第5章『ハハノシキュウ、現地ラッパーと語り合う』
YouTubeで適当にMCバトルを観ていたら、オススメに「小倉 MC BATTLE」という動画が幾つか並んだのを覚えている。GADOROくんや呂布カルマさん、晋平太さんにSAMくん、裂固くんだったり。見慣れたラッパーの名前がその動画の群れに紛れていた。
そんな小倉 MC BATTLEを主催しているのが、ラッパーのPEKOさんだ。北九州市での夜は、PEKOさんと話をする機会を設けていただいた。 PEKOさんはずっと北九州市に根を張って生活をしている。ご自身で美容院を経営しながら、小倉でイベント運営に精を出しているそうだ。
YouTubeで動画を観たときは、それこそ昔の「戦慄MC BATTLE」のような趣がある。
「去年、念願叶ってKOKの九州予選をウチで開催したんですよ。小倉からスターを輩出してやる!って意気込んだんすけど、福岡・博多の智大くんに持ってかれちゃいましたけどね(笑)」
北九州市の隣には、博多という大都市がある。5lackが東京から引っ越してしまうような魅力的な街だ。
「博多に出て活動しようとか考えたりはしないんすか?」
「思わないですね、自分はずっと小倉で、これからも出て行くつもりはないです」とPEKOさん。彼の地元イベントに対する姿勢は一貫している。
「自分が先輩にしてもらったように、若い子たちの遊び場を俺がつくってあげたい」 ちなみに、北九州市にいる「スターになれそうなヤバイ若手」を聞くと、「ベゲfastman人」というラッパーを挙げてくれた。名前がヤバイ。
「『あの人呼んで!この人呼んで!』ってみんな魔法の呪文みたいに言ってくれるんですけど、なかなかそんな簡単に呼べないっすね...。イベントやってると儲かってるって思われがちなんですけど。こっちはトントンでやっと。何十万円の赤字だって何回も経験してますし」
たしかに、交通費だけでも本当に大変なはずだ。「イベントの次の日でも仕事できるように、店の営業時間を午後からにしました(笑)」とPEKOさん。
これは東京では難しいライフスタイルのように思えたし、同時に北九州で生活の足場が出来上がっているこの人を格好いいと思った。気が向いたら小倉MC BATTLEに呼んでください。
UMB(ULTIMATE MC BATTLE)の開始をきっかけに起こった2005年以降のMCバトルブームに見事なまでの影響を受け、未だに引きずっている者同士、固い握手を交わし、最後にPEKOさんとフリースタイルセッションをして締めた。
「晋平太さんがイベントに出てくれた日の帰り際に、こう言ってくれたんですよ」
見返り美人みたいな晋平太さんの顔を思い浮かべる。
「小倉、また来るよ」
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