国産の『遊戯王OCG デュエルモンスターズ』や『ポケモンカードゲーム』、アメリカ生まれの『Magic: The Gathering』で知られるトレーディングカードゲーム(TCG)。国内市場では2011年に一度ピークを迎え、その規模は1000億円を突破した。
2011年は、ゲーム業界で言うと、PlayStation VITAとニンテンドー3DSが発売された年で、ファミ通調べでは家庭用ゲーム機の市場規模は4,543億円。それと比べるとやや小ぶりな印象だが、1パックあたり150~500円という単価を考えると、カード枚数としてはかなり普及していたことがわかる。
TCG市場はその後、やや緩やかな減少傾向となったと言われているものの、徐々に持ち直し、2015年には962億円を記録。ここに来て、再び最盛期の兆しが見えてきた。
これはメーカーや関連企業各社が健闘した結果と言えるだろうが、中でも、ここ10年で『ヴァイスシュヴァルツ』『カードファイト!! ヴァンガード』(以下『ヴァンガード』)『フューチャーカード バディファイト』(以下『バディファイト』)など、ヒットタイトルを生み出し続けているブシロードの功績も大きいのではないだろうか。
ブシロードは、カードだけではなくアニメといったメディアミックス展開に力を入れ、タイトルの知名度やTCGの裾野を広げ続けてきた存在だ。
ピンと来ない読者でも、ブシロードを設立した社長の木谷高明氏が、低迷していた格闘技業界を見かねて「プロレスも(キャラクター性の高い)カードゲームだ」と唱え新日本プロレスを買収・業績をV字回復させた立役者だと聞けば興味が湧いてくるのではないだろうか。 そんなブシロードは設立10周年を迎え、5月5日から7日までの3日間、東京ビッグサイトで「ブシロード10周年祭」を開催。41,459名が来場したこのイベントでは、各ゲームの大会やフリーで対戦できるスペースのほか、アニメ版の声優たちによるトークショーやライブステージ、関連グッズの販売などが行われた。
再び最盛期を迎えつつあるTCG市場。熱狂的なプレイヤーたちにとって、ここにはどんな魅力があるのだろうか。イベント参加者に話を聞いてまわった。
取材・文:杉山大祐/ノオト 編集:新見直
ほかに理由として多かったきっかけは、やはり「アニメの影響」だ。現在、テレビ愛知・テレビ東京系全国ネットでテレビアニメ『フューチャーカード バディファイト バッツ』が放送されており、「作品をより楽しむためにゲームのルールを覚えた」と答えたプレイヤーが大半だった。
90年代の「爆走兄弟レッツ&ゴー!!」や2000年代の「爆転シュート ベイブレード」、最近では「妖怪ウォッチ」が記憶に新しいだろう。このように、漫画やアニメを使ったメディアミックスが功を奏しており、ブシロード作品もこの例に漏れない。
日本語が苦手と笑いながらインタビューに応じてくれたニコラスさんも、その一人だ。日本の大学に留学するため、アメリカから来た彼がヴァンガードを始めたのは2年前の29歳の時。本作は英語版も販売しているが、あえて日本語版を使っている。イベントに来た理由は「カード仲間を増やすため」だという。フリーの対戦スペースで積極的にバトルに挑む姿が印象的だった。 ほかにも、カップルで来場していたのは、22歳の小倉さん、23歳の丸尾さん。共通点が欲しいからと、小倉さんが丸尾さんを誘う形で「ヴァイスシュヴァルツ」を始めたという。当初はTCGを敬遠していた丸尾さんだが、小倉さんからカードの題材となるアニメを勧められた結果、好きなキャラクターを見つけ、そのキャラクターのカードをデッキに組み込む楽しさを覚えたそうだ。実はこんなきっかけでTCGにハマる人は珍しくない。
イベントでは、特に「ヴァンガード」などは、100人規模の女性専用対戦スペースが常時埋まるほど活況だった。そのうちの数人にゲームを始めたきっかけを聞いたところ、丸尾さんのように彼氏の影響で始めた人も少なくないようだ。
失礼な話、「カードゲーム」と聞くと、コアなプレイヤーが多く、「相当ニッチなオタク趣味」という印象を抱いていたのは筆者だけだろうか? イベントではオタクだけではなく、一見TCGプレイヤーと思えない“リア充”な人も見受けられた。この点がイベントに来て、一番驚いた点かもしれない。
まず圧倒されたのは、会場に集まるプレイヤーの数だ。小学生から30代まで幅広い年齢層のプレイヤーがカードゲームの対戦のために、かなりの人数が集まるのだ。
もちろん他のゲームイベントである東京ゲームショウなどと比較すると規模は小さいが、1社だけが主催するイベントとしては、来場者数4万人というのはかなりのものだろう。
また、来場するプレイヤーたちのガチンコ具合は、他のゲームイベントを上回るものを感じた。ただ対戦を見に来るだけでなく、自分が対戦し勝ちを狙いに行くプレイヤーがここまで集まるイベントは、e-Sportsイベントでも滅多に見られないのではないだろうか。もちろん実力の差は上位から下位までさまざまだろうが、来ている人間の大半がプレイヤーというのは珍しい。 10年という時間は、子供の頃から熱中し続けてきたプレイヤーが大人になるには十分な年月だ。大人になっても楽しめるTCGの懐の深さも感じた。
親子でも楽しむことができる「バディファイト」、アニメ人気で女性プレイヤーも多い「ヴァンガード」、様々なアニメやゲーム作品が参戦している異種格闘キャラクターカードゲーム「ヴァイスシュバルツ」……抱えているTCGの多様性とイベントの熱気が、国産TCGを広めてきたブシロードの10年という歩みを物語っている。
TCG市場はこれからもファンの裾野を広げ、プレイヤーを集め続けていくのだろうか。最近では『ハースストーン』や『シャドウバース』など、e-Sportsの一競技としてシーンに新しい風を巻き起こしているデジタルカードゲームばかりに注目していたが、会場の熱気を目の当たりにすると、これからのTCGにも目が離せなくなった。
特集の記事の一覧は特設ページから。続々更新していきますので、ご期待下さい!!
2011年は、ゲーム業界で言うと、PlayStation VITAとニンテンドー3DSが発売された年で、ファミ通調べでは家庭用ゲーム機の市場規模は4,543億円。それと比べるとやや小ぶりな印象だが、1パックあたり150~500円という単価を考えると、カード枚数としてはかなり普及していたことがわかる。
TCG市場はその後、やや緩やかな減少傾向となったと言われているものの、徐々に持ち直し、2015年には962億円を記録。ここに来て、再び最盛期の兆しが見えてきた。
これはメーカーや関連企業各社が健闘した結果と言えるだろうが、中でも、ここ10年で『ヴァイスシュヴァルツ』『カードファイト!! ヴァンガード』(以下『ヴァンガード』)『フューチャーカード バディファイト』(以下『バディファイト』)など、ヒットタイトルを生み出し続けているブシロードの功績も大きいのではないだろうか。
ブシロードは、カードだけではなくアニメといったメディアミックス展開に力を入れ、タイトルの知名度やTCGの裾野を広げ続けてきた存在だ。
ピンと来ない読者でも、ブシロードを設立した社長の木谷高明氏が、低迷していた格闘技業界を見かねて「プロレスも(キャラクター性の高い)カードゲームだ」と唱え新日本プロレスを買収・業績をV字回復させた立役者だと聞けば興味が湧いてくるのではないだろうか。 そんなブシロードは設立10周年を迎え、5月5日から7日までの3日間、東京ビッグサイトで「ブシロード10周年祭」を開催。41,459名が来場したこのイベントでは、各ゲームの大会やフリーで対戦できるスペースのほか、アニメ版の声優たちによるトークショーやライブステージ、関連グッズの販売などが行われた。
再び最盛期を迎えつつあるTCG市場。熱狂的なプレイヤーたちにとって、ここにはどんな魅力があるのだろうか。イベント参加者に話を聞いてまわった。
取材・文:杉山大祐/ノオト 編集:新見直
TCGの対戦に興じる子どもたち ゲームを始めるきっかけは?
会場入りしてまず目を引いたのは、TCGに興じる子どもとその親の姿だ。ブシロード作品のなかでも人気の高い「バディファイト」を遊ぶプレイヤーの年齢層は、小学校低学年~中学生あたりがメインだった。 ブシロードのスタッフとバディファイトで対戦していた小学3年生のユウキさん。母親いわく中学2年生の兄の影響で始めたという。同年代の友人よりは兄や年上の子と遊ぶことが多く、「いろいろな人と対戦できることが楽しい」と、はにかみながら答えてくれた。 また、「バディファイト歴は1年」と話すのは小学6年生のピロさん。弟が遊んでいるのを見て弟に勝ちたいと思い、ゲームを始めたそうだ。このほかにも、小学3年生から中学1年生の子に聞いてみたところ、兄弟・姉妹の影響で始めたプレイヤーが多く見られた。ほかに理由として多かったきっかけは、やはり「アニメの影響」だ。現在、テレビ愛知・テレビ東京系全国ネットでテレビアニメ『フューチャーカード バディファイト バッツ』が放送されており、「作品をより楽しむためにゲームのルールを覚えた」と答えたプレイヤーが大半だった。
90年代の「爆走兄弟レッツ&ゴー!!」や2000年代の「爆転シュート ベイブレード」、最近では「妖怪ウォッチ」が記憶に新しいだろう。このように、漫画やアニメを使ったメディアミックスが功を奏しており、ブシロード作品もこの例に漏れない。
TCGはオタクだけのものではない! 意外と“リア充”な大人プレイヤー
TCGが子どもだけの遊びかというと、もちろんそうではない。会場には、幅広い年齢層のプレイヤーの姿も。もちろん子どもの頃に始めたTCGを継続して遊んでいる人もいるのだろうが、大人になってから始めたという人も少なくない。日本語が苦手と笑いながらインタビューに応じてくれたニコラスさんも、その一人だ。日本の大学に留学するため、アメリカから来た彼がヴァンガードを始めたのは2年前の29歳の時。本作は英語版も販売しているが、あえて日本語版を使っている。イベントに来た理由は「カード仲間を増やすため」だという。フリーの対戦スペースで積極的にバトルに挑む姿が印象的だった。 ほかにも、カップルで来場していたのは、22歳の小倉さん、23歳の丸尾さん。共通点が欲しいからと、小倉さんが丸尾さんを誘う形で「ヴァイスシュヴァルツ」を始めたという。当初はTCGを敬遠していた丸尾さんだが、小倉さんからカードの題材となるアニメを勧められた結果、好きなキャラクターを見つけ、そのキャラクターのカードをデッキに組み込む楽しさを覚えたそうだ。実はこんなきっかけでTCGにハマる人は珍しくない。
イベントでは、特に「ヴァンガード」などは、100人規模の女性専用対戦スペースが常時埋まるほど活況だった。そのうちの数人にゲームを始めたきっかけを聞いたところ、丸尾さんのように彼氏の影響で始めた人も少なくないようだ。
失礼な話、「カードゲーム」と聞くと、コアなプレイヤーが多く、「相当ニッチなオタク趣味」という印象を抱いていたのは筆者だけだろうか? イベントではオタクだけではなく、一見TCGプレイヤーと思えない“リア充”な人も見受けられた。この点がイベントに来て、一番驚いた点かもしれない。
プレイヤー人口や年齢層の幅広さが、TCGの懐の深さ
普段テレビゲームやアナログゲームを遊び、「ゲーム好き」を公言する私がハマったと言えるTCGは、初期の「遊戯王オフィシャルカードゲーム」と「ポケモンカードゲーム」のみ。今回のイベントに参加できたことで恥ずかしながら、この分野についてはかなり不勉強だったことを痛感した。まず圧倒されたのは、会場に集まるプレイヤーの数だ。小学生から30代まで幅広い年齢層のプレイヤーがカードゲームの対戦のために、かなりの人数が集まるのだ。
もちろん他のゲームイベントである東京ゲームショウなどと比較すると規模は小さいが、1社だけが主催するイベントとしては、来場者数4万人というのはかなりのものだろう。
また、来場するプレイヤーたちのガチンコ具合は、他のゲームイベントを上回るものを感じた。ただ対戦を見に来るだけでなく、自分が対戦し勝ちを狙いに行くプレイヤーがここまで集まるイベントは、e-Sportsイベントでも滅多に見られないのではないだろうか。もちろん実力の差は上位から下位までさまざまだろうが、来ている人間の大半がプレイヤーというのは珍しい。 10年という時間は、子供の頃から熱中し続けてきたプレイヤーが大人になるには十分な年月だ。大人になっても楽しめるTCGの懐の深さも感じた。
親子でも楽しむことができる「バディファイト」、アニメ人気で女性プレイヤーも多い「ヴァンガード」、様々なアニメやゲーム作品が参戦している異種格闘キャラクターカードゲーム「ヴァイスシュバルツ」……抱えているTCGの多様性とイベントの熱気が、国産TCGを広めてきたブシロードの10年という歩みを物語っている。
TCG市場はこれからもファンの裾野を広げ、プレイヤーを集め続けていくのだろうか。最近では『ハースストーン』や『シャドウバース』など、e-Sportsの一競技としてシーンに新しい風を巻き起こしているデジタルカードゲームばかりに注目していたが、会場の熱気を目の当たりにすると、これからのTCGにも目が離せなくなった。
※写真は、個別で掲載許諾を得ています
特集「人生を変えるカードゲームの魔力」は今日からおよそ1ヶ月更新予定!
KAI-YOU.netが送る特集第一弾「人生を変えるカードゲームの魔力」は、5月29日からおよそ1ヶ月、様々な切り口から記事を更新予定です。特集の記事の一覧は特設ページから。続々更新していきますので、ご期待下さい!!
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杉山大祐
編集者、ライター
有限会社ノオト所属の編集者、ライター。企業のオウンドメディアの編集や執筆、SNS運用を担当。家庭用ゲーム機からPCゲーム、アーケード、アナログゲームまでをまんべんなく遊ぶ無類のゲーム好き。Twitter ID:@doku_sho
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