作家の架神恭介です(『ダンゲロス1969』など)。
今回はかの宗教法人・幸福の科学による新作アニメ映画『UFO学園の秘密』を、布教映画としてではなく、一つのアニメ作品としてまじめにレビューしてみます。
本作の特徴は宗教思想を土台とした、通常のアニメ映画ではありえない異様に複雑・重厚な世界観と、神も悪魔もグレイも一緒くたに出てくるオカルトごった煮感。これがいかに通常ありえない作劇であるかを、幸福の科学の宗教思想も交えながら解説してみるよ。
しかし、これが宗教団体による布教映画と侮るなかれ。前作『神秘の法』は通常のアニメ映画ではありえない作劇の一大スペクタクル娯楽大作でした。まあ、それ以前の作品はエンタメとしてはまだまだかな……と言うのが正直なところですが。
今作『UFO学園の秘密』にも前作『神秘の法』にも共通する点ですが、特筆すべきは、まず幸福の科学の内部で構築中の独自の宇宙論があり、それを土台として作品をつくっていることです。
幸福の科学では2010年頃から宇宙についての研究が始まり、大川隆法氏が霊言(偉人や神の霊に大川氏の口から語らせる)やリーディング(相手の魂の過去世を探査する)により、宇宙に関する断片的な情報を収集、それを集積していくことで宇宙の全体像を読み解いている最中です。そうして培われた宇宙観に基いて、『UFO学園の秘密』はつくられています。
作品ありきではなく、思想ありき。これが通常のアニメ映画ではありえない点でして、するとどうなるかというと、作中の世界観が凄まじく複雑になるのです。なにせ霊言では、孔子やアテナの霊が様々な宇宙人について言及してますからね。偉人や神格が宇宙人を語るような世界観です。それがそのままアニメになるんだから、もうスンゴイ。
普通にアニメ映画をつくる場合、この雑多すぎる勢力分布と技術体系はありえません。企画段階で「勢力は大きく2つ、第3勢力を入れるにしても3つまでに絞ろうな?」と言われるだろうし、「軍事力と超能力とオーバーテクノロジーと召喚魔法と説教で戦うのも多すぎるから、どれか1つか2つにしような?」と言われることでしょう。
でも、幸福の科学はそんなセオリーに囚われない。だって、彼らの宇宙論ではそれらは現に存在しているのだから。そして、それら全てのオカルト要素を「幸福の科学思想体系」の中でまとめ上げて説明することが映画の趣旨なのだから。よって、幸福の科学映画では通常ありえない複雑で壮大な世界観がしばしば描かれるのです。結果、「侮れない」作品が出来上がる……。
今回はかの宗教法人・幸福の科学による新作アニメ映画『UFO学園の秘密』を、布教映画としてではなく、一つのアニメ作品としてまじめにレビューしてみます。
本作の特徴は宗教思想を土台とした、通常のアニメ映画ではありえない異様に複雑・重厚な世界観と、神も悪魔もグレイも一緒くたに出てくるオカルトごった煮感。これがいかに通常ありえない作劇であるかを、幸福の科学の宗教思想も交えながら解説してみるよ。
セオリー無視! 思想ありき、ゆえの独創性
さて、僕は宗教系の著作(『仁義なきキリスト教史』など)も書いている関係上、宗教ネタには相応に興味があり、『仏陀再誕』や『神秘の法』といった幸福の科学によるアニメ映画にも何気に毎回足を運んでいたりします。しかし、これが宗教団体による布教映画と侮るなかれ。前作『神秘の法』は通常のアニメ映画ではありえない作劇の一大スペクタクル娯楽大作でした。まあ、それ以前の作品はエンタメとしてはまだまだかな……と言うのが正直なところですが。
今作『UFO学園の秘密』にも前作『神秘の法』にも共通する点ですが、特筆すべきは、まず幸福の科学の内部で構築中の独自の宇宙論があり、それを土台として作品をつくっていることです。
幸福の科学では2010年頃から宇宙についての研究が始まり、大川隆法氏が霊言(偉人や神の霊に大川氏の口から語らせる)やリーディング(相手の魂の過去世を探査する)により、宇宙に関する断片的な情報を収集、それを集積していくことで宇宙の全体像を読み解いている最中です。そうして培われた宇宙観に基いて、『UFO学園の秘密』はつくられています。
作品ありきではなく、思想ありき。これが通常のアニメ映画ではありえない点でして、するとどうなるかというと、作中の世界観が凄まじく複雑になるのです。なにせ霊言では、孔子やアテナの霊が様々な宇宙人について言及してますからね。偉人や神格が宇宙人を語るような世界観です。それがそのままアニメになるんだから、もうスンゴイ。
映画「UFO学園の秘密」 予告編 2
例えば『神秘の法』では8つもの勢力が出てきます。「人間勢力A」「人間勢力B」「祖神」「悪魔」「宇宙人」「敵性宇宙人」「金星人」「地球意思」──これら8大勢力が軍事力、超能力、オーバーテクノロジー、召喚魔法、説教を駆使して戦うバトル映画であり、秘密結社から最終破壊兵器までこれでもか、これでもかとオカルト要素・ボンクラ要素を盛り込んでくるのです。普通にアニメ映画をつくる場合、この雑多すぎる勢力分布と技術体系はありえません。企画段階で「勢力は大きく2つ、第3勢力を入れるにしても3つまでに絞ろうな?」と言われるだろうし、「軍事力と超能力とオーバーテクノロジーと召喚魔法と説教で戦うのも多すぎるから、どれか1つか2つにしような?」と言われることでしょう。
でも、幸福の科学はそんなセオリーに囚われない。だって、彼らの宇宙論ではそれらは現に存在しているのだから。そして、それら全てのオカルト要素を「幸福の科学思想体系」の中でまとめ上げて説明することが映画の趣旨なのだから。よって、幸福の科学映画では通常ありえない複雑で壮大な世界観がしばしば描かれるのです。結果、「侮れない」作品が出来上がる……。
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架神 恭介
作家。漫画原作者。『戦闘破壊学園ダンゲロス』『放課後ウィザード倶楽部』『こころオブ・ザ・デッド』などの原作の他、『よいこの君主論』『仁義なきキリスト教史』『完全教祖マニュアル』などの古典・宗教学に関する著述も。サイトはカガミ・ドット・ネット。http://cagami.net/
マンガ家向けのコミュニティもやってます。
https://manga-tech.jp/
1件のコメント
平原法人
「裏宇宙」という言葉について、「全く未知の概念」と書かれていましたが、ラッキーマン読者であった私には既知でした。
まさか幸福の科学の幹部も・・・