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『Ghost of Tsushima(ゴースト・オブ・ツシマ)』レビュー:極上のエンターテインメントとして「時代劇」が帰ってきた!

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『Ghost of Tsushima(ゴースト・オブ・ツシマ)』レビュー:極上のエンターテインメントとして「時代劇」が帰ってきた!

テレビ番組でも映画でもめっきりみかけなくなった「時代劇」が、ゲームで完全復活した! そんな思いを抱かせてくれた作品が、『Ghost of Tsushima(ゴースト・オブ・ツシマ)』だ。

蒙古襲来を海外デベロッパーが描く! 発売前から話題となっていた作品

『Ghost of Tsushima(ゴースト・オブ・ツシマ)』は、蒙古襲来の時代を舞台にした、オープンワールド時代劇アクションアドベンチャー。対馬を襲撃し、占領した蒙古兵たちに、主人公である武士・境井 仁(さかい じん)が対する物語だ。蒙古襲来は「元寇」という言葉でも知られている。鎌倉時代中期に、モンゴル帝国(大元)が行った日本侵攻だ。

時代劇といえば、テレビドラマなら江戸時代、映画や大河ドラマなら戦国時代がモチーフとなることが多い。よしんば鎌倉時代がモチーフとなっても、たいていの場合スポットが当たるのは、源義経が活躍する源氏と平家の戦いのように思う。

そんな中、本作のモチーフは「元寇」! このレアなモチーフもあって、本作は発売前から話題となっていた。しかも、ゲームを開発するのは日本のデベロッパーではなく、『怪盗スライ・クーパー』シリーズや『INFAMOUS』シリーズの開発で知られるアメリカのサッカーパンチプロダクションズとあっては、話題にならないわけがない。ではプレイした結果どうだったかというと、前述の通り、まごうことなき「時代劇」だったのだ。

これぞ時代劇! 和を感じさせるビジュアル

では本作のどこが「時代劇」なのか? というと、まずはビジュアル! この記事に掲載したスクリーンショットをご覧いただければ分かる通り、圧倒的な映像美で日本の風景が描かれている。

しかも、ただ美しいわけではない。「和」の美しさが感じられるビジュアルなのだ。「和」の表現が最も端的にあらわされたものとして、筆者は「風」の表現を挙げたい。

本作は、マップの中に、ストーリーを進めるためのポイントや、イベントが発生するポイントなどが用意されている。プレイヤーはゲームプレイ中、基本的にはこれらのポイントを目指して移動するわけだ。もちろん、オープンワールドゲームだけあってマップは広大。このため、何らかの目印が必要だ。

この時、たいていのオープンワールドゲームでは、マップにマーカーなどで目的地を設定して、それを目印とする。本作ではこの目印が、「風」なのだ。タッチパッドをスワイプすると、目的地に向けて「風」が吹き、道を示してくれる。

単純にゲームとして考えるのであれば、たとえば和紙っぽい質感のマップに、墨で描いた〇印で目的地を示す……という方法でもよかっただろう。しかし本作はそうした安易な方法を採らなかった。この結果、「和」の表現として、「時代劇」の表現として凄まじく臨場感の高いビジュアルが実現している。

しかもこの「風」は、風でありながら「父」なのだ。主人公、境井 仁は幼少のころに父親を亡くしており、この時、父は「風」となって道を指し示してくれる……と告げられている。つまり、「風」が目的地を指し示すという要素は、単にゲームシステム上のギミックというだけでなく、ストーリー的にもしっかり回収されているわけだ。この辺りの人情的でウェットな演出も、また「時代劇み」を感じさせる。

そして、忘れてはいけないのが構図だろう。黒澤明監督の「用心棒」や「七人の侍」をはじめ、「木枯し紋次郎」「鬼平犯科帳」「子連れ狼」などなど、本作は、思わず様々な時代劇作品を連想してしまう構図に溢れている。

なかでも筆者お気に入りの構図は、なんといっても一騎討ちの構図だ。本作ではマップ上で敵集団と遭遇した際、気づかれる前であれば一騎討ちを挑むことができる。一騎討ちでは、△ボタンを押しっぱなしにした状態で敵の攻撃を待つ。敵が攻撃を仕掛けたタイミングで△ボタンを離せば、敵を一撃で倒すことが可能だ。

この一騎討ちに入る前には必ず専用の演出が入る。視点は見下ろしのこともあれば、横からの視点のこともあるが、いずれにせよ横長の構図で、主人公である仁と敵とがそれぞれ左右から登場。ゆっくりと接近してゆく。この様式美! そしてこの緊迫感よ! 時代劇の醍醐味が込められたシーンといえるだろう。

これぞ殺陣! 一対一のアクションをじっくり見せるバトルシーン

ところで、「時代劇」を表す言葉のひとつに「チャンバラ」がある。刀で斬り合う様子を表した「ちゃんちゃんばらばら」から来る言葉で、その由来の通り、剣戟シーンのある時代劇を指す言葉だ。もちろん、「時代劇」すべてが剣戟シーンを持っているわけではないので、厳密には「時代劇」=「チャンバラ」ではない。しかし「時代劇といえばチャンバラ」というイメージを持っている人は多いだろうし、本作には剣戟アクションがバッチリ用意されている。

では「チャンバラ」の魅力とは何かといえば、筆者は「殺陣(たて)」と呼ばれるアクションをじっくりと見せてくれるところではないかと思う。時代劇の多くは、一人、または少人数の主人公と、多数の敵が戦うという乱戦状況が多い。しかし、こうした乱戦の状況でも、カメラは主人公にフォーカスし続け、主人公のアクションをじっくり見せる。

主人公のアクションとはすなわち、ある構えからある構えへの動きであったり、刀の動きだったりといったものだ。

また、「基本的に攻撃が当たらない」というのも「チャンバラ」のポイントだろう。何せ、真剣なので、攻撃が当たれば基本的にはそこで戦闘不能状態になってしまう。だからこそ、斬る爽快感を見せるためには斬られ役として大量の敵が必要になるし、一対一の戦いであれば回避が主体となる。

本作のバトルはこうした「チャンバラ」をしっかり再現している。主人公のアクションはスピーディーに攻撃できる「速打」、相手の体制を崩すことのできる「強打」、敵の攻撃を受け止める「防御」、防御から攻撃へと転じることが可能な「受け流し」、そして回避といったものが主体。

基本的には、敵の通常攻撃を「受け流し」たり、防御不能攻撃を回避したりした隙に「速打」を仕掛ける……という立ち回りになる。こうして立ち回ると、これがいかにも時代劇の「殺陣」といった風情! 一瞬の隙を突いて敵を倒す感覚がスリリングだ。

また、敵が仕掛けてくるタイミングも、「チャンバラ」っぽいように感じた。先に「乱戦の状況でも、カメラは主人公にフォーカスし続け、主人公のアクションをじっくり見せる」と書いたが、これが可能になっているのは、主人公が一度に相対する敵の数が抑えられているから。

時代劇を見ていると、敵が主人公の背後を取っていてもなかなか襲い掛からず、じっと状況を見守っている……なんてことがある。もちろん、主人公のアクションをじっくり見せるためなのだが、本作の敵もまた、主人公を囲んでいる状況であっても、一斉に襲い掛かってくるようなケースは少ないように感じた。「チャンバラ」の感覚を味わえるのは、敵AIの動きも影響しているのかもしれない。

ちなみに、中には敵の攻撃を回避して隙を突くタイプのバトルは苦手……という人もいるだろう。一瞬の隙を突くために反射神経が必要になり、アクション性が高いので、得手不得手がわかれるのはやむを得ない。ではそういうアクションが苦手な人は本作を楽しめないのかというと、そこは心配ご無用! 難易度をイージーにすると、隙を狙わずともゴリ押しで通じるレベルになる。

アクションは苦手だけど、本作の世界観やストーリーを楽しみたい……そんなプレイヤーでも問題なくプレイできるだろう。

誉とは何か? 武士とは何か?

いかにも「チャンバラ」が本作のバトルの魅力であるかのように書いたが、敵を倒すために何も正面から戦う必要はない。遠くから弓で射抜くこともできるし、背後から忍び寄り「闇討」することもできる。また、「くない」や「てつはう(鉄炮)」といった飛び道具を使って敵の意表を突くことも可能だ。

弓はまだしも、「闇討」や「くない」、「てつはう(鉄炮)」となってくると、武士というよりは忍者の戦い方に近い。本作ではこの戦い方を「冥人(くろうど)」と称している。

主人公の境井 仁は、自分が武士であることに誇りを持っている。では武士とは何か? 本作においてそれは、「誉(ほまれ)」を持って戦う者……と考えることができるだろう。

「誉」を持って戦うとは、道を違えることなく正面から戦うこと。背後から「闇討」するような戦い方は、決して「誉」とは言えない。

しかし、敵である蒙古兵は強大だ。強大過ぎる。何せ、冒頭で海岸に押し寄せた蒙古兵に、武士の一軍は壊滅。生き残ったのは主人公・仁と、その養父である志村くらい。しかも、志村は囚われの身という状況なので、完全敗北といっていいだろう。さらにその後、志村救出に向かった仁は二度目の敗北を喫してしまう。

これにより蒙古兵は対馬のほぼ全域へ兵を拡大。一方、二度目の敗北をなんとか生き延びることができた仁は、単身という状況。多勢に無勢。これで正面から戦えと言われても、無理というものだろう。

とはいえ仁は、「誉」を自分の信念としている。なので、そう簡単に戦い方を変えることはできない。できないが、戦い方を変えなければ、対馬を救うことはおろか、志村救出さえおぼつかない。だから、悩む。こうした仁の心情の描き方は非常に丁寧で、徐々に「冥人(くろうど)」の戦い方を覚えていくゲーム進行と完全にリンクしている。

「冥人(くろうど)」という名称は、「冥府の人」という意味だ。これはつまり、二度の死に目にあったにも拘わらず生き返った、仁のこと。『Ghost of Tsushima(ゴースト・オブ・ツシマ)』というタイトルにも符合する、まさにこの部分こそ、本作のテーマといえるだろう。

極上の時代劇エンターテインメント! 逃すのはもったいない一作

「武士の誉」と「冥人」との間で揺れる仁を見て筆者は、「禅宗(ぜんしゅう)」をイメージした。仏教の一派である「禅宗(ぜんしゅう)」だ。

本で読んだ知識でしかないが、「禅宗」は坐禅によって自分自身と向かい合い、新たな価値観を悟るのだという。「禅宗」のこうした点は、武士たちに強く受け入れられたのだそうだ。というのも、江戸時代以前の武士たちは、日々、生と死に向かい合っている状況だった。こうした状況では、自分自身と向かい合い、新たな価値観を悟るという体験が精神的な平穏に繋がったのかもしれない。

本作の主人公、境井 仁もまた、生と死に向かい合う極限状況の中、「誉」という既存の価値観を離れ、「冥人」という新たな価値観を悟りはじめる。これは筆者の個人的なイメージであって、本作の開発者たちが「禅宗」を意識したかといえば、そうではないのかもしれない。だが、プレイしながらこうしたイメージが膨らむくらい、本作には「和」のエッセンスが込められている。

本作は時代劇の楽しさ、そして「和」の魅力をこれでもかと堪能させてくれる本作。もちろん、オープンワールドゲームとしても十分すぎるほど楽しい作品だ。今年の代表作のひとつとなることは間違いない、極上のエンターテインメント。そして、いまや希少なものとなってしまった「時代劇」ジャンルの最新作。

是非ともプレイしてほしいし、もし周りに「ゲームには興味がないけど、時代劇は大好き」という人がいたら、是非薦めてあげて欲しい。それだけの価値がある作品だ。

Ghost of Tsushima Game | PS4 – PlayStation:
https://www.playstation.com/ja-jp/games/ghost-of-tsushima-ps4/[リンク]

文/田中一広

―― やわらかニュースサイト 『ガジェット通信(GetNews)』
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    執筆者:ガジェ通ウェブライター

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