ボーカロイドが孤独な僕らをつないだ 八王子P×TNSK×わかむらP座談会

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今日からまた始まる、『Twinkle World』

八王子 アルバムができた時もすごく不安で、気持ちの整理をつけながら一週間が経ってやっとフルで通して聞いたんです。その時、「あ、ちゃんといいものができたな」と思えた。

朝5時とかにTwitterにグチの一つでも投稿しそうになるほど辛い状況だったけど、曲を聞いて苦労したんだなってファンに悟られてしまったら未熟ですよね。辛いからこそ「Twinkle World」のような、キラキラしたものが出てくるのかなと。

TNSKさんが描き下ろした「Twinkle World」ジャケットイラスト。左が初回版、右が通常版

さらに今回、自分の変化という部分をビジュアルでも伝えたくて、メジャーではずっとカッコイイ小悪魔的なミクのビジュアルでやってきましたけど、今までとは逆に、初回盤にはかわいいミクをお願いしましたね。MVでもミクはモデルをLat式からTda式に変えて。

わかむら そうでしたね。

【初音ミク】Twinkle World【オリジナル曲+PV】


八王子 僕の中では、これまでやってきた小悪魔的なのって、わかむらさんが制作した「Sweet Devil」のイメージが定着していたからっていうのもあります。今回のビジュアルに関してはファンが持つ八王子Pへのイメージ、「エレクトリック・ラブ」「Sweet Devil」という対照的な二本柱を反映させた集大成的なモノになってると思います。

わかむら 八王子Pと組んでいる作詞のq*Leftさん……って言ったほうがいいのかな?

八王子 妹って隠していないので大丈夫です(笑)。

わかむら 「エレクトリック・ラブ」が八王子Pの作詞で、「Sweet Devil」が妹さんの作詞なので、当然雰囲気が違ってくるんですよね。今回もたくさん書いてもらっていますが、作詞が誰かによってMVのテンションやつくりも変えています。妹さんは女の子の「気まぐれ感」やこんなノリを書いちゃうの!? という意外性が素敵だと思っていて、八王子Pの作詞には哀しさやはかなさといった「哀愁」を感じるんですね。

八王子 妹が書く詞には、絶対男性には書けないような表現やニュアンスがある。

わかむら そうだよね、あるある。

八王子 男性目線で書く女性目線って、どこか少女マンガっぽい感じが出てしまうというか。単純にかわいい曲は書けても、生々しいものは本当に女心を知っている女性にしか書けないと思うんです。

わかむら さっき、MVのつくりを作詞家によって変えていると言いましたが、実は毎回自分でもテーマを設定しているんですよ。映像っていうのは尺も長くてミクが写りっぱなしなので、テーマをつくらないとイメージが宙ぶらりんになってしまうんですよね。

「Sweet Devil」だったら、元はユニットでデビューしていたけど売れなくて事務所から解雇されてソロで売ることになったアイドル。

八王子 えっ(笑)。

Skype越しのわかむらPさん

わかむら かなり綿密に妄想していくんですけど、たとえば今回のリード曲である「Twinkle World」のMVでいえば、もうオリコン1位を3回ぐらい取ってるベテランで、売れ線のピークは若干過ぎた女の子っていう。

八王子 そこまで! 貫禄ついてきたみたいな?

わかむら そうですね、表情も自信満々な感じにしています。実際の女の子っていうのは、年を重ねたり性格も変化していくんですが、VOCALOIDっていうのはそれがないのでクリエイターが意識して目先を変えないと同じイメージになってしまうんですよね。

八王子 なるほど。

TNSK ミクと絵描きの関係でいえば、自分発信のイラストは別として、オリジナルのイラストや世界のイメージに挑戦したいという気持ちが強いですね。自分なりに解釈してやるのが楽しくて。原作は越えられないけど、こうすればもっと自分好みになるという。二次創作できるのがミクの魅力なのかなと思いますし、それが公式で許されている世界だと思っているので。

八王子 VOCALOIDの何よりいいところって、音楽以外の人たちとつながれたっていうのがむちゃくちゃあって。そのおかげで自分も2人に出会えたし、もうkzさんの「Tell Your World」の世界そのまんまですよ。一人で始めた音楽活動ですけど、3人で制作してきたアルバムも一段落して落ち着いたので、これからのためにいろんな人と会ってインプットをする時間にあてていきたいです。

文:石橋加奈子
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関連キーフレーズ

八王子P

コンポーザー、アレンジャー、リミキサー、DJ

ボカロ界の貴公子。 これまで動画サイトにアップされた関連動画総再生数は700万回を超えている。
2009年末に「エレクトリック・ラブ」を、2010年に「Sweet Devil」を投稿。MMDのプロデューサー・わかむらPによる動画も話題となり、瞬く間に殿堂入りを果たす。
DJ活動を通して培ったダンスミュージックをベースにした唯一無二のサウンドが広く支持されている。2011年にメジャーデビューを果たし、『electric love』、『ViViD WAVE』をリリース。
そして2014年8月、いよいよ3rdアルバム『Twikle World』が発売。

TNSK

イラストレーター / 漫画家

リアルとアンリアルが交錯した魅力的なイラストで、同人商業問わず、様々な作品を生み出している。
八王子Pのメジャーデビューアルバム『electric love』以降、全アルバムのジャケットイラストを手がけている。
現在、『月刊コミックガム』(ワニブックス)にて、ゲーム・アニメが展開されているメディアプロジェクトとして「カラスマ0条探題 -魔法少女大戦-」を連載中。

わかむらP

アートディレクター・デザイナー

フリーランスのアートディレクター・デザイナー。映像制作・DTP・DVJ等、多方面で活動。
MMDのプロデューサーとして、ニコニコ動画の黎明期から活動し、数多くのPの中で最も早くマイリスト総数10万を突破したPとしても知られている。
八王子Pの映像制作をはじめ、ボーカロイド関連の様々なCM・MVなどの映像を手がけている。

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