なので。
今オレの心は自分の知らないこととか、わかってないことに向き合って新しい世界を見たいって、そう言ってるから、その声を素直に聞こうかなと思ってるって感じです。

今までみなさんありがとうございました。

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