バイオレンス映画『マッドマックス』の名を冠した本大会は、レギュレーションにのっとって行なわれる「公認レース」とは異なり、ルールは「コースを溶かすのはNG」という一点のみ。事実上“なんでもアリ”の無法地帯レースだ。
ミニ四駆が「スポーツ」であるための条件とは?
老舗模型メーカー・タミヤより、1982年からリリースされている「ミニ四駆」。専用レースで速さを競ったり、別売りのパーツでカスタムして楽しむことができる単3電池駆動のモーター付き自動車模型だ。爆発的なブームが起きた80年代後半(1次ブーム)および90年代中盤(2次ブーム)には、「ジャパンカップ」と呼ばれる全国大会の開催、さらに『ダッシュ!四駆郎』や『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』といったブームを牽引する漫画が存在し、漫画・アニメ・映画といったメディアミックスも行なわれた。
特に2次ブーム時は「単3電池の1割がミニ四駆により消費されている」といわれるほどの盛り上がりを見せた。
90年代の第2次ブームを牽引した名車「サイクロンマグナム」/画像は株式会社タミヤ公式サイトより
なぜなら、公認レースにおいては車高や重量、タイヤ径やローラー数など、非常に細かいレギュレーションが多岐にわたって存在し、たとえ小学生であってもそれに従わねば走ることはできない。
違反をチェックする「車検」も実車さながらに行なわれる。この「ルール」こそが、ミニ四駆を世界最小のモータースポーツたらしめているのだ。
公認レース参加者の多くは小学生。しかし運営スタッフは彼らを「君たち」ではなく「選手の皆さん」と呼ぶ。それぞれがひとりのエンジニアかつピットクルー、そしてレーサーだからだ/画像は株式会社タミヤ公式サイトより
「競技(スポーツ)」は「制約(ルール)」があってこそ面白くなるもの。コースの特徴を見極め、お小遣いと相談し、かつレギュレーションの中でいかに最速ラップを叩き出すか。ミニ四レーサーたちは指先をグリスで汚しながら、「制約と戦う面白さ」に熱中していたのだ。
しかし2次ブームを知るレーサーたちも今や20代後半。日々社会で生きていくなかで、数々の「制約」に直面していることだろう。社会のルールはミニ四駆のレギュレーションとは異なり、時として理不尽で不公平そして不条理。
たまには制約なんか取っぱらって、ミニ四駆にジェットエンジンでも積んでかっ飛ばしてえ。
そんな社会の荒波に疲れたかつてのミニ四レーサーの夢を叶えてくれるのが、この「マッドマックスカップ」なのだ。
ミニ四駆を最速にしよう
さて、今回参戦する「マッドマックスカップ」は、先述のとおりルール無用の“なんでもアリ”。というわけで今回、すべての制約を取り払ったチューンアップを敢行した。本マシンが筆者の大会参戦車である。搭載モーター数を2倍、電圧を8倍に改造。コーナリングの貴公子に憧れていたはずが、やっていることは極悪レーサー
もちろんボディも装着可能。『AKIRA』っぽい
いざ「マッドマックスカップ」参戦!
RCカー(ラジコン)と異なり、ミニ四駆はスタートすると一切の操作ができない。祈るのみだ
次々と塗り替えられる最速ラップを記録する、ゲームステーション本厚木店スタッフの北村さん。「公認レースではありえない、ぶっ飛んだマシンを見たい」という思いから本大会が誕生したという
何度でも出走できるタイムアタック制では、参加者にはピットクルーとしての腕も求められる。バッテリー換装中の筆者
バネでコーナー突入時の衝撃を緩和したり、可動式の重りで車体の振動を抑制したりと、そのバリエーションはさまざまだ。
自作のオリジナルパーツ(緑色の翼状部品)でジャンプセクションをクリア
今大会でも2台が参戦した「ウイニングバード フォーミュラー」。公認・非公認問わず実戦派レーサーに愛される名車だ
ワイルドミニ四駆ボディでの参戦も多く見受けられたのは、映画『マッドマックス』の影響だろうか? デジタルカーブを駆ける「ブルヘッド Jr.」
走行というよりほぼ飛行。いかに常軌を逸したハイスピードレースかということがおわかりいただけるだろうか
スクラップではない。行けえ、ソニックセイバー・ダブルプラズマ・V8!
入賞レーサーに聞いてみた
優勝者・右下のN選手(左)と、MVPマシン賞のナガシマ@俺マシ選手(右)
見事1位でフィニッシュしたのは、同大会2度目の優勝という歴戦の猛者「右下のN」選手。使用マシンは「ウイニングバード フォーミュラー」。発売開始から30年にわたって敏腕レーサーに愛される名車である。
速いマシンはビジュアルも洗練されているもの。タミヤ公認レース車検通過を示す「エントリーシール」がきらめく「ウイニングバード フォーミュラー」(左上)
「仕方なくMabeeeを外して、普通に走ったら優勝しました」とのコメントに王者の余裕がうかがえた。なんでもアリのバーリ・トゥードのなか、王道セッティングで勝利を収めた技術に脱帽である。
「この人は他人のマシンに対する研究熱心さがすごいんだよな」とはナガシマ@俺マシ選手。ちなみに右下のN選手による筆者マシンへのアドバイスは「配線は衝撃でトラブるので底面に通さないほうがいいです」
一見イロモノ臭がすごいが、広義の意味でのマスダンパー(慣性を利用した衝撃抑制機構)と考えれば非常に理にかなったセッティングである。ジャンプするコペンをマンモスダンプが押さえつけているのがわかる
両サイドの大型マスダンパーが特徴的なケンスケ選手の「エアロ サンダーショット」
ちなみに筆者の8倍電圧マシンは、スタートから2m付近の緩やかな坂を登りきれずリタイア。「電圧」だけに気をとられていた筆者だが、12V電池の「電流量」は単3電池のわずか数%とのこと。拳に力を込めても動かないものは動かない
なお「マッドマックスカップ」は第5回以降の開催も予定されていること。
王道チューンでねじ伏せるもよし、技術の粋と財力を全力投入してもよし。かつてのレーサーもミニ四駆初心者も、ぜひ腕試しに足を運んでみてはいかがだろうか。
第4回マッドマックスカップ全出走車
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イベント情報
マッドマックスカップ4~あまりにデスロード~(開催終了)
- 会場
- ゲームステーション本厚木店(神奈川県厚木市中町2丁目5−5)
- 日時
- 3月26日(日)13:30〜14:00
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CKS
ロマンロマン&ロマン