「nanaは代々木公園」
──そんな「nana」のメインユーザーはどういった人たちなのでしょう?文原 今、「nana」で一番多いユーザーは18歳以下の子たちです。22歳以下が全体の8割で、さらに全体の4割を占めているのは16〜18歳の高校生。また、女性が多く、全体の76%が女性ですね。
この年代が多い理由は、「nana」だとものすごく手軽に「歌ってみた」が出来るからだと思います。「nana」でたくさん歌われている曲を集計すると、ボーカロイド楽曲やアニソン系が上位に来ます。特にアーティストさんですと、実際に歌われている楽曲としては、若い人から支持を集めるHoneyWorksさんが圧倒的に多い。
ある意味ニコニコ動画がつくったと言える「歌ってみた」文化の延長線上に「nana」があることは、もちろん自覚しています。でも、さきほどのちるまさんの話にもありましたが、ニコニコで「歌ってみた」動画を投稿しようとすると、意外とハードルが高いんです。そんな中、スマホに歌えばアップできる手軽さが、若い子たちに受け入れてもらっているのかな、と思っています。CGM(Consumer Generated Media)で実際にコンテンツを投稿するユーザーは大体全体の5%以下といわれますが、「nana」はユーザーの6割近くが投稿経験者なんですよ。
ぽん その手軽さが、「nana」の一番の魅力だと思います。「nana」のユーザーさんは純粋に表現を楽しんでる人が多いですよね。私は、個人的に好きな80〜90年代のアニソンも投稿するんですけど、「知らなかったけど、聴いてみたら良い曲でした!」っていうコメントをくれたりします。楽しんで聴いてくれるのがわかって、すごく嬉しいです。でも、椎名林檎さんの『ここでキスして』をアップした時に「知らなかったけど、すごい良い!」ってコメントをもらった時は衝撃でした…。「そうか、もうこの名曲を知らない子がいるのか…」って(苦笑)。
──どんどん若い層が流入していることを象徴する話でもありますよね。「nana」のユーザーが増加したきっかけなどはありますか?
文原 2012年8月のローンチ時は鳴かず飛ばずでしたが、2013年末にAppStore上のアプリのサムネなどの見せ方を変更したら、新規DL数がそれまでの6倍くらいになりました。14年からどんどんユーザーさんが増えていき、15年のタイミングでは、モデルさんやニコニコ動画で有名な歌い手さんに使い始めていただいて、認知が広まってきましたね。
──ぽんさんは15年末から、ちるまさんは14年後半頃から「nana」を使われています。その間に、「nana」に起こった変化を感じることはありましたか?
ぽん 私はそこまで変化はわからないですけど…ランキング機能がなくなったのは、やっぱり純粋に表現を楽しんでいる人が多くて、「優劣をつけられるのが納得いかない」という声が増えているのかな、と思いました。
文原 実は、ランキングは過去2回実装しては取り下げるということをやっています。ランキングの扱いは非常に難しくて…格付けされることで上を目指す人もいれば、ランキングに載る人をやっかむ人たちもいます。中には、そういう人たちから批判的なコメントが来て傷ついてしまう…というパターンも見受けられました。だから、現時点ではその解決策が見つからないので、すごく悩みながらもランキングは掲載していません。
ちるま 僕はランキング掲載を目標にしていた時もありましたけど、ランキング実装と取り下げは、ユーザーとして見ていて「いろいろあるんだろうなぁ…」と思ってました(笑)。
「nana」の変化ですと、最近新しくできた「コミュニティ機能」や「プレイリスト」をTwitter上で公開する機能だったり、「nana」の外に出て、「nana」にある音楽を広められるようになった、というのが変わったところかな、と思いました。
──廣野ノブユキさんなど、「nana」をきっかけにメジャーデビューするアーティストも出てきました。今後、「nana」からアーティストを輩出するといった、外側への働きかけもしていくのでしょうか?
文原 「nana」のサービスを説明する時に、よく代々木公園を引き合いに出すんです。最初から上昇志向の人たちのための場所じゃなくて、カジュアルに楽器を持ち寄って遊んでいて、向こうを見たら同じような集団がいて、酔っ払って乗り込んだらその人たちとも友達になって…そうやって音楽の輪が広がっていく。そんなフラットでカジュアルな場所にしたいと思っています。
その中には、上昇志向を持つ人たちもいて、評価されてファンがついてくる。その時、本人が望むのであれば、そこから先に進む道もつくりたいと思っています。正直、最初はあまりイメージしていなかった部分ですが、最近そう思い始めました。
──プロとして、アーティスト活動をしたいのであれば、そのサポートも辞さないということですね。ちるまさんも、そうやって「nana」からもっと外に出よう! という感じなんですか?
ちるま いや、僕は逆です! 今、音源をニコニコ動画やYouTubeにもアップしているんですけど、それはニコニコ動画ユーザーが「nana」に来てくれないかなー、って思って投稿してるんですよね。
──「もっと代々木公園に人が増えれば良いな」ということなんですね。これまで、アーティストというと、何かしらのカリスマ性が必要とされていました。でも、「nana」はもっとカジュアルに音楽の輪を広げて、そこからプロになる人も出てきた。プロとして活動をしているぽんさんから見て、アーティストにカリスマ性は必要だと思いますか?
ぽん 今TwitterなどのSNSがすごく普及していて、アーティストの私生活が少し垣間見れたり、ちょっとやり取りが出来たりと、以前よりも心の距離が近くなっている時代だとは思います。でも、カリスマ性っていうのは、発信力、拡散力、人の心を動かす力だと思うので、それは絶対に必要だと思います。
ただ、心の距離は近くなっているけど、近すぎるのも難しいです。プロのアーティストとしては、その距離をちゃんと決めて活動していくのが大事かな、と。ただ、ちるまさんと“ちるさぽ”さんのような距離で、楽しみながら輪を広げていけるのは素敵なことだと思います。
──人の心を動かす力、というところで、ぽんさんはやはり歌でメッセージを伝えたいと思っている?
ぽん ORESAMAのオリジナル楽曲だったら、「自分の気持ちを聞いてほしい」というのはあります。「nana」の場合、ほかの方の歌を歌わせていただくので、「この歌と自分がどう向き合うか?」というのは結構考えますね。どうしたらこの曲が伝わるのか、この切なさをどうしたらいいのか…そういった曲のメッセージを、ブレスを多めにしたり、声を張ってとか、自分なりの表現法で伝えられたら、と思っています。
社長直々にORESAMAへオファーした「nana SPECIAL LIVE」
──8月11日には、nanaミュージック主催のライブイベント「nana SPECIAL LIVE presented by nana × 2.5D」が行われます。昨年8月に行われて1000人を集めた参加型フェス「みんなでつくる音楽祭nanaフェス」に続いてのものですよね?文原 いえ、今回のライブ「nana SPECIAL LIVE presented by nana × 2.5D」は、去年の「みんなでつくる音楽祭nanaフェス」とは全然別のものなんです。
「nana」を通じて音楽仲間が出来たとき、みんなやっぱり「リアルで音楽をやりたい」ということになる。実際の音圧を感じながら音楽をやる楽しさは格別のものですからね。去年の「みんなでつくる音楽祭! nanaフェス」は、そういった流れを応援する形で“みんなでつくる文化祭”の場所ができないかな、と考えた企画です。(会場となった)品川のステラボールを借りるということは、nana musicが法人だからこそ取れるリスクでもある。それに、初めてのライブがステラボールや武道館っていうのも面白いかな、って(笑)。
そして、今回の「nana SPECIAL LIVE presented by nana × 2.5D」は文化祭というよりライブです。先ほど言ったように、「nana」の中でも上を目指す人たちがたくさん出てきている。そういった人を応援すると共に、ストレートにライブを見せることで、「私も舞台に立ちたい。あの人みたいになりたい」というふうに思ってもらえたらいいな、と考えました。そこで、「nana」で大人気のHoneyWorksさんに加え、「nana」コミュニティ発の廣野ノブユキさん、そして、ぽんさんの所属するORESAMAにも出ていただきます。
特に、僕はぽんさんが「nana」で書かれたブログを拝見して、その音楽に対する姿勢に非常に感銘を受けたんですね。
ぽん オファーがあった時は、本当にびっくりしました。「nana」を始めた時、私は本当に、ただ歌いたくて始めただけだったので。でも、毎日投稿を続けていくことで、こんなことにつながっていくんだ、意味があったんだな、って思います。
「nana」でも曲を歌わせていただいたこともあるHoneyWorksさんと一緒に歌えるなんて…!
「孤独のない世界」に救われた
──今回、「nana SPECIAL LIVE presented by nana × 2.5D」でお披露目される新曲「ねえ、神様?」もあるそうですね。ぽん 新曲については、「nana」のブログを読んでいただいたみなさんから予想以上に温かいコメントをもらって、この気持ちをどうしても形に残したいと思ったんです。それで、小島くんに相談して、曲をつくってもらいました。最初に歌詞を書いて、それをベースに曲をつくって…そんな時に、「nana SPECIAL LIVE presented by nana × 2.5D」に呼んでいただいたので、そこで披露する形になったんです。開催までに、デモ版をnanaに投稿したいなと思っています。
※8月1日、ぽんさんのnanaアカウントにて、「ねえ、神様?」の90秒デモverが投稿された
ORESAMAの曲作りは、普段は小島くんのつくる楽曲が先にあって、それに詞を載っけていきます。でも、今回はどうしても私がつくりたかったので、先に詞を書くというORESAMA史上初めての試みをしました。ORESAMAらしくポップですが、私の「歌を聴いてほしい」という欲求とかフラストレーションも全部詰め込んだ曲になっています。
「nana」を使い始めてからの7カ月間で、歌い方のバリエーションもすごい増えましたね。ブレスを意識したり、声だけで出来る限りの可愛さを出したり…そういう幅の広がりも、活動に反映できているかな。
文原 新曲の「ねえ、神様?」を聴いて、めちゃくちゃ嬉しかったんですよ。勝手に僕を投影してしまって申し訳ないのですが、僕はそもそもコミュニケーションがそんなに得意じゃなかった。友達がいないことはないけど、学生時代は斜に構えて自分の空間から全然出てこれなかった。そんな時、インターネットが僕を外に出してくれました。
ぽんさんにとっての「nana」という存在は、僕の場合はTwitterでした。僕は「『nana』というサービスをやりたい!」と発信したのをきっかけに、Twitter経由でエンジニアや協力者と出会うことになります。Twitterの知人を頼って、いきなり関西から上京してシェアハウスに泊まって、それで友人や一緒に「nana」をつくってくれる人とつながることができた。本当に狭かった自分の空間から、一気に世界が広がる経験があったんです。「ねえ、神様?」の歌詞を聴いて、そういったことを思い出して、すごい嬉しかったです。
ちるま 「nana」のアプリを起動した時に、この曲が流れてほしいですね!
──「nana SPECIAL LIVE presented by nana × 2.5D」も期待しています。最後に、お二人から改めて「nana」の魅力を教えてください。
ちるま 魅力しかないですよ! どれだけ「nana」に支えられたか。僕も、応援してくれる人や一緒に制作出来る仲間は「nana」で集まりました。今回みたいに、文原社長やぽんさんともお話しできている。「音楽でつながる」ことができたのは「nana」が初めてで、これからももっと音楽の輪が広がっていく、すごい楽しみなアプリだな、と思います。
ぽん やっぱり、歌や演奏、声劇、ラジオだったり…声を使って手軽に自己表現やコミュニケーションをすることができるできるのが、「nana」の一番の魅力だと思います。
それと、私にとっての救世主というか…。プロで活動していると、歌が上手いのは当たり前で、何をどうやって表現をするのか? みたいな部分に頭がいってしまう。でも、「nana」に寄せていただける「キレイです!」「上手いです!」みたいな純粋な感想を読むと嬉しくて、「やっぱり私は歌が好きだ」ということを「nana」が思い出させてくれました。
──「nana」に救われた、支えられているという意味では、まさにお2人とも「孤独がない世界」というコンセプトを体感されたということですね。みなさん本日はありがとうございました!
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イベント情報
nana SPECIAL LIVE presented by nana × 2.5D
- 日程
- 2016年8月11日(木 )
- 時間
- OPEN16:00/START17:00
- 会場
- Zepp ダイバーシティ東京
- チケット
- OFFICIAL HP先行予約:7月11日(月)17:00より開始
- 先行販売:7月19日(火)より開始/一般発売:7月30日(土)より開始
- 料金
- 前売券:4,000円(税込)/当日券:5,000円(税込)
- 出演者
- HoneyWorks/CHiCO with HoneyWorks/sana/WHITE JAM
- /ORESAMA/廣野ノブユキ...and more
- 主催
- 株式会社nana music
- 制作協力
- 株式会社THINKR/株式会社インクストゥエンター
- イベント特設サイト
- http://nana-live.com/ (外部リンク)
- 問い合わせ先
- live@nana-music.com
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