須藤凜々花さんがヒップホップファンから注目されている理由とその余波

須藤凜々花はヒップホップなのか?

最後に、最も議論となった点について触れておこう。

AKB48グループおよびファンにとっては、総選挙という場は、ライブと同等、もしくはそれ以上に神聖な戦場である。

ファンに大量のCDを購入させて投票を促す「AKB商法」と揶揄されるその手法には賛否あるが、シングルの選抜という栄光の座をかけて、ファンと一丸となって出馬し、これまで多くのメンバーが汗と涙を流してきた場所であることは事実だ。

今回の結婚宣言は、その総選挙という場において、ステージの上の幻想を売り物にする“アイドル”(IDOL=偶像)という存在を否定するかのような行為だった。

今回の騒動そしてケンドリック・ラマーのTシャツ事件で彼女のことを知ったヒップホップファンの多くからは、彼女の結婚を祝福するとともに、その反体制的な行為をもって「彼女はヒップホップだ」と賞賛する声も後を絶たない。

事実、彼女は、ヒップホップの反体制な部分に共感を覚えるという趣旨の発言を過去にもしている。 一方で、結婚自体が問題なのではなく、「なぜ先輩たちがつくりあげてきた総選挙という場所でなければいけなかったのか?」という疑問は、ファンや他のAKBグループメンバーの多くが口にしている通りだ。

「(先人の業績に泥を塗るような)仁義にもとる行為はヒップホップにあらず」という糾弾もある。 Twitterでは、彼女の行動に好意的なツイートを行ったヒップホップファンに、アイドルファンがリプライを飛ばし議論に発展するということも起きている。

ファンからの悲痛なdis曲も

当日は、メンバーである高橋朱里さんが正面切って結婚宣言を非難したが、ファンからも批判の声は上がっている。

例えば、2015年からYouTubeで配信を開始したオカメちゃんは、ヒップホップについて語る番組を配信してきたハードコアYouTuberだ。

そして、彼がリスペクトする人物として度々口にしていたのが、漢 a.k.a GAMIさんと、他ならぬ須藤凜々花さんだった。今回の総選挙についても、須藤凜々花さんを応援していることを公言して憚らなかった。

「毎朝、凜々花先輩の選抜について考えてますよ、自分は」。つい一週間前にYouTubeでそう語っていた彼が、結婚発表と同日、YouTubeを更新。DJ刃頭 from ILLMARIACHIによる『Younggunz』という大ネタをビートにした、須藤凜々花さんへの痛烈なdis曲だった。

かつて名古屋の切れ者・呂布カルマさん相手にビーフ(ラップ曲によるバトル)を仕掛けたこともあるオカメちゃんの鋭いリリックが冴え渡っているが、その内容はファンからの悲痛な叫びという他ない。
Dis You -須藤凜々花裏切りの代償-
「週刊文春」に熱愛を嗅ぎつけられ、週刊誌にすっぱ抜かれる前に自分の口でファンやメンバーに対してケジメをつけたかったのかもしれない。

同時に、オカメちゃんのdis曲にもある「一人でやれよ自爆なら」という意見も、アイドルファンであればこそ口にしてしまいたくなるのだろう。直前までファンへ投票を促していた彼女の言う「面白い未来」とは、何を指していたのか? 総選挙アピール動画でも、漢 a.k.a GAMIさんらの所属するクルー・MSCをサンプリングしたコメントをしていた彼女。

現在、「デイリースポーツ」によると事務所を解雇されることが濃厚だとされている(外部リンク)が、今、彼女の動向は、アイドルファンにとどまらず、ヒップホップファンからも注目されている。

いずれにしろ、彼女自身の言葉による進退発表およびファンへの説明が待たれる。彼女自身を含めて、他のメンバーやファンも納得する形での収束を願いたい。

AKB48、波乱の総選挙

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