白装束の男たちとともに、蛍光色の光の曲線を描く彼の姿に従来の「ヲタ芸」のイメージをひっくり返された人も少なくないだろう。
そもそも「サイリウムダンス」はアイドルのライブで、ファンたちがサイリウムを持ちながら機敏な動きで演者を鼓舞するのがはじまりだ。
そんな現場の習わしを10年前、サイリウムを持ち動画に撮影し、YouTubeにアップしはじめたのがギニュ~特戦隊を名乗るオタク集団。彼らの映像は「キレキレの動きをする光る棒を持ったオタク達」として瞬く間に世界に広がり、日本でもテレビのバラエティ番組やCMに出演するようになっている。
そんな「ヲタ芸/サイリウムダンス」初の世界大会「CYALUME DANCE WORLD BATTLE FINAL」が1月19日、秋葉原にほど近い神田明神ホールにて開催されると聞きつけ、KAI-YOU編集部が潜入した。
取材・文:ミーネ 編集:園田もなか 撮影:滝沢たきお
初のヲタ芸/サイリウムダンス世界大会が開催
16時に会場がオープンすると話題のパフォーマンスと世界初の王者を目撃するために続々と観客が入場し、キャパ700人のフロアがどんどん埋まっていく。
「目指せAKIBAの大看板」「咲かせてみせます億千万ペンライト」と、聖地を崇める歌詞に会場の期待がぐっと高まる。
そしてペンライト、サイリウムのメーカーであり、主催の株式会社ルミカ取締役の小室さんが挨拶。
彼らの生み出したペンライト、サイリウムがあったからこそ「ヲタ芸/サイリウムダンス」が生まれた、と言っても過言ではない。取締役の小室さんが、夢の叶えた瞬間を噛み締めるように「ずっと面白いことがしたかった」とコメントする姿が印象的だった。
株式会社ルミカの取締役の小室さん
ヲタ芸のレジェンドとダンスパフォーマンスの大御所が並ぶ、まさにカルチャー黎明期を感じさせるいい意味でカオスな顔ぶれだ。
審査員として、GinyuforcE(元ギニュー特戦隊)のギアさん、ギニュー特戦隊の初期メンバーであるばっくほーんさんとさんぱちゃさん、イヤホンズの長久友紀さんと高野麻里佳さん、RAB(リアルアキバボイーイズ)のDRAGONさん、振付演出家の南流石さんらが並ぶ
日本代表選手が敗退…! パフォーマンス姿は戦闘シーンのよう
そして、ついにトーナメントが開始。東京、香港、ジャカルタ、ロサンゼルス、上海、マニラ、シンガポール、台湾の8地域からそれぞれ代表選手が1対1で対決していく。1人ずつ赤コーナー、青コーナーに別れ、トーナメントによる勝ち抜き戦だ。
審査員は2階席からジャッジ
ラッパーのフルースタイルバトルのように、勝敗を左右するのは純粋に個人の技量だ。
審査はまず観客が捧げる拍手と歓声の大きさ。2つ目は2階席にいる審査員がジャッジし、より優れたパフォーマンスをしたコーナーの色に合わせて、赤か青のサイリウムをパキッと折って自らのジャッジをアピールする。
テレビのバラエティで扱われるネタとして見たことはあっても、ここまでパブリックな場で体験するのは観客としても緊張する。
試合がはじまると選手たちは、握手を交わす。闘志をむき出しにする人も、はにかんでしまう人もいる。
イントロを感じ、サビに入るやいなや、床でパキっと折られ発光したサイリウムを握り、何かが憑依したかのように踊りはじめる。
日本代表のWAKAMARUさんも健闘するも、上海代表HAZUKIさんに破れてしまう。
優勝候補のWAKAMARUさんが準決勝で敗退
水矩選手は誰よりもリラックスしているように見えた
「緊張します」と片言で小さく呟いた選手が屈強な男に見えるし、背丈が小柄だと思った選手もサイリウムを握ると、大きな舞台に見劣りしないオーラを醸す。その妖艶かつ、クールな彼らの姿や、暗闇に踊る光の筋を見ていると、まるでアニメの戦闘シーンのようだ。
決勝まで勝ち進んだ上海代表のHAZUKIさん
優勝は、常に笑顔を携え、ダイナミックな動きを繰り出した水矩さん。
緊張かプレッシャーか深刻な表情を浮かべて踊るHAZUKIさんと比べ、水矩選手には仲間内で遊んでいるような軽やかさがあった。
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