圧倒的な“誤読”の肯定と、言葉なき日常のサウンド sakakibara×:ninomiyaインタビュー

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タナカハルカ

「今の情報環境は正気を失っている」アテンションエコノミーへの視線

──音楽シーンのメインストリームである「J-POP」やメジャーシーン、そして音楽シーンを取り巻く情報環境などをどう捉えていますか?

sakakibara 私は大学院で音楽領域における情報環境やプラットフォームについて研究しています。音楽と情報技術の結びつきについては常に関心を持ってきました。

現状を表す言葉として適当かどうかは分かりませんが、良くも悪くも今の情報環境は「正気を失っている」ように思います。インディー/メジャーの壁が取り払われたとよく言われますが、裏を返せば「皆が同じ条件で戦う」ということです。

ポルノや生成AI動画、炎上ネタが跋扈(ばっこ)するSNSの中で、ミュージシャンたちは可処分時間をめぐる戦いに参加しなくてはいけません。「バズって一発逆転」みたいな雰囲気が強くなっている気がします。それを楽しめるなら全く構わないのですが、激化する競争に心を病んでしまうミュージシャンも少なくありません。

競争に潰されてしまうくらいなら、もっとゆるく、ちゃらんぽらんなスタンスがあってもいいと思います。アテンションエコノミーをいかに相対化していくかが大事になってくるのかもしれません。

逆に、今のJ-POP/メジャーシーンに関しては、いちリスナーとして「もっと正気を失っていってほしい」と思っています。クレイジーな時代に相応しいクレイジーな音楽がたくさん聴きたいです。

:ninomiya ストリーミングサービスやディストリビューターの登場によって、誰でも楽曲を世に放つことができるようになった分、メジャーシーンとの距離は昔と比べて近くなったのではと感じています。

実際に、ネット上での活動からメジャーシーンに行ったアーティストの方も多くいらっしゃるため、我々のようなインディーズアーティストにとっては夢のある環境だと思います。

しかし、世に出る楽曲が多くなった分、今まで通りの曲をつくるだけじゃリスナーに聴かれなくなったり、プレイヤーの見た目など音楽以外の部分でも勝負しなくてはいけなかったりします。

もちろんそれもアーティストにおいて大事な要素ではあると思いますが、もっとラフに、難しく考えすぎない音楽活動をしたくなる瞬間もあります。

圧倒的な誤読の肯定と、自然の二面性を描くサウンド

──今回「メディアネットワーク」に応募された楽曲について、聴きどころやこだわりのポイント、楽曲を通して届けたいメッセージなどを教えてください。

sakakibara ひねくれた立場になってしまいますが、「何も言いたいことがない、何も言えることがない」というのが「はう」という楽曲が提示するメッセージだと思います。

「はう」

「はう」

sakakibara 一種のメタメッセージなのかもしれません。何かを伝えるというのはすごく難しいことです。言葉は常に誤読を生み、あらぬ方向へ転がり出してしまいます。曲をつくった私でさえ、この曲が何を指し示しているのかよく分かりません。

ならば、その圧倒的な誤読可能性の中に飛び込むしかないと思っています。誤読の果てに、想像もしない場所や人とこの曲が接続され、まったく別の意味が生成されたらいいなと思っています。

:ninomiya 今回応募した「ReCall」は自然の繊細さと広大さをイメージしてつくりました。

「ReCall」

「ReCall」

:ninomiya 曲を通して、ピアノや細かなビートを使った繊細で幾何学的なパートと、シンセサイザーや歪みを多く用いた激しく、有機的なパートの2つのパートが交互にあります。この2つの対となるパートが有機的で、どこか幾何学的な自然の二面性や、時に繊細で時に広大な自然のスケール感を表現しています。

この曲から日常にありふれた自然に少しでも目を向け、その美しさを感じていただければ幸いです。

──お互いの楽曲を聴いてみて、どのように感じましたか?

sakakibara 音がめっちゃいいって思いました。好きなアーティストや参照しているジャンルが重なっているのではないかと勝手に想像しています。

既存の枠を軽やかに超えていくアイデアだったり、アレンジが魅力的だと思います。いろんな音楽を聴いてらっしゃるんだろうなということが作品から伝わってきました。

その他の楽曲だと「7763」がとても好みでした。静謐なアンビエントとタイトなドラムの絡み合いが心地よいです。これからの作品がとても楽しみなアーティストだと感じました。

:ninomiya このアップテンポなビートに歪みを感じる音づくりのシンセが乗っかってる感じが自分の好みで聴いててとても心地いいです。一つ一つの音が、他の音との絡み方なども含めてしっかり計算されているのが聴いていてよく分かります。

自分にない武器で言うと、やはりボーカルですね。アップテンポなインストに、声質もメロディもゆったりしたボーカルが乗っていることで、そのギャップが独特な雰囲気を演出しています。

かっこよさもありながら、ふわふわした印象もある、そんな独特で素晴らしい曲です。

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