音楽にできることがあるのなら、それは僕が「御殿」を建てること
──以前、agehaspringsに所属している元気ロケッツのプロデューサー水口哲也さんと対談されていたことがありましたよね。自分がネット発のクリエイターとして活動していくことは、後続のための「整地」と「開墾」の意味もあると話されていました。その強い覚悟は今も変わっていませんか?音楽の未来|水口哲也×kz(livetune) ②
kz そのマインドはいまでもあります。現在の自分の言葉で言うと、僕らが音楽シーンに切り込んでいって土壌をつくるというのが「整地」で、今度は作物が育つような場所に「開墾」して種を埋めなければと。
結局一人じゃダメで、後続をつくらないとシーンにならない。バンドでいえばナンバーガールのフォロワーはいても、その次っていうのはすごくオルタナティブでまばらになっていくじゃないですか。それはシーンがちゃんと形成できてなかったからだと考えていて。
だからこそ僕らの活動に憧れて「続いてやろう」ってみんなに思ってもらわないといけないんです。その気持ちは、「DECORATOR」という曲に込めているんですけど。
livetune feat. Hatsune Miku「DECORATOR」Music Video
僕の音楽はエレクトロハウス、エレクトロポップの系譜ですが、僕の前には中田ヤスタカさんがいて、もっと遡ればYMOやクラフトワークがいる。意識的かどうか問わず、先人は種を埋めてくれているんですね。感謝もしているし、それを継承していかないといけない。僕は、音楽が売れないと言われているいま、シュリンクして死に耐えていってしまうかもしれない音楽産業に一番何ができるかっていったら「御殿」を建てることだと思うんですよね。
──kz御殿を!?
kz そうです(笑)。音楽で稼いだお金でハリウッドに御殿を建てるみたいな、そういうものが希望だと思うんですよね。最近でいったら、世界的DJのAviciiが23歳にしてハリウッドに16億の家を建てたんですけど、あのニュースって「いまでもその値段の家をミュージシャンが建てられるんだ」というすごい希望がありましたから。
僕個人のことでいえば、5、6年前にアーティストのDE DE MOUSE(遠藤大介)さんがライブハウスの楽屋で「夢を見させること自体が僕らの仕事なんじゃないかな」という話をされていて。その時に「お前は家を建てろ」って言われたのが、すごく残っているんですよね。それに、「下に憧れを持ってもらうには、僕はキャリアを積み過ぎたからキミらがやっていかないといけないんだ」ってことも言っていて。
だから、ネットから出発したクリエイターのお手本として、次の世代へ種をまく意味でも、もっと活躍していけたらいいなと思っています。
ドン・キホーテにCDが置かれることが日本最強
──音楽シーンでいえば、VOCALOIDを使用してオリコンにランクインしている人がいても、じゃあ彼らがお茶の間に知られているかというと、そこまでの人はいませんよね。kz 日本において何が一番最強かっていうと、ドン・キホーテで楽曲がかかって、CDが置かれることだと思うんですよ。あそこに置かれているCDは、AKB・ジャニーズ・EXILEとか、日本にいれば誰でも知っているようなミュージシャン。ドン・キホーテにあるというのは、印象的にファッシナブルじゃないかもしれないけど、ここが万人に受け入れられたという本当の最終地点かなと。
それに日本全国で誰でも買えるという意味ではAmazonがありますけど、あらゆる商品をポチれるAmazonに在庫があるのと、フラッと立ち寄ったお客さんに売れる可能性があると思ってドン・キホーテにCDが置かれているっていうのは全くスタンスが違うので、そこまできたら王手ですよ。しかもネット発の僕らのCDがそこに置かれたら、ものすごい下克上だと思いませんか。
livetuneとしてはいけなくても、プロデュースして行けるならそれでもいいと考えています。もちろん、両方で行けるのが一番いいですけど。
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livetune(kz)
トラックメイカー・DJ
2008年8月にアルバム『Re:package』でメジャーデビュー。インターネットを中心としたリミックス・オリジナル楽曲の投稿に火が点き、今や国内外で活躍するアーティストとなっているkzのソロユニット。
9月3日にはTVアニメ「リプライ ハマトラ」OPでもある、9mm Parabellum Bulletの菅原卓郎を迎えたシングル『千の翼』を、10日にはaddingシリーズの集大成となるアルバム『と』を立て続けに発売。
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