懐かしい地元と言うか、自分にとっては第2の故郷ですね

ラッパーのOZworldさんが実感を込めてそう語るのは、ゲーム作品「Grand Theft Auto」(GTA)シリーズ。自らのルーツを大事にするラッパーに「第2の故郷」と言わしめるのは並大抵のことではない。

全世界でソフト売上1億7500万本を越えるモンスター作品『Grand Theft Auto V』(GTAV)。同作品は25年の歴史を誇る「GTA」シリーズの最新作であり、2013年9月17日のリリース以降、今なおユーザー数を大多数抱えるまぎれもないヒットタイトルである。

『GTAV』に即した世界観にプレイヤー自身が降り立つマルチプレイ対応作品『GTAオンライン』も今年でサービス開始から10年を迎え、大型アップデート「ロスサントス ドラッグウォーズ」が現在進行系で話題を集めている。
「GTAオンライン:ロスサントス・ドラッグウォーズ」
そんな「GTAV」に熱い視線を向け、アメリカンカルチャーから音楽に対する向き合い方まで教わったと語るのがOZworldさんだ。

音楽活動のみならず、バーチャル特化プロジェクトの立ち上げなど、多方面にわたって強い世界観へのこだわりと自身のチャレンジ精神を知らしめる沖縄出身のラッパー。e-Sportsチーム・FENNELへの電撃加入を2022年9月に発表し、自他ともに認めるゲーム好きのOZworldさんは「GTA」とどのように出会い、ゲームを通して何を体得したのか。

『GTAV』が自らに与えた衝撃、そして『GTAオンライン』で養われ、創作の糧となった発想力の源泉を語り尽くす。

取材・執筆:龍田優貴 撮影:yukitaka amemiya 編集:新見直

目次

出会った日から、夢中にさせられた

──OZworldさんが「GTA」を遊び始めたのはいつですか?

OZworld 中学の頃にPSP(PlayStation Portable)で遊んだ『Grand Theft Auto: Liberty City Stories』が「GTA」との最初の出会いでした。マップが広くてストーリーも奥深くて、それまで自分が知っていたゲームと全然違ったんです。「何だこれ!」って驚いたし、そこから「GTA」にハマってます。『GTAV』はPlayStation3版から狂ったようにずっとやってましたね。そもそも、家庭用ゲーム機で最初に買ったのも『GTAV』なんです

──確かに、初見プレイ時は「GTA」の広大なマップにも驚きますよね。『GTAV』も自由度の高さが特徴的ですが、OZworldさんはどこに魅力を感じましたか?

OZworld 車を走らせたり街を歩いたり……別に「何かしよう」って決めなくても、ただプレイしてるだけで楽しいところです。ロックスター・ゲームスの作品はつくり込みがめちゃくちゃ細かいじゃないですか。『GTAV』では「夜に山へ登ったら幽霊が見える」とか『Red Dead Redemption 2』では「ニコラ・テスラの研究所がある」とか、そういうディテールもちゃんと凝ってる。

俺はミッションを順番に進めるのが苦手なタイプだから、自由に設定を決めて友達と遊んだりしてます。そういう意味では、「GTA」はアイデアを自分で膨らませて実現できる作品だと思います。

“自由”が大好きだからMr.FreeDomっていう沖縄のヒップホップクルーをつくったぐらいだし、自分らしく楽しめる『GTAV』にハマったのは必然だったのかも。

──『GTAV』のストーリー面では、マイケル・トレバー・フランクリンという3つの視点から描かれています。思い入れが深いキャラクターはいますか?

OZworld どのキャラも印象的ですけど、一番好きなのは主人公のひとりであるフランクリンですね。立ち居振る舞いや性格、ゲットーでのリアルな生活とか、リアルな人柄が一番イメージしやすかったのがフランクリンでした。

最初は親戚の叔母さんと一緒に住んでるけど、マイケルと出会って色々な仕事をこなすうちに人生が動き出す。大騒動に巻き込まれながらメイクマネーする姿がまさにヒップホップドリーム的で、USヒップホップのイメージをしっかり落とし込んでいて。ゲームを通して能動的に体験できるのも良くて、自然と入り込めました。
『グランド・セフト・オートV』:フランクリン
※『GTAV』には革新的なキャラクター切り替えの仕組みがあり、プレイヤーはいつでも3人のキャラクターのうち1人をプレイすることができる

「GTA」の中でも、遊びを独創してきた

──10年目を迎え、40回以上のアップデートが行われた『GTAオンライン』は、『GTAV』のストーリーモードと対をなすマルチプレイです。そちらにもハマっていた?

OZworld 『GTAオンライン』もめちゃくちゃやってます。

『GTAV』の場合はフランクリン、マイケル、トレバーという人生がちゃんと決まっていて、彼らの人生をプレイヤー自身が追体験できる。

『GTAオンライン』の方は自分だけのアバターをつくって、他のプレイヤーとも気軽に遊べる。文字通り「GTA」に自分が入った感覚が味わえます。プレイ人数の違いはあるけど、どっちも高い自由度が保証された世界を楽しめますね。

──『GTAオンライン』では、OZworldさんも誰かとプレイしていますか?

OZworld 色んなやつと一緒に遊びました。それこそ学校の友達とかマネージャーともやったし、(過去に自身が出演したMCバトル大会)「高校生ラップ選手権」に出てたLick-G、それにAPELILとか写楽とも一緒にプレイしました。BAD HOPのメンバーも「GTA」好きだし。

高校生の頃に「GTAオンライン」でゲーム配信もやってみたら意外とみんなが見てくれて。やっぱり世界観とか音楽面とか、「GTA」とラッパーって特に親和性が高いし、ある意味「GTA」はヒップホップ文化を知るバイブルかもしれないです。

──「GTA」好き同士で気ままに遊べるのが『GTAオンライン』の醍醐味ですもんね。それに『GTAオンライン』は、プレイヤー自身があの世界で生き抜く感覚を味わうことができますよね。収録コンテンツも豊富ですが、特に思い出深いミッションや遊び方がありますか?

OZworld 好きな車に乗って競争する“島一周レース”がかなり盛り上がりました。自分は空を飛べる「デラックソ」が大好きで、緑色の宇宙人スキンに着替えて辺りを徘徊してました(笑)。

「デラックソ」

あとは「パシフィックブラフス」(美術館)の庭園迷路で鬼ごっこをしたりとか。逃げる側はボイスチャットをつけて、鬼側はみんなの声が聞こえないようにミュートにして。ホッケーマスクを被った鬼に追われるから『13日の金曜日』状態(笑)。 ──『GTAオンライン』の中でも、遊びを発想してプレイしてるんですね。ちなみに『GTAオンライン』は公開マッチで遊んでいましたか?

OZworld ずっと公開マッチですね。誰かが参加してる公開マッチに合流してました。 ──公開マッチは世界中からプレイヤーが参加してますが、印象深い交流はありますか?

OZworld かなり最低ですけど、車とかヘリコプターで、知らないプレイヤーを迎えにいくとするじゃないですか。警戒せずに乗ってくる人が意外と多いんですよ。それでそのままチリアド山にまで連れて行って、何も言わずに山頂で下ろすっていう遊びをしてました(笑)。初心者だと乗り物をまだ持ってない人もいるし、リスポーン地点も限られてくるから、下山がかなり大変なんです。

──知らずに乗ってしまうと命取りですね…(笑)。 OZworld 「知らない人には着いていっちゃダメだよ」っていう(笑)。

──一種の社会勉強にはなるかもしれません。

OZworld 確かに勉強ですよね。僕も同じ経験をしたし、現実でも知らない人へ付いていくのはやっぱり危ない。大げさかもしれないですけど、「GTA」で学んだことは多いと思います。

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プロフィール

OZworld

OZworld

オルタナティブHIP HOPアーティスト

オルタナティブHIP HOPアーティストOZworld(オズワルド)。
沖縄生まれ沖縄育ち、独特の感性とトリッピーな世界観から飛び出すリリックと変幻自在のフロウを巧みに操り独自のワールドを展開する。
2018年にリリースしたシングル“畳~Tatami~”が話題を呼び、2019年に1st Album「OZWORLD」をリリースし全国デビュー。収録曲“NINOKUNI feat. 唾奇”は、YouTubeに公開したミュージックビデオが1,700万回を超え、衣装は世界的ブライダルファッションデザイナー桂由美がデザインを手がけるYumi Katsuraより提供を受けている。
2020年にはレーベル兼マネジメント事務所I'M HAPPY ENTERTAINMENTを立ち上げ、同年に零-zero- Album「OZKNEEZ FXXKED UP」をリリースした。
2021年以降も数々のブランドやメディアとのコラボレーションを果たし、2022年には日本で初めてHIP HOPアーティストとしてプロeスポーツチームに加入し、FENNELの正式メンバーとなって話題となる。
近年では自身をキャラクター化したNFTアート作品の販売など、ヴァーチャル領域での活動を行うためのプロジェクト「NiLLAND」を立ち上げ、HIP HOPの枠に囚われない先進的な活動を展開している。

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