大手企業とのタイアップ、行政機関との取り組み──特化型VTuberはどう受け止めてる?
──行政の取り組み、大手企業のプロモーションなど、権威性のあるシチュエーションで特化型VTuberが起用されるケースも増えています。みなさん自身は、世の中からの観られ方が変わっている実感はありますか?
宇推くりあ この数年でだいぶ変わった気がしますね。そもそも、りあがデビューした2020年当時「特化型VTuber」という言葉はなくて、後から言われるようになったんですよ。気づいたら学術系とか特化型とかのカテゴリに入れられてたかも。
最近は、儒烏風亭らでんちゃん(※)の影響もあって、特化型VTuberの注目度が高まった感はあるかも。
※ホロライブプロダクション傘下のhololive DEV_ISに所属するVTuber。学芸員資格を保有しており、箱根ガラスの森美術館の音声ガイドを務めたことも話題に。
かなえ先生 VTuberの発信力が社会から求められているとは感じてますね。今まで発信者をなかなか探せなかった企業にとっては、ありがたい存在になってるんじゃないかな。
宇推くりあ りあは、JAXAの方々とすごく距離感が近くなっていて。最近は、普通にお話できるようになってるんだけど……デビュー当時から考えたら想像すらできないくらいありがたい状況なんだよね!!
5年前はやっぱり、VTuberってだけで「なんだろうこの人?」からはじまってる感じがあったの。ましてや「アイドルです!」とか言いながらあちこち行くとね、「遊びに来たのかな?」みたいな目で見られてた。
でも、ガチ解説をしているうちに信頼してもらえて。今は「同志のような気がした」「ロケットのことを広めたい気持ちの強さを感じた」って言われるのがとても嬉しい!
宇推くりあ 一方で、ノクトさんも言ってたけど、宇推くりあは地球での具体的な経歴や肩書は持っていないから、「こういう学位があります」とか、「こういう論文書きました」みたいな履歴が公表できない。
学術を語る上で学位や経歴は信頼に繋がるものだから、そこはハンデでもあり、逆に言えば中身だけで勝負ができるとも言える。そういう意味では、良い面も悪い面もあるなあ。
潤音ノクト 「VTuberが何を言ってんだ」みたいな空気は、自分もありましたね。特にクラシック音楽は、まだVTuberがあまり受け入れられてない業界なんです。活動をはじめたときは批判的な目もありました。
デビューのとき、コンサートホールでオーケストラと共演したんですけど、最初は「収録でしょ」とか「別の人が弾いてるんじゃない?」みたいなコメントもあったんです。
でも、リアルタイムでオーケストラと息を合わせて演奏している様子を見てもらって、そこからガラッと変わって。
潤音ノクト 音楽は生身もVTuberも関係ない──まさに中身の勝負だと伝えたかったので、それが達成できた手ごたえはありましたね。
大切なのは「どうなりたい人なのか」を覚えてもらうこと
潤音ノクト 僕、先輩方に聞いてみたいことがあるんですけど、お二人は目標とか設定してますか?
特化型VTuber、特にお二人のような学術系だと、何かにチャレンジしていくというよりは、持っている知見を視聴者さんに提供する活動スタイルじゃないですか。そうなると目標設定が難しい気がしていて。
かなえ先生 これは4年前からリスナーに言い続けてるんですけど、僕は将来自分でテレビ番組をつくりたいんですよね。
「おはようございます。何月何日、今日の天気は何です」ではじまって、お天気お姉さんがいて、事件解説する人がいて、事件以外の特化型VTuberさんも来て──今日のニュースを教えてくれるような。
そういう番組を自分の3Dスタジオを持って、いつかつくりたいんだよねって話してます。
宇推くりあ りあも「宇宙でアイドルライブする!」っていろんなところで言ってるよ!
かなえ先生 言い続けたらできそうな気がするもんね。
見てる側も「この子いつかやりそうだな」って思えてくる。そう考えると特化型VTuberは「この人はどんな人なんだろう」と同じぐらい、「この人は何をしたい人なんだろう」と知ってもらうのが大事かもね。
宇推くりあ それでいうと、りあは活動の中でストーリーテリングを意識してる。「自分はこう思っていて、いつかこうなりたいんだ」というメッセージを都度伝えたり、「実はあのときの話はこれに繋がってるんだよ」と説明したりして、いつか叶える夢のための伏線を張っていくというか。
推しの応援でも何でもそうなんだけど、人はストーリーに心動かされる気がするんだよね。大好きなアニメを見ていても、「最初はうまくいかなかったけど、頑張って練習して夢に近づいた」とか、それだけでりあは泣けるから……。活動の中でそういう素敵なストーリーをりあも描いていけるように、その時々の気持ちを言葉にして伝えてるかな!
潤音ノクト なるほどなあ。僕はまだ目標や夢をリスナーさんと共有してなくて──デビュー時に少し話したのは、「カーネギーホール」という世界トップレベルのホールがアメリカにあるんですけど、そこで演奏したいということ。だいぶ大きく出ちゃったんですけど……!
潤音ノクトさんは後輩の八十八カノンさん(左)と共に、3月1日初のオンラインコンサートを開催した
潤音ノクト でも今思えば、あれはたしかに大事な目標の一つではあります。そこで演奏できた瞬間は多分、VTuberであることも含めて、僕の活動がしっかりと芸術として認められたときだと思うから。
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