「人脈が直接自分の力に」フリーランスへの転身
──これまでにサントリーやローソンの企業タイアップのアニメも制作されていますが、現在はフリーランスとして活動しているのでしょうか?うなばら海里 そうですね。大学卒業後に就職したアニメ制作会社で2年間働いて、今年の6月に退職してフリーランスになりました。
ありがたいことに、会社に勤めていたときから外部のお仕事の依頼があって。どんどんやってみたい企画のお誘いが増えてきたのと、若いうちにいろいろな仕事を経験してみたい思いがあり、気兼ねなく仕事を受けられるフリーランスの形を選びました。 ──タマグラ出身のクリエイターの中には、個人でご活躍されている方も多くいます。キャリア選択において、そういった方々の存在が少なからず影響を与えているのかなと感じました。
うなばら海里 影響は受けていますね。特にタマグラ出身の久野遥子さんは、アニメーションのみならず漫画やイラストなど、様々な分野で大活躍されていて、働き方から活躍の仕方まで素直に憧れています。
実は久野さんとは何度かお仕事をご一緒していまして、最近も久野さんがアニメーション監督をつとめる映画『化け猫あんずちゃん』のパイロットフィルムにも関わりました。近くでお仕事をさせていただいていることもあり、大変影響を受けています。
──個人でアニメーション制作をする選択が取りやすい要素が周囲に揃っていたのかもしれませんね。いましろたかし先生原作の「化け猫あんずちゃん」を山下敦弘監督と作っております。
— KunoYoko (@kunoyoko) June 9, 2021
MIYUプロダクションと日仏共同制作なんです🚲🐱🚲https://t.co/BeJSvjxDz4
うなばら海里 まさに環境がよかったと思います。コロナ禍の影響で会社がテレワークの体制になり、在宅で作業することのハードルが下がったのもあります。
それまで、誰にも見られていない状況で作業をしても仕事が進まないのでは……と考えていたので、フリーランスには抵抗がありました。だけど、実際に在宅で作業をするようになって「意外とできる!」と気づいたのは大きかったですね。
──実際、フリーで働いたことでの発見や変化などはありますか?
うなばら海里 当然ですけど、フリーランスはフリーランスで大変ですよね。確定申告や休みの管理を自分でしなければいけないとか(笑)。自分のキャパシティがわからない状態で仕事を受けた結果、休まず働かなければならなくなってしまうこともあり、仕事とお休みの調整が難しいなと思います。
でも、自分の裁量でやりたい仕事ができるのはとてもいいですね。人脈が直接自分の力になっていくのも、フリーランスのいいところだと思います。次の仕事に繋げられそうと希望が抱けるのはワクワクします。
“やり過ぎる面白さ”を表現したループアニメ
うなばら海里 作業中にLo-fi Hip Hopはよく聴いていたので、今回の企画を聞いたときは純粋に面白そうだなと思いました。
「NURO 光」さんから「うなばらさんの絵とLofi Hip Hop動画の親和性が高い」とお誘いいただいたこともあるのですが、何より「『NURO 光』は高速インターネットなのでアニメーションも高速にします!」と言われて思わず笑ってしまいました(笑)。
──『作業用 "高速" Lo-fi Hip Hop』動画ではどういった役割を担当されたんでしょうか?
うなばら海里 作画、背景、色彩設計を担当しています。キャラクターのデザインもお任せに近かったですね。「大学生くらいの課題に追われている女の子」という設定だけいただいて、私が普段描いている絵柄に近い子を描かせてもらいました。 ──キャラクターデザインで意識したポイントはありますか?
うなばら海里 私の好きな女の子の要素を詰め込んでいます(笑)。着飾っていない、自然体な女の子が好きなんですよ。なので、部屋着だしカメラも意識しない感じにしました。
今っぽい女の子がいいのかなとも思いつつ、どちらかというとレトロな雰囲気にしています。今どきのアニメなら目をもう少しキラキラさせていいかもしれないけど、あえてシンプルに。
私が小さい頃に見ていたアニメキャラクターが根底にあると思います。自分の好きな要素を詰め込んだ子を描かせてもらえたのは嬉しいです。 ──背景や小道具なども動画の雰囲気にあっていますね。
うなばら海里 背景は部屋の雰囲気やどこに何を配置するかなど、すべて自分で考えて描きました。日本のマンションのようなイメージでつくり込んでいます。
あと、背景には3Dを少し使っています。「CLIP STUDIO」の3D機能を下敷きに、机に置かれている物のパースの参考にしました。もともと3Dに対して取っつきづらいイメージがあり、ずっと使っていなかったのですが……必要に迫られて少しずつ勉強していたので、役に立ちました(笑)。
3D機能を使えば、実際に本や積み木を並べた写真を使ってパース取りするのと同じ感覚で描けるので、時短にもなりますし画面にも説得力が出ていいなと気づきもあり、勉強してよかったです。 ──制作する上で楽しかった点はありますか?
うなばら海里 「やり過ぎる面白さ」を試すことができて面白かったです。今まではゆったりした動きのアニメーションをつくる機会が多かったのですが、今回は徐々に速度が上がっていき、最終的には超高速になることを想定して描きました。
特に、ラストの「オラオラオラオラ!」と手が増えるシークエンスを描くのは楽しかったです(笑)。以前つくったGIFアニメ『チューペットを折る女の子』を思い出しました。
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