初の土日開催となった本大会では、2日間で合計3000人を超えるミニ四レーサーが品川に集結。本記事では、ジャパンカップに初参加した三十路レーサーの奮闘を通じて“ミニ四駆日本一決定戦”の熱気をレポートする。
取材・文:結城紫雄 撮影:市村岬 編集:新見直
「ミニ四駆ジャパンカップ」とは?
2次ブームの主役「フルカウルミニ四駆」シリーズの初期モデル「ソニックセイバー」。車輪を覆うデザインが特徴的な同シリーズは「空気力学(空力=エアロ)」の要素を取り入れヒット/画像は株式会社タミヤ公式サイトより
「ミニ四駆ジャパンカップ」とは、88年にスタートしたミニ四駆の速さを競う公認競技会のひとつ。毎年夏(00〜11年は中断)全国各都市にて開催され、最盛期は30万人以上を動員した国内最大級のホビーイベントだ。ちなみに第1回ジャパンカップチャンピオン・駒木孝有選手は現在、プロレーシングドライバーとしてスーパー耐久などで活躍している。
運営スタッフは参加者がたとえ小学生でも「君たち」ではなく「選手の皆さん」と呼ぶ。それぞれがひとりのエンジニアかつピットクルー、そしてレーサーだからだ
しかし12年、ジャパンカップが13年ぶりに復活開催されるに伴って、公認競技会に年齢制限のない「オープンクラス」が設けられた。三十路レーサーにも門戸が開かれた今、満を持して20年越しの日本一決定戦へ挑戦する運びとなったのである。
いざ、ジャパンカップ参戦!
参加したのは、初の土曜開催となった東京大会3(1日目)
この日はオープンクラスのみの開催だったため、大人に交じって小学生レーサーの姿もちらほら。前ブーム経験者が家族で参加する光景も見られ、いまやミニ四駆は世代を超えるホビーとして定着したと言えよう。
参加抽選や受け付けはスマホアプリ『TAMIYA PASSPORT』によりスムーズに行なわれる。筆者の時代はハガキで応募していた/黒Tが筆者
これは……
でけえ!
写真中央、天を衝くΩ状のアップダウンセクション「オメガバンク」
全国女王&マッドマックス覇者が集結!
組み立ては接着剤いらずのはめ込み式&ビスどめ。大人はもちろん小学生でも楽しめるホビーだ
仕方なく会場をうろついていると、ひと際目を引くピットを発見した。F1ピットのような物々しいスペースで真剣な表情を見せるのは、なんと2015年の全国チャンピオン・藏川美樹選手である。
東北のミニ四チーム「Z-FLYER」の藏川幸彦選手、藏川美樹選手
筆者のマシンについて「前後の重量を調整するといいかも」とアドバイスしてくれたが、手に持っただけでマシンバランスを見抜く観察眼もまた異次元レベルだった。
美樹選手はかつて、タミヤのお膝元としても知られる激戦区・静岡大会から勝ち上がり全国を制した猛者中の猛者
「トルクチューンモーター(2次ブーム時の主流)を使っています」という筆者に「ト、トルクチューン!?」と驚く幸彦選手
マッドマックス杯を2度制した右下のN選手。愛車はウイニングバード
これがスピードコース? マジ?
筆者のマシンについて「左右のプレートの間をつなげたら、可動域が抑えられていいのでは」と、徹夜のセッティングをわずか7秒で修正してくれた
自信が揺らぎ始めた筆者は、ひっそりとタイヤを大径(最高速重視)から小径(パワー・安定性重視)へと交換した。人間、土壇場で本性が出るものである。
「ジャパンカップ東京大会3」開幕!
Aコースの実況・進行役のMCガッツ。1・2代目「ミニ四ファイター」の後継者
まず驚かされたのはその速度。幼少時の草レースの記憶と比べるまでもなく各車めちゃくちゃ速い!オープンクラス一次予選 【富士通乾電池 提供 ミニ四駆ジャパンカップ2017 東京大会3D】#mini4wd pic.twitter.com/8jKec0GdKq
— ミニ四駆(タミヤ)公式アカウント (@mini4wd) 2017年8月26日
ストップウォッチで計測したところラップタイムはおよそ30〜35秒なので、トップ集団は時速24km超。ミニ四駆は1/32スケールなので実車に置き換えて計測すると約750km/hとなり、F1の最速トップスピード記録(372.6km/h)を軽く上回る。これがミニ四駆20年間の進化……!
「バンクを駆け上がる姿、まさに昇り龍!」「カーブで散るマシンが打ち上げ花火のようですね」など、風流さも併せ持つMCガッツの実況
公認競技会では「本人に限りレースの結果に対する異議申し立てが可能」など、規則も細部に至るまで整備されている。MLBのチャレンジ制度みたいだ
空気(エアロ)の力でジャパンカップを制そう
車体が3分割できる「MSシャーシ」も初見。セパレートならではの“ねじれ”を利用して衝撃を吸収するセッティングがトレンドだとか
というのもミニ四レーサーとして20年のブランクがある筆者は、車体からパーツに至るまですべて90年代当時の2次ブーム仕様で参戦してしまったのだ。
20年でタイヤの常識も変わる。現在主流の極薄加工ゴムタイヤ、通称“ペラタイヤ”で予選突破した浴衣の女性レーサー。市販パーツをただ取り付けるだけでなく、オリジナルの加工も腕の見せどころ
2次ブーム時の常識「レストンスポンジタイヤ」を使うレーサーはついに発見できなかった
プレートを加工したオリジナル機構のマスダンパー
それこそが、ミニ四駆が玩具ではなく“手のひらサイズのモータースポーツ”といわれるゆえんなのだ。
2次ブームを支えたミニ四駆漫画では、「フルカウル」「ダウンフォース」といった空力の重要性がたびたび説明されている/画像は『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』(こしたてつひろ/小学館)より引用
“修羅の国”こと福岡出身なので「車をカスタム」と聞くとどうしてもこういう方向性になってしまう
直線ではフラットのまま最高速を維持し、車体が不安定になるアップダウンでは風圧によりカウルがオープン。パラシュートのように風を受け減速しようという目論見である。
自動開閉式リアカウル。風を味方につけた者が勝つ!
自信が揺らぐとすべてのマシンが速そうに見える(実際速い)
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イベント情報
富士通乾電池提供ミニ四駆ジャパンカップ2017 東京大会3D(開催終了)
日程 : 2017年8月26日(土)
会場 : 品川シーサイドフォレスト・オーバルガーデン(東京都品川区)
1件のコメント
匿名ハッコウくん(ID:1180)
美女レーサーがそらまるだった( ^ω^ )