常識を破った輝夜月の痛快2ndライブ 仮想と現実は繋がりひとつの宇宙に

爆ポップソングのカバーから大フィナーレへ

次は大好きな曲をカバーしますと言い放ち会場は暗転。『じょいふる!』と曲名がコールされると、MCでまったりしかけたフロアが一瞬で熱を取り戻す。

タワーを昇っていたはずなのに今度は会場が潜水艦の浮かぶ深海へと変わっており、月ちゃんもエビーバーと合体したようなキュートな衣装で舞い踊る。驚かされっぱなしの我々だが、どうやらその心が休まる瞬間は訪れない。 いきものがかりの名曲として平成音楽史にその名を刻むハイパーポップソングは、1stライブでカバーされた椎名林檎の『幸福論』とは正反対のイメージながらこれまた月ちゃんにぴったり。

エビのしっぽをフリフリしながら溢れるパッションを全身で表現する月ちゃんに、フロアのテンションも否応なしにぶち上げられる。

タワーを昇り、1曲ごとに会場の景色を変えるというVRだからこそ実現し得た夢のような旅路も遂に終着点へ辿り着く。会場の上昇が止まると、天辺へ続く階段が出現。「みんなついてきて!」とふたたび月ちゃんがフロアへ降り立ち、導かれるまま階段をかけ上がっていく。

天辺には満天の星空とさらに巨大なステージが用意されており、ド派手なフィナーレを予感させる中、再びMCへ。

改めて各会場へ集ったファンへの感謝を述べた月ちゃんに、各会場に集った我々も大声援で返してみせ、刻一刻と迫る終わりを感じながらも特別な夜を味わい尽くす。

あたたかい空気に包まれ、月ちゃんが「みんなのこと本当に好きなの」とこぼした。 ファンを大事にしているというのは日頃から彼女が口にしていることであり、今日も何度となく言葉にして伝えてきた。だが最後の最後、いつになく真剣なトーンで届けられた純粋な思いの発露に、筆者は頬も涙腺も緩みきってしまった。

言いたいことを全部言いきった月ちゃんは、いつも以上に晴れ晴れとした表情をみせると、「ちょっと歌ってくる!」とまるでコンビニに買い物にでもいくかのように軽やかにクライマックスへと飛び込んでいく。

オーケストラを指揮するように大きく手を振りかざし、3rd song『NEW ERA』で大団円を飾る。 新時代の名を冠するこの曲が、新元号の初日というタイミングで最後に披露されるのは予想できていたことだ。だが分かっていても、興奮は抑えきれるものではなく、イントロが鳴り響くと同時に昂りきった感情が涙と叫びと笑顔になって溢れだしていった。

静と動を行き来し、ただでさえ多彩な音色をより印象的に奏でる。ジャンルの垣根を越えた“これぞ輝夜月の音楽”が目の前に広がる満天の銀河の果てまで轟いていく。 シンフォニックなサウンドが真の最後を華々しく彩り、リアル会場にもVR会場にも紙のハートが降り注ぐ。

月ちゃんが新時代への宣誓を高らかに歌い上げる中、仮想と現実は確かに繋がり、ひとつの宇宙になっていった。

“常識を破る”言葉の上では簡単でも、それを貫くのは至難だ。事実としてそれを標榜する彼女も笑顔の裏には多くの苦悩があったことを事前の取材で明かしている。 だがそれでも彼女は意思を貫いてみせた。爆発的なムーブメントが始まった2017年末から1年が過ぎ、VTuber全体が“ブーム”としては逆境にある現在において、その逆風すら推進力とし、嵐の中に燦然と輝く彼女の姿は、もはや破天荒を越えて神々しさを纏っていた。

新しい夢を叶えよう」と拳を高く突き上げて最後のフレーズを歌い終えると、讃えるように曇天を晴らさんばかりの大きな拍手に包まれる。

ここから始まる新たな時代を自らの光で照らすと、ロケットに乗って銀河の彼方へ飛び去っていった。

まだ入口の入口

ひとつずつ積み上げてやっとここまできた。でもまだ入口の入口、ここからです

月ちゃんにボスと慕われるAOちゃんは終演後にそう語ってくれた。伝説となった前回を過去にしてみせながらも、その意志は真っ直ぐ未来を見据えている。 1stライブは史上初のVR空間でのライブとして先進的だったが、今回はそれを上回る驚きの演出を数多く詰め込んだ最高峰のVR体験をもたらしただけでなく、ライブハウスでのライブビューイングも成功させるほどの音楽的強度を兼ね備えたさらに高度のエンターテイメントへと進化していた。

テクノロジーとしてもエンターテイメントとしても、今夜のステージが世界の先頭をいくものであったことに疑いの余地はない。

平成という一つの時代の終わりに騒がしくあらわれた破天荒なニュースターは、新時代令和の扉を荒々しく開け放ってみせた。

拳を力強く掲げ、時代を揺らした彼女の凛々しく美しい姿は私たちの胸にいつまでも残り続けるだろう。

輝夜月に聞いてみた!

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