「ノベルピア」Web小説で夢見る世界

異世界転生、悪役令嬢、パーティー追放など、様々なトレンドを生み出し、今やネットカルチャーを語るうえで欠かせない「Web小説」。

2021年2月に韓国でローンチされた新興のWeb小説サービス「ノベルピア」が、2022年8月に日本版サービスをリリースした。

オープンから現在まで、1PV=1円という業界最高水準の還元率でキャンペーンを行っているノベルピアは、次なる一手として賞金総額1000万円のコンテスト「第一回ノベルピアWEB小説コンテスト」を開催する。

本稿では、ライトノベルや雑誌・小説の編集者として活動する松浦恵介さんを聞き手に、ラノベの歴史解説本『ライトノベルの新潮流』(standards)を共同で執筆した有識者たちによる座談会を実施。

左から松浦恵介さん(ライトノベル編集者)、石井ぜんじさん(元『GAMEST』編集長)、太田祥暉さん(アニメ/ライトノベルライター)

アーケードゲーム誌『GAMEST(ゲーメスト)』の編集長をつとめた石井ぜんじさん、アニメやライトノベル、特撮に関する書籍の執筆・編集を行う太田祥暉さんに、現在のWeb小説シーンや今回のコンテストの選考基準、受賞しやすいであろう作品の傾向を分析してもらった。

「第一回ノベルピアWEB小説コンテスト」の詳細はこちら 取材・文:松浦恵介 編集:小林優介

目次

韓国生まれの小説サイト「ノベルピア」の実態は……?

松浦恵介 「ノベルピア」では、2023年1月に「第一回ノベルピアWEB小説コンテスト」という大規模な新人賞を企画しているそうです。

そこで、『ライトノベルの新潮流』の著者である僕たち3人で、「ノベルピア」や来年開催されるWeb小説コンテストへの期待を語っていきたいと思います。

『ライトノベルの新潮流』/画像はAmazonから

石井ぜんじ太田祥暉 よろしくお願いします。

松浦恵介 まず本題に入る前に、「ノベルピア」というサイトについて、改めて簡単に情報を整理しておきましょう。

「ノベルピア」は元々、韓国で生まれたWeb小説サイトです。韓国のWebToon配信サイト「TOPTOON」を運営するTOPCOによって、2021年1月に立ち上げられました。現在は、韓国版をメタクラフトという会社が、日本版をNOVELPIA JAPANがそれぞれ運営しています。

新興ながら勢いがあり、韓国ではカカオエンターテインメントが運営する「kakaopage」、NAVERが運営する「SERIES」、現在はNAVER傘下になっている老舗「Munpia」に次ぐ知名度があるようです。

太田祥暉 超大手に次ぐくらいの立ち位置、という感じでしょうかね。

松浦恵介 そんなところでしょう。韓国では、カルチャー的な側面が強い小説サイトだと認識されているそうで、男性向け作品が人気なようです

太田祥暉 成人向けの作品も投稿できるんですよね。日本版でもすでに多くの作品が掲載されています。

松浦恵介 韓国だと成人向け作品が掲載できるサイトは少ないそうなんですが、提携している「TOPTOON」が男性向けR-18作品に強いサイトなこともあり、韓国版「ノベルピア」は成人向けもOKなんです。

日本版「ノベルピア」もこの特徴を引き継いでいて、日本で投稿された作品だけでなく韓国のR-18作品を翻訳したものもたくさん載っていますね

石井ぜんじ なるほど。

松浦恵介 あと「ノベルピア」のもう一つの大きな特徴が、「作家が稼げるサイト」であることを強調している点。サイトのキャッチフレーズは「小説で夢をかなえる世界!」。

「ノベルピア」が生まれた韓国は、Web小説の産業化が進んでいて、Web連載だけで年間1000万円以上稼ぐ作家がいると言われています。夢がある世界ですよね。 石井ぜんじ 日本とはかなり文化が違うようですね。

松浦恵介 日本だとWeb連載は無料で読ませ、書籍化やメディアミックスで収益を上げるのが一般的ですが、韓国だとWebの有料連載で稼げてしまうんですね。

以前、韓国人の知り合いから「日本のWeb小説は本当に無料ばっかりなんですか? だとしたら、作家さんはどうやってご飯を食べているんですか?」と聞かれたことがあるくらい、向こうではそれが当たり前のことのようです。

日本版「ノベルピア」も、韓国のWeb小説サイトのような有料連載で、作家が稼げるシステムを採用しています。

太田祥暉 「ノベルピア」を開くと、サイトのトップに「現在累計600万円!」みたいな文字が出てきますけど、これを見て驚く人もいるでしょうね。

松浦恵介 ですね。その文字は、ベータ版がリリースされたときからやっているキャンペーンの数字で、キャンペーン期間中に、自分が投稿した小説が読まれると1PVあたり1円ゲットできるようになっています。「ノベルピア」はこのキャンペーンのために資金を3000万円用意していて、上限に達するまではキャンペーンが続く予定です。

太田祥暉 総額3000万円!

松浦恵介 なかなか豪快ですよね。僕の知人でも、すでに日本版に小説を投稿して1万円以上稼いでいる人がいます。

賞金総額1000万円! 第1回ノベルピアWEB小説コンテスト

太田祥暉 そういえば、今回のコンテストの賞金もすごいですね。

松浦恵介 今回開催されるコンテストですが、やはり目を引くのは賞金ですよね。なんと賞金の総額は1000万円!

太田祥暉 非常にやる気を感じます(笑)。えっと、この1000万円というのは、さきほどのキャンペーンの話で出た3000万円とは別ですよね? 豪快だなぁ(笑)。

松浦恵介 コンテストの詳細ページを見ると、賞金総額1000万円で大賞500万円、金賞200万円、銀賞100万円、奨励賞が5作品で20万円という内訳です。全部に受賞作が出るかはわかりませんが、第一回目のコンテストですし、「該当作なし」ばかりということはない……はず(笑)。

「第一回ノベルピアWEB小説コンテスト」賞金内訳/画像はコンテストページから

太田祥暉 大賞が500万円って、日本国内のライトノベル新人賞と比べると破格ですよね。日本だと大手の新人賞でも300万円ぐらいでしょう?

松浦恵介 そうそうない金額ですね。一般文芸なら『このミステリーがすごい!』の大賞が1200万円だったり、江戸川乱歩賞にも1000万円だった時代があったりしましたが。

石井ぜんじ 真面目な話、賞金は重要ですからね。社会人として考えると、やっぱり執筆にかかったコストの元が取れるかっていうことを意識するので

松浦恵介 石井さんも小説書いて「ノベルピア」のコンテストに応募しましょうよ!

石井ぜんじ いやいや……(笑)。それにしても、僕の世代からすると時代は変わったなと思います。昔は出版社が主催する新人賞に応募して、受賞して本が出て、という形でデビューするのが普通だった。

今回のコンテストは、受賞作が出版されるかどうかは未定なんですよね?

松浦恵介 明記はされていないですね。Web小説家の中には「お金よりも、自分の書いた作品が書籍として世に出ることの方が大事」という方も多いですから、今後明確に打ち出してくれるようになるとうれしいですよね

「ノベルピア」は出版社ではないので、仮に受賞作が書籍として出版されるとしたら、他社との協業か、ライセンスアウトという形になるかとは思います

石井ぜんじ 面白いですね。今の時代だなという感じがします。

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プロフィール

松浦恵介

松浦恵介

ライトノベル編集者

1980年、広島県生まれ。ゲーム雑誌の編集者などを経て、現在はフリー編集者/ライター。エンタメ系の書籍やムック、ライトノベルの編集のほか、ゲームの開発協力などにも携わる。

石井ぜんじ

石井ぜんじ

元『GAMEST』編集長

1964年生まれ、神奈川県出身。アーケードゲーム専門誌『GAMEST』の元編集長、ゲームライター。主な著書は『ライトノベルの新潮流』『ゲームセンタークロニクル』『石井ぜんじ「ゲームクリエイター」インタビュー集 ゲームに人生を捧げた男たち』『石井ぜんじを右に!』。ゲーム、ライトノベル、SF、ミステリ、アニメ、VTuberなどエンタメ全般に興味あり。

太田祥暉

太田祥暉

アニメ/ライトノベルライター

1996年生まれ、静岡県出身。編集者・ライター。編集プロダクション・TARKUS所属。アニメやライトノベル、特撮を中心に活動中。主な構成書籍に『石浜真史アニメーションワークス』『世話やきキツネの仙狐さん オフィシャルファンブック もっともふもふするのじゃよ!』など。担当中の雑誌に「ニュータイプ」「宇宙船」「ドラゴンマガジン」など。

連載

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