KAI-YOU HYPER POP AWARD 2023大賞「コメカミワークス」インタビュー

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日常からのズレを重視する

──「コメカミマスター」の制作にあたって意識したポイントはありますか?

長岡岳大 「コメカミマスター」に限らず……なのですが、コメカミワークスで一番大切にしているのは“日常”と“不可思議さ”のバランスです。

サーカスが持つ不可思議さを保ちながら、日常へどうアプローチするかを考えて制作しています。

コメカミワークスとしての活動をはじめたころはまだ無意識的だったんですが、濱口さんに関わっていただくようになってから、日常の部分がより重要だと気づき、掘り下げていくようになりました。

濱口啓介 コメカミワークスの作品では、日常の些細な面白さと、パフォーマンスの不思議さ・凄さの融合が大切だと思っています。 濱口啓介 こめかみにボールを乗せるのも、実は技術的にかなり難しいんです。でもそれをあえて「すごいでしょ!」とは見せず、日常に馴染ませ、小さなビックリマークを生み出せるように意識しています。

長岡岳大 ジャグリングって、一般的に3つ以上の物を投げたり取ったりするというイメージがあると思うのですが、その状態というのは、見てる人にとって、すでに情報量が結構多いと思うんです。 長岡岳大 そこからさらに難しい技をやっても、ジャグリングを知らない人にはその凄さやおもしろさはなかなか伝わらない。なのでなるべく情報を削ぎ落として、シンプルな構造でおもしろさが伝わるモノをつくりたい

その行き着くところが、そのジャンルやカテゴリを知らない、コミュニティの外側にも届きうるものなのかもしれない……、と。

──なるほど。「KAI-YOU HYPER POP AWARD 2023」の審査員コメントにもありましたが、「コメカミマスター」にはNHK Eテレの教育番組っぽさがありますよね。映像中にちらっと映る本も『岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。(株式会社ほぼ日)』『新しい分かり方(中央公論新社)』『塑する思考(新潮社)』『なるほどデザイン(MdN)』など、その文脈を感じました。

長岡岳大 NHK Eテレの作法というか、サウンドロゴや映像のリズム感は大好きですね。「ピタゴラスイッチ」も「デザインあ」もずっと見ています。

濱口啓介 僕もそれらの番組は好きなので、自ずとアイディアや発想の面でも影響を受けている部分はあると思います。

NHK Eテレのように、良い意味での裏切りや意外性を生むにはどうしたらいいか、二人でよく話し合っています。

長岡岳大 文脈という意味では『ドラえもん』(小学館)の影響もあるのかなぁ。

『ドラえもん』1巻書影/画像はAmazonより

長岡岳大 藤子・F・不二雄先生が言う“SF(すこし・ふしぎ)”の“すこし”が大事だと思っていて……。大きくズラすのではなく「日常から少しだけズラす」。

濱口啓介 ズレの塩梅はよく話し合ってますね。

長岡岳大 『ドラえもん』のように、日常に非日常な物体や物事が入ることで、より日常の輪郭が際立つんです。そういったズレを見つけたり、調整するのは毎回楽しいですね。

映像だけにとどまらない?コメカミワークスの展望

──「コメカミマスター」は本アワードだけでなく、「六本木アートナイト2023」やイタリアのミラノで開催されたショート映画祭でも受賞するなど、着実にジャンルやカテゴリの外側へと届きつつあります。コメカミワークスのこれからの展望について、教えてください。 濱口啓介 「コメカミマスター」への評価をいただく中で、もちろん嬉しさもありますが、まだまだ深く掘ることができそうだとも感じています。

今回のインタビューの場を含めて、新しい経験が別の道筋のきっかけになれるよう、右往左往する自分たちを俯瞰して、面白がっていきたいと思っています。また、これからはコメカミワークスに関わる人をもっと増やしていって、新たな価値を見つけていきたいです。

長岡岳大 これからもサーカスや舞台芸術を、様々な媒体、形式の可能性を追求していくつもりです。

それとNHK Eテレに、そういったサーカス、舞台芸術が持つ新しい切り口から、番組に関わりたいと思っています。NHKさん、よろしくお願いします……!

僕たちはトライすること自体を楽しんでいるので、ジャンルや形式を問わず、アプローチを楽しめる人と一緒に、新しい表現を模索していきたいです。 ──ジャグリングやサーカスと、別ジャンルとの制作も歓迎ということですね。これからのコメカミワークスの活動も期待しています。本日はありがとうございました!



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