幼少期から家族の影響で音楽に興味を持ち、とあるアニメの影響で声優に憧れを抱くと、学生時代にはすでに趣味で音楽制作、ナレーションの仕事も始めた。
声優になって以降、自身でスタジオを設けたり、イヤホンの開発・監修やASMRレーベルを立ち上げたり、2022年9月には情報処理学会・電子情報通信学会の合同会議FITで共著論文が表彰されたりと、常に音声・音響・音楽と共に生きてきた。 そんな自身を「エンジョイオタク」と称す彼女から、音声・音響・音楽に興味を持ったきっかけや関心を持ち続けられる理由など、「音」と歩んだ人生を振り返るインタビューを小岩井ことりさん自身のスタジオで実施。
加えて、200機種近くのオーディオ機器を集めている彼女に、通信機器メーカー・HUAWEI(ファーウェイ)のイヤホン「HUAWEI FreeBuds Pro 2」のレビューを依頼した。
使ってみての感想はもちろん、「特にここがおすすめ」という気になった機能からシーンを想定した上での使い方のリコメンドまで──長年音と向き合い続ける小岩井ことりさんの分析は、当日同席したHUAWEIの担当者を何度も唸らせた。記事最後のプレゼントキャンペーンもお見逃しなく。
【写真】小岩井ことりさん「HUAWEI FreeBuds Pro 2」イメージカット 取材・文:阿部裕華 編集:恩田雄多 写真:黒羽政士
目次
小学生の小岩井ことり「パソコンを買ってほしい、就職にも必要だから」
──小さい頃から音楽や声など「音」「音声」に興味があったのでしょうか?小岩井ことり 小さい頃から知らず知らずのうちに興味を持っていたと思います。家族のみんなが、日常生活の中で、遊びでミュージカルのように急に歌い出すような環境だったんですよ。ほかの家もそうだと思っていたら違ったので、後々変わった家庭だったことにも気づきました(笑)。
また、それとは別にお姉ちゃんがエレクトーンを習っていたのも、音楽に興味を持った大きな理由の一つです。家にすごく大きなエレクトーンがあって、私も遊びで弾いていたんです。プリセットが備え付けられているものだったから、いろいろ鳴らしてみては演奏してを繰り返していました。
──ミュージカルは音楽とお芝居で構成されていますが、小さい頃から声優にも通ずるお芝居にも自然と興味が湧いていたということですね。
小岩井ことり そうですね。声優をやってみたいと思ったきっかけは小学生になって『ポケットモンスター』を見てからだったのですが、それより前からお芝居に興味があったのかもしれません。 ──エレクトーンも現在DTMerとして活躍されている点に通じる気がします。
小岩井ことり エレクトーンだけではなく、かなり小さい頃から遊びでフリーソフトを使ってMIDIで音楽をつくっていました。小学生になるかならないか……自分でも記憶がないくらいの時に、親に「パソコンを買ってほしい、就職にも必要だから」と言ったそうで(笑)。
パソコンが手に入るといろいろなことができるじゃないですか。当時はホームページを作成して、MIDIで作成した音楽を流すことを周りの人たちがやっていたから、それをマネして自分でもつくっていました。
──なぜそこまで「音」への興味関心が強かったのか、理由を覚えていらっしゃいますか?
小岩井ことり 当時は「何となく興味があった」としか言いようがなくて……言語化できるようになったのは声優の仕事を始めてからなのですが、「音」の奥深さを感じたことが大きいです。
私は養成所に何年も通って声優デビューしたのではなく、独学で勉強しながら単発でレッスンを受けていて。そんな中、どうやって勉強しようかと考えた時、いろいろな人の声を分析していたんですよ。 ──声を分析するとは……?
小岩井ことり 私、高校時代は理系クラスだったので、どういう仕組みになっているのかを突き止めるために、分析したり分解したりするという勉強法をよくやっていました。「声ってなんだろう?」「音にはどんな要素があるんだろう?」と声優の勉強をする中でも考えていたんです。
──それで実際に声を分析したら奥深かったと。
小岩井ことり 分析していくと、音には「大きさ」「高さ」「音色」の三大要素があると知ったんです。なので、三大要素を全く同じにしたら活躍しているプロの声優さんと同じような声が出せるのでは……? と思いました。
だけど、マネしてみても同じにはならないんですよ。声のグラフ的にはすごく近いのに、感情に訴えかけてくるかはまた別で……とわかってきた。そこから「音」や「音声」って何だろうと興味が湧くようになりました。
──そこまで興味・関心・知識を持っていると、逆に声優さんのお仕事で気になることが増えそうな気がするのですが……。
小岩井ことり 気になることはそんなにないんですよね。むしろ声優のお仕事はレーベルさんのスタジオ、ナレーションのスタジオ、テレビ局のスタジオなどいろんなスタジオに行けて、いろんなエンジニアさんに会えるし、いろんな機材を見られるから勉強になっています。
また、興味があるからこそ声の出し方も分析できますしね。「こういう感じの声がほしい」と言われた時には、音の三大要素でいう「音色」を分析して、分布に近くなるようにマネして声を出しています。
もう一つの進路は「喉」の研究、学会で表彰された論文の裏側
──声優だけではなく、DTMerやオーディオのプロデュースや監修など「音」を生業にしようと思ったのも、「音」に対する探究心が理由だったのでしょうか?小岩井ことり 意図的に仕事にしようと思ったことはなくて、今まで好きでやってきたオタク活動の一環がすべて仕事に繋がっていった感じです(笑)。
たしかに「音」や「音声」にずっと興味があって、実は声優の道か大学進学の道かで迷っていたこともあります。大学に行ってやりたかったことは、医療工学における「喉」の研究でした。病気で声帯を失った人が発声するための、人工的な機械をつくることに役立つ技術の研究です。
結局声優の道に進みましたが、そういう進路を考えていましたし、趣味で音楽制作やオーディオ収集もしていました。それが声優の活動をしていく中でだんだん役に立ってきて、作詞・作曲や歌、オーディオの開発に携わらせてもらえるようになっただけなんです。
──2022年9月には、共著論文「レアなモーラを含む日本語歌唱データベースの構築と基礎評価」がFIT船井ベストペーパー賞として表彰されたとのこと、大変驚きました。おめでとうございます!
小岩井ことり ありがとうございます!
──この共著論文も小岩井さんご自身が「やりたい」と言ったというより、周りからのお声がけでスタートしたのでしょうか?【ご報告】
— 小岩井ことり (@koiwai_kotori) September 15, 2022
学会で、私も共同著者である論文が表彰されたので
慶應義塾大学での表彰式に参加してきました!
みんなみんなで頑張った研究なので名誉ある賞を頂けてとても嬉しいです!
これからも音や音声について
色々な形で研究していきたいです。 https://t.co/5vSEbOB4Zj
小岩井ことり 今回も巡り巡って関わらせていただくことになりましたが、私自身も合成音声の研究をやりたいとはずっと思っていました。大学進学を考えたのも同じ理由だったので。
そんな中、ライターの藤本健さんのご紹介で、明治大学の森勢将雅(もりせまさのり)先生とお会いさせていただく機会をいただき、ご一緒させていただくこととなりました。
──どういったお話だったのでしょう?
小岩井ことり 合成音声をつくるにあたって声のサンプルをたくさん録らないといけないのですが、既存の音楽や歌を使用する場合、AIに学習させるのは問題ないみたいなのですが、人が聞ける状態となると著作権上の問題が出てくる可能性が出てきます。
そんな悩みを抱えていた業界だったので、私が作詞・作曲・歌唱したオリジナル曲を50曲ほど提供しました。2020年夏くらいから進行して、2021年1月末に納品を完了した感じです。 ──やろうと思ってできてしまうことがすごいですよね……。
小岩井ことり いやいや! 今までのオタク活動がたまたま役に立っただけです(笑)。みなさんからよく「すごいね」と言っていただけるのですが、友達と好きな作品のコラボカフェに行くのと同じ感覚ですよ。その場で盛り上がったお話から、「何か一緒にやりましょう!」となるだけ。頑張って勉強した感覚もあまりないですし、研究もとても楽しくやらせていただきました。
周りのオタク友達も絵が描けたり文章が書けたりホームページがつくれたりするので、オタク活動はすごいなと思います。自然とスキルが身についてしまうんですから。
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