「GTA」好きの同志と強盗ミッションに明け暮れた日々
──『GTAオンライン』では、数多くの大型コンテンツが追加されるアップデートが実施されました。これまでのプレイ経験で、お気に入りのものはありますか?OZworld ひたすら強盗ミッションを友達と回してました。がっつり報酬がもらえるハードモードで数億稼ぐ、みたいな。一番好きだったのは「パシフィック銀行」の強盗ミッションですね。『GTAオンライン』を始めたての頃は「切望の入り江」を繰り返したけど、気づけば強盗ミッションに夢中でした。
※「切望の入り江」は、「GTAオンライン」でプレイ可能なミッションの一種。「カーゴボブでコンテナを目的地まで運ぶ」という内容で、儲けの良さから周回プレイに勤しむユーザーが多かった
──ちなみに強盗ミッションでは、OZworldさんはどんな役割を担当していましたか?
OZworld 役割は基本ランダムですが、個人的に楽しいのは車の運転です。最初は難しかったけど段々と慣れたし、結構自信ありますね。『GTAオンライン』にはミサイルが撃てる戦闘車両もあるんですけど、自分は別の装甲車によく乗ってましたね。 ──『GTAオンライン』と言えば、2021年12月の大型アップデート「契約」では、ヒップホップアーティストのDr.Dreとタイアップした限定ミッションが実装されましたね。「Dr.Dreの音源リークを阻止する」というストーリーラインが特徴的でしたが、実際にプレイされた感想はいかがでしたか?
OZworld Dr.Dreがそのまんま過ぎて、感動しました(笑)。しばらく『GTAオンライン』触ってなかった人も、あのアップデートで戻ってきたんじゃないですかね? やっぱりヒップホップが好きな人は「GTA」も大好きだと思うので。 OZworld 自分もYouTubeでPVを見た時は「どんな感じなんだろう」と思いましたけど、すごかった。衝撃的でした。フランクリンがまさか“あの立場”で登場すると思ってなかったし、『GTAV』を遊んだ人からしてみると、「そこに登場するんだ!」っていう驚きと感動がありますよね。
──「契約」ではDr. Dreが計6曲の未発表曲を発表しましたよね。
OZworld そうですね、すごいコラボだった。自分はラッパーという立場から、シンプルに憧れます。あの世界に入りたいと願うアーティストって世界中にいるからこそ、もし自分が出られるとしたらどんな風に映るのか、いろいろ想像もしました。
OZworld やりました! 「最初の一服」っていうストーリーミッションがあって、インパクト抜群だったのは4つめの「無制御領域」。トリップしながらチャリンコ漕ぐ描写がウケました(笑)。
しかも笑えるだけじゃなく、薬物売買にまつわるビジネス要素がリアルに描かれてる。麻薬王にのしあがる『ブレイキング・バッド』っていうドラマを思い出しました。それくらいつくり込まれてて、トレーラーの中で企むシーンも含めてディテールがめちゃくちゃ凝ってるし、遊びごたえもありましたね。
USカルチャーを学び、創作の糧とした「GTA」ライフ
──「GTAを通してヒップホップを学んだ」とうかがいましたが、ゲーム体験やゲームカルチャーは、OZworldさんの音楽活動に影響を与えていますか?OZworld 自分は影響されまくってるタイプですね。ゲームって“アートの集大成”だと感じてて。グラフィックもそうだし、ストーリーも作品によっては長時間に及ぶじゃないですか。しかも、受動的に鑑賞するわけじゃなく、自分の手で能動的にキャラクターを動かすことができる。個人的にはゲーム=(人生の)シミュレーションだと思っています。
音楽に関する演出面も込みでインスピレーションを受けまくってるし、BGMを通して作品のセンスが伝わってくる。やっぱり、良いゲームには良い音楽がつきものなので。 ──本当にその通りですね。「GTA」シリーズも早い段階からBGMとして人気アーティストの楽曲を採用していて、音楽面でのこだわりが強い。『GTAV』では20種類以上のゲーム内ラジオ局から好きなものを選べますが、OZworldさんは何を聴いてましたか?
OZworld ヒップホップ系の「Radio Los Santos」しか聴いてなかったですね。ヒップホップを聴きながら『GTAV』でドライブする時間がめっちゃ好きでした。 OZworld あのラジオ局でかかるアーティストはみんな聴き馴染みがあるし、だからこそぶち上がった。音楽を聴きながら一人でドライブするのも全然アリだし、友達を乗せて島をグルっと回るだけでも楽しくて。そうやって楽しめるゲームって、あんまりないですよね。
──現実のドライブと似た感覚ですよね。ほかにも“仲間と一緒に音楽を楽しむ”という点では、『GTAオンライン』に実装されているナイトクラブ「The Music Locker」もありますよね。
OZworld あそこも、もう海外のクラブそのものですよね。
──OZWorldさんは、こういったオンラインゲーム内で広がる音楽空間に興味はありますか?
OZworld 仮想空間「メタバース」に対する需要も高まってるし、現実のクラブシーンと同じような感覚を味わえるクオリティなら、(こういった試みも)可能性は十分秘めてると思います。 ──ゲームと音楽とはやはり切っても切り離せないですもんね。実際にOZWorldさんが『GTAV』でインスピレーションを受けたシーンやお気に入りのスポットはありますか?
OZworld 場所で言えば、都市部を出て左上のパレトベイに北上していくと見える街並みが好きです。沖縄の海沿いにある高級住宅街に近いというか、地味だけどそういう情景が感じられる場所が好きだったりします。
あと『GTAV』は海の描写が本当にキレイで、PS3版の頃から感動してました。それがPS4になり、PS5になって「まだ進化するのか」って(笑)。そうしたインスピレーションも受けましたけど、一番は、語ってきた通り、そもそも『GTAV』を自由に遊ぶことで、自分の発想力が養われた気がします。
──「GTA」と出会っていなかったら今のアーティスト活動は違ったものになっていた?
OZworld 「GTA」は確実に(自分の活動への)スパイスだから。自分でプレイするゲームだからこそ学べることがあったりとか、何気ないキャラクターのやりとりを垣間見てそこから人間関係を学ぶこともできます。
それに、ゲームの世界だけど、作中で起こる出来事はあながちそこまで大げさではないというか。ヒップホップに対する向き合い方を含め、培ってきた人生経験が「GTA」に触れたことでブラッシュアップされたと思ってます。 ──それだけ自分の核になっているゲームということなんですね。これは「GTA」に限らずですが、OZworldさんの楽曲『NINOKUNI』はじめ、10-20代のラッパーがゲームからの多大な影響を公言し、そうした世界観を表現した楽曲が以前よりも多くなっているように感じます。なぜなんでしょうか?
OZworld ゲームに込められたストリート要素に惹かれるからじゃないでしょうか。「GTA」に関して言えば、ゲーム内のファッションや車に理想とするヒップホップのイメージを落とし込むことができる。しかもサウンドトラックに実際のヒップホップの曲が使われるから、ゲームの中で時間を過ごしたくなるんです。それでいてUSのライフスタイルが細かい部分までつくり込まれてるのも大きい。
ゲームを通してすべて学べるかはわからないけど、それでも「GTA」を通してヒップホップカルチャーを知るプレイヤーは大勢いる。
同じロックスター・ゲームスさんから出ている『Red Dead Redemption 2』(RDR2)もめっちゃハマったし学んだことも多いですね。あのゲームでは西部劇の時代が終わりを迎えて、力の象徴が移り変わる狭間を描いてました。
※『Red Dead Redemption 2」は、2018年10月26日にロックスター・ゲームスより発売されたオープンワールド/アクションアドベンチャー作品。新しい時代の幕開けを控えた19世紀末のアメリカを舞台に、プレイヤーはガンマンとして険しい荒野を生き抜いていく
OZworld そうなんです。例えば『RDR2』の作中で登場キャラとポーカー対決ができるんですけど、あの時代ってなんで男はヒゲがボサボサなのかと考えた時、「もしかして口元(表情)を悟られないようにあえて伸ばしてる?」って。合っているかわからないけど、こんな風に考察できること自体に夢中になりました。
『RDR2』は、完全にあの時代にタイムスリップする体験ができる。現代にはない19世紀の光景は新鮮だし、手に取って扱うピストルやナイフのデザインがこだわり抜かれてる。それによく観察すると、NPCにもしっかり生活リズムが存在していて、目的に沿って日常を送ってるんです。シングルプレイってどこか寂しさを感じがちだけど、NPCを含めて社会がきちんと生きていて、各々の人生を謳歌してる。「ここまでつくり込めるのか」という感動が大きかったですね。
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