渋谷慶一郎+初音ミクによるオペラ「THE END」東京公演フォトレポート

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渋谷慶一郎+初音ミクによるオペラ「THE END」東京公演フォトレポート
渋谷慶一郎+初音ミクによるオペラ「THE END」東京公演フォトレポート

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5月24日(金)、東京・渋谷のBunkamura オーチャードホールで行われた、ボーカロイド・オペラ「THE END」の東京公演を、KAI-YOU.net編集部で観賞してきました。

オペラ「THE END」は、人間の歌手やオーケストラが存在しない、世界初のボーカロイド・オペラのプロジェクトです。主演に初音ミクが迎えられたことや、音楽家/アーティストの渋谷慶一郎さん、演出家/演劇作家の岡田利規さん、映像作家のYKBXさんをはじめとした、豪華クリエイター陣によって制作されたこと、ミクの衣装をルイ・ヴィトンのアーティスティック・ディレクター、マーク・ジェイコブスさんが手がけたことなどで、あらゆる角度から注目を集めました。

初演は2012年12月に山口のYCAM(山口情報芸術センター)で行われましたが、舞台をオーチャードホールに移した東京公演では、さらに拡大された会場に合わせ、映像や音響もアップデートされています。また、内容だけではなく、客層にも変化はあったでしょう。会場には、初音ミクが好きな人、オペラが好きな人、初音ミクを知らない人、オペラを知らない人……本当に色々な方がいらっしゃっていたと思います。私たちが観賞したのは東京公演最終日で、すでにプレビュー公演と一般公演の2回が上演済み。観賞後の感想はWeb上にたくさんアップされ、賛否両論が飛び交っていました。

そんな東京公演の手応えについて、公演終了直後の渋谷慶一郎さんに突撃インタビューを決行。コメントをいただきました!
渋谷慶一郎さん:東京は手応えはありました。賛否両論が起きているのもすごく良い感じ。

「作品が成長していく」ってよく言うけど、場所が変われば響きも変わる。YCAMもオーチャードホールも全然違うけど、それぞれ音が良い劇場なのでその変化に付き合うのが面白い。

あと素晴らしいスタッフと作っているから予想しない方向に作品が進化していくのを、舵を取って制御している感覚はあります。未知の動物に乗ってどこかに向かっているような感じ。


「THE END」とは

それではここから、気になる舞台の内容を、写真と共にご紹介します。
(写真はすべて、撮影:新津保建秀 / Bunkamuraオーチャードホール)

オーチャードホールに舞台を移し、再構成された「THE END」。そこには、数十台のスピーカーで構成された10.2チャンネルのサラウンド音響と、1万ルーメンを超える高解像度プロジェクター7台を使ってマルチスクリーンに映し出される立体映像が。

スクリーンは手前と奥、左右の4枚で構成されていて、大迫力の立体感を生み出します。初めての映像体験でした。

本来ならば背景として使われる映像が手前にあるという不思議な感覚も体験しました。

舞台に出演しているのは、ミクと渋谷慶一郎さん。正面に向かって右側のブースの中から、渋谷さんが生で演奏されています。その音は劇場を揺らし、心臓に直接響いてきました。

このブースはただ音を奏でるためだけにあるのではなく、しっかりと視覚演出の一部になっています。

「THE END」で描かれるのは、文字通り〝終わり〟の物語。

ミクはこの舞台で「わたしは死ぬの?」と自問し、さまよいます。

「超生物」ドラゴンが現れたシーンは、どこか別世界に引きずり込まれるような感覚。

いよいよクライマックスが近づくと、ただひたすら涙が止まりませんでした。


「終わりはいくつある?」


公演終了後、劇団粋雅堂主宰で劇作家・舞台音響家の神田川雙陽さんにもコメントをいただくことができました。神田川さんは、「THE END」東京公演のプログラムブックではインタビュアー・構成で参加されており、また、YCAMでの公演から「THE END」を見続けてきた方です。
神田川雙陽さん:山口から東京へと場所は変わりましたが、「THE END」は、山口でも東京でも、ステージ毎にどんどん更新されている作品です。音も毎回良くなっていくし、映像も一晩のうちに変わっている。

生身の演者がいないという点で、リアルなオペラと一線を分けてしまう人は多いかもしれません。しかし、このステージはただスタートボタンを押す、というわかりやすいものではなく、人間の手が常に入り続けているから、やっぱり生のステージなんですよね。

だから何回でも観たくなるし、何より1回じゃ消化できない。何回も観た上で、自分なりの答えを見つけたいと思っています。私も、もう8回目です(笑)。


神田川さんが仰るとおり、この作品は1度観ただけでは理解しきれない、とても情報量の多い作品です。公演終了後の、観客の方々の困惑した表情が印象に残っています。かく言う私も、終了直後は放心状態でした。

物語のラストには「終わりはいくつある?」という言葉が出てきますが、この作品に対する答えは、いくつもあると思います。ただ、恐らく1度観ただけでは答えは出ません。正直なところ、いま書いている私自身もわかっていません。もしかしたら、何度見てもみつからないかもしれません。それでも、また観たいという気持ちははっきりとあります。何度でも観て、考えたくなる、そんな作品でした。

次の公演は、2013年11月13日・15日にフランス・パリのシャトレ座で行われます。パリでは一体どんな進化を遂げるのか、非常に楽しみです。残念ながら、今のところ日本での公演情報はありませんが、もし、また日本で上演される際には、ぜひ体験してみて下さい。

また、Bunkamuraのオンラインショップにて、6月24日(月)までの期間限定で、プログラムブックなどのオリジナルグッズが販売中です! 特にプログラムブックは読み応えがあり、オススメです。買いそびれてしまった方も、見逃してしまった方も、在庫はかなり少なくなっているようですので、お早めにチェックしてみて下さい!

文:たかはしさとみ
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