“インディペンデント”であること。それは単に「メジャーレーベルに所属していない」状態を指す言葉ではない。
テクノロジーやプラットフォームの発展により、誰もが──たった一人、誰にも頼らずとも、世界中に作品を届けられるようになった。そこは、自分のやりたいことをひたすらに、自らの意思で選び取る“主体性”があちらこちらに渦巻く世界だ。
TuneCore Japanの企画「MEDIA NETWORK」と連動し、KAI-YOUではこれからのシーンを担う才能をフィーチャーする連載企画を展開中。

「MEDIA NETWORK」
「楽曲をリリースしたあと、どうやってプロモーションすればいいのか?」
そんなインディペンデントアーティストの課題を解決すべく、誰でも手軽に、自身の楽曲をメディアに“売り込み”できる場を用意した取り組みだ。
今回スポットライトを当てるのは、HyperpopやDariacoreなどの現代的なアプローチを取り入れつつ、音楽領域の情報環境を研究する視点から“ちゃらんぽらんなスタンス”を提示するsakakibaraさん。
そして、福岡を拠点に、言葉を使わず音のみで日常の風景や行動を表現するインストゥルメンタル・プロジェクトを掲げる:ninomiyaさんの2組。
SNSやストリーミングが普及し、あらゆるアーティストが同じ土俵で「可処分時間」を奪い合うことを強いられる現代。
激化する競争やアテンションエコノミーを俯瞰し、独自のペースと美学で音楽をつくり続ける彼らに、自身のルーツや現在の音楽シーンに対するリアルな視点を語ってもらった。
目次
言葉を持たないインストと、マテリアルを組み合わせる美学
──まずは自己紹介をお願いします。アーティストとしてのコンセプトや志向している音楽性/ジャンルなどについてうかがえれば幸いです。
sakakibara sakakibaraと申します。普段は大学院生をしながらパソコンを使って音楽をつくっています。最近はHyperpopやDariacoreと呼ばれるジャンルの音楽をよく聴いていて、自分の楽曲にもそれらのジャンルの技法をよく取り入れています。
音楽制作をはじめたきっかけは、YouTubeに投稿されているボカロMVだったと思います。「なんか自分でも出来そう」と勘違いして、家にあった古いノートパソコンで音楽制作を開始しました。

sakakibaraさん
sakakibara 音楽性やコンセプトについてはよく分からないというのが正直なところです。明確な音楽性とかあったらかっこいいなーとは思うのですが、現代において「音楽性」や「コンセプト」と呼ばれるものを主張するのは難しいと感じています。
大抵のことはやり尽くされ、私たち(少なくとも私に)残っているのは「先人が残したマテリアルをいかに組み合わせるか」という問題だけのように思われます。
なぜ私がそれをやらなくてはいけないのかという根拠も乏しく、宙ぶらりんのまま、楽しいからぼんやりと音楽をつくっている感覚です。
:ninomiya はじめまして:ninomiyaです。福岡を拠点に、ソロでインスト曲を制作しています。このプロジェクトでは日常のなかで起こる行動や風景を、言葉を使わず音だけで表現することをコンセプトにしています。
街中を歩く、街並みや風景を眺める、昔を思い出す、そういった些細な行動を曲にし、改めて認識することで自分自身の日常を見つめ直すきっかけにしています。

:ninomiyaさん
:ninomiya リスナーにとっても、歌詞がないからこそそれぞれの記憶や経験と重なることが多く、親しみやすい曲だと思います。
音楽制作をはじめたのは、高校生の頃にDAWを触りはじめ、音を組み立てていく感覚に強く惹かれたのがきっかけでした。そこから、バンドをはじめたりライブをしたりすることで音楽の楽しさを認識しました。
──特に影響を受けたアーティストや楽曲について教えてください。
sakakibara xaevというアーティストから大きな影響を受けていると思います。一曲挙げるなら「mashups aren't real music imagine making them」でしょうか。
まずタイトルが良い。あっけらかんとした開き直りとも自虐とも取れるこのタイトルのセンスには痺れました。大胆なサンプリングや目まぐるしい展開は今の時代を象徴するような音楽ではないでしょうか。
xaevの曲を聴いていると「そうだよね。それしかないよね」という気持ちになってきます。まさに「組み合わせの問題」としての音楽の可能性を体現しているアーティストだと思います。とても尊敬しています。
:ninomiya 強く影響を受けたアーティストは常田大希(King Gnu/MILLENNIUM PARADE)さんです。曲そのものに影響を受けたというよりかは、作曲のスタイルに影響を受けています。
自分が楽曲制作をはじめて、コード進行など曲を作るための勉強を進めていくなかで、常田さんのコードの運びや音使いに驚かされました。
そこに曲作りの面白さを感じて、今の作曲スタイルにもつながっています。言葉を使わずに、物事を表現するというプロジェクトのコンセプトにおいても、自分のボキャブラリーを広げる上で常田さんのスタイルはとても参考にしています。
主戦場はインターネット──「形を残す」ためのストリーミング配信
──あなたはどこを「主戦場」として活動していますか? またはどのような環境で制作を行っていますか?
sakakibara 以前はバンドを組んでライブハウスに出ることもごく稀にあったのですが、今はすっかり根無し草になってしまいました。特定のコミュニティに属することもなく、完成した曲を友人に聴かせることぐらいしか外界との接触はありません。
もっと外に開いていきたいという気持ちはあるのですが、SNSを頑張ろうという気も起きず「まぁ、これはこれでいっか」みたいなぬるい人間です。
しかし、最近Peterparker69のライブを観て、とても感銘を受けました。誰かと一緒に音楽や映像をつくりたいという意欲は高まっています。どうやってミュージシャン同士の交流ははじまるものなんだろう?DMとかすればいいのかな。
:ninomiya 現在はサブスク配信とSNSが自分の活動の場になっています。SpotifyやApple Music、LINE MUSICなど様々な楽曲配信サービスでお聴きいただけます。
今のところ音源の配信がメインの活動ですが、今後は映像を使ったコンテンツづくりも行いたいと考えていて、現在、知人の映像クリエイターと計画を進めています。
これからも楽曲配信は続けつつ、自分の楽曲をもっと体感でき、さらに楽曲を知ってもらえる機会を作れるコンテンツを増やしていきたいです。
──なぜ自身の楽曲を音楽ストア(音楽ストリーミングサービス)に配信しようと思ったのでしょうか? また、チューンコアを選んだ理由はありますか?
sakakibara インターネットが醸成してきた文化にリスペクトを持つ人間の一人として、自分の作品をインターネットに遺しておきたいという気持ちがありました。音楽ストリーミングサービスは悪魔的な部分もあると思いますが、とても優れたサービスです。数億曲のカタログの中に参加するというのはそれだけでロマンを感じます。
いくつかディストリビューションサービスを検討しましたが、国内のサービスであればチューンコアが一番分かりやすく、サポートも手厚いと感じました。
インディペンデントのアーティストをフックアップしていこうとする取り組みも多数行われていて、音楽をつくるモチベーションになると思います。機能の追加も頻繁に行われていて勢いを感じます。
:ninomiya ストリーミングサービスに配信しようと思ったのは、気軽に自分の曲を聴いてもらいたいと思ったからです。あとは、自分の作品として形をしっかり残したいという思いもあります。
ディストリビューターとしてチューンコアを選んだのは安心感が強いからです。以前に進めていたプロジェクトでいくつかのディストリビューターを使ったのですが、断然チューンコアが良かったので現在も利用しています。
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