しかし一方で、「修羅の国」という根強い枕詞がつきまとい、悪いイメージをなかなか払拭できない「日本で一番勘違いされやすい街」ともいえる。
今回、そんな北九州市をともに巡ってもらうのが、シンガーソングライターの藤田恵名さん。
藤田恵名さん
仕事の幅が多岐に渡ることから「収集がつかなくなっている」と自認する藤田さん。明るくない過去を背負いながらもひたむきな努力を重ね、中学生から口にしていた夢を実現させてきた彼女。その強烈なキャッチフレーズとビジュアルも相まって、恐れずにいえば、イロモノ扱いされている側面もある。彼女こそ「今もっとも誤解されやすいアーティスト」かもしれない。
「勘違いされやすい街」と「勘違いされやすい女」。そんな共通項をもつ両者だが、深く掘り下げていけばいくほど、次第に表れる本当の姿がある。
「長く地元に帰れなかった時期があった」という藤田さん。「今いちばん脱げるシンガーソングライター」に、地元・北九州市で心も脱いで感じてもらった、地元のこと、家族のこと、教育のこと。
取材・文:和田拓也 撮影:山口雄太郎 編集:新見直 協力:藤田恵名、北九州市
藤田恵名が北九州市に凱旋
この日は快晴。まず藤田さんが降り立ったのは小倉。「高校では芸能コースのある博多の学校に北九州市から通学していたので、一番小倉で遊んでいたのは中学生の時。小倉は、当時住んでいた若松からドキドキしながら電車やモノレールやバスを乗り継いで、おもいっきり背伸びをして行く場所でした。
都心部の小倉に行くことを“街に行く”と言っていたんですけど、“街”が近づくにつれて気持ちが高ぶったのを覚えています」と久しぶりの小倉の街並みを眺めながら話す。
魚町銀天街からさらに奥へ曲がった「鳥町食堂街」には、焼うどん発祥の店「だるま堂」などもある
「入り組んだ路地も、小さい頃は怖くて入れませんでした。こんな“味な店”がたくさんあるんですね...」と驚く藤田さん。 一同がまず最初に訪ねた食処は「耕治」。創業63年、北九州市出身の小説家である松本清張が、足繁く通った老舗中華料理店だ。
シュウマイも、大ぶりで皮が薄くて肉がぎゅうぎゅうに詰まってます。これ、なんでこんなにトロトロなんですか? 仕事でこんなに美味しいもの食べれるなんて幸せです...」
前回一緒に北九州市を回ったぼくりり(ぼくのりりっくのぼうよみ)さんと、全く同じことをいう藤田さん(関連記事)。
ちなみに、「耕治」に通い詰めた松本清張のお気に入りの一品は8500円のフカヒレの姿煮ラーメン。「耕治」に43年勤める現総料理長・角井賢次郎さんは当時、厨房から松本清張の姿を覗いていたという。
「耕治」が発行していた小冊子。松本清張はなんと無償で原稿を寄稿していた。永六輔など、名だたる大作家の文も寄せられた、驚異の”中華料理店ZINE(ジン)”だ
思い出の船に乗って、生まれ育った若松へ
小倉から次に一同が電車で向かったのは若戸大橋。戸畑区と、藤田さんが生まれ育った若松区を繋ぐ、建設当時は東洋一とされた吊り橋だ。電車に乗り、若戸大橋へ向かう。「この電車は小倉と若松の移動でよく使いました。ぐっとくるものがあります」
「当時は当たり前すぎて気づかなかったんですが、駅前から橋や海が見えるこの眺めは凄い。ローアングルの大橋をここまで間近に見ることができる街ってなかなかないですよね」
「嬉しい…! でも緊張してきました。船に乗るのは12、3歳以来ですね…。あちこちに転校してきたので、記憶も曖昧になりがちで。でもこの船だけは特に覚えていて、また乗りたいと思っていたんです」
小倉とも違う、若松に流れる素敵な時間
若松はかつて、石炭の積み降ろしの拠点として栄えた町だ。日本の近代化を支え、現在も新エネルギーの産業拠点となっている。大俳優の高倉健さんが、昔積み降ろしのバイトをしていた場所でもあるそうだ。そんな若松には、古くから残る、味のある看板や商店、市場が今も残っている。“レトロ風”ではなく、本物のレトロな風景を楽しむことができる。
「めちゃくちゃおいしい!信じられないくらいモチモチしています!!」と藤田さんも驚いて、思わず一番人気の「きくらげ入りのすり身天ぷら」もペロっと平らげる
手押しポンプのある「ウエル本町商店街」
若松の昔ながらの市場「えびす市場」
筑豊で産出された石炭を若松港まで輸送することを目的に、九州で二番目の鉄道が敷設されたのがかつての「若松操車場」。跡地には当時のSLがそのまま展示されている
新たな文化の発信地を目指す
若松にある、ちょっと変わったお店が「ナカガワ・スポイル」だ。このお店、なんとランチのサブスクリプション制度「フリーランチ」を導入している、ちょっと変わったどころか、にわかに信じられないお店だ。月に540円で、平日何度でもランチを食べることができる
若松の空き家となってしまった木造密集地帯を活用し、街の活性化に取り組むのが「ワカマツグラシパートナーズ」だ。シャッター街となってしまったこの街を、「1ヶ月のうち30日間、シャッターが開いている状態にすること」を目標に始まったプロジェクト。
「ワカマツグラシパートナーズ」が手がける、古民家をリノベーションした民宿施設。「ナカガワスポイル」のすぐ裏手にある
北九州市について「家賃も安くて若い方にとって移住はしやすいので、色眼鏡で見ない県外の若者が多く北九州市に来ている」のを感じるという。
「地方そのものが盛り上がって来ているのは感じますが、まだまだこれからですね。若松に関わらず、『人材不足』『地元就職率が低い』など、問題の深刻さは逆に地方の魅力にもなる。ビジネスチャンスって『困ったこと』からはじまります。そういう意味で、いろんなチャンスが転がっている街です」と話す。
この若戸大橋のふもとの戸畑と若松の街。決して大げさではなく、日本離れした街並みも含め、かつてのニューヨーク・ブルックリンに近いポテンシャルを筆者は感じた。
北九州市職員の方が「古いものと新しいものが歩み寄りを見せている」という北九州市を、またひとつ体現している街だと感じた。
“女神が嫉妬した”岬に、ひっそりと佇む「縁結び」の神社
この日の北九州市は猛暑日。一同は小倉から車で約40分、避暑スポットとして少しずつ人気が高まっている海岸「遠見ヶ鼻」へと向かった。水浴びもできる格好に着替えた藤田さん。快晴の中、ピンクのビキニが眩しい
約3千万年前の地層が露出した一帯は、福岡県の天然記念物に指定されている
炎天下のこの日、スタッフ一同「飛び込みたい...」と心から思っていた
イザナギノミコトが見とれたように、夕暮れどきになると、響灘(ひびきなだ)に沈む夕陽を堪能できる。認知度があまり高くないため人も少なく、絶好のインスタスポットとして人気が高まっているそうだ。北九州市定番のデートスポット「門司港」からワンステップ踏み出したいときは、ぜひここに寄るのがいいだろう。近くには海水浴場やレストラン、露天風呂に疲れるかんぽの宿もある。全国的な酷暑の今夏、避暑スポットとしてもぜひ足を運びたい場所だ。
匿名ハッコウくん(ID:2268)
お姉さんが美人
匿名ハッコウくん(ID:2251)
北九州最高😂🌋🔥映画村が出来たら涙もかれるほど泣いて喜び、命亡くしても縁の下から支え続けるぞ!!
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