所属事務所は、きゃりーぱみゅぱみゅさんや中田ヤスタカさんら、国内ポップシーン/クラブシーンを牽引するASOBISYESTEM。音楽だけでなく、原宿を拠点に、人気の青文字系モデルを多数輩出するなど、カルチャーの先端をひた走る注目のASOBISYESTEMだが、中でもYun*chiさんは、どんな考えを抱いて活動している人なのだろうか。1stアルバムのリリースに際して、KAI-YOU.netでインタビューを敢行した。(取材・構成/米村智水)
デビューして1年2ヶ月、『Asterisk*』ができるまで
──まずはアルバム発売決定、おめでとうございます。デビューから1年、ライブイベントも精力的におこなわれ、楽曲も順調にリリースを重ね、その集大成となる作品になるわけですが、今作の『Asterisk*』というタイトルはどのような意味でつけられたのでしょうか?Yun*chi:誰かに磨かれて光る小さな原石という意味を込めています。Yun*chiという名前も、小さい頃から「ゆんち」って呼ばれていたので、それに*(アスタリスク)をつけてみました。だから、歌手としてデビューした1年をひっくるめたアルバム名になっていて、これまでの活動の中で出会った人や、自分の中で変わったことのすべてを一枚のアルバムにパッケージングした形です。アートディレクターの吉田ユニさんのジャケットデザインも、本をバラバラに散りばめています。それらが集まって1枚の『Asterisk*』というアルバムだというコンセプトです。 ──内容に関して、今作もそうですが、デビューから一貫してエレクトロ路線の楽曲を歌われていますね。
Yun*chi:クラブミュージックもですが、歌ものへの思い入れは強いです。特にエレクトロポップは専門学生の時にすでに周りで浸透していて、国内外を問わずにたくさん聴いていました。小さい頃には歌謡とかアイドルとか、モーニング娘。さんやマドンナさんのようなストレートな歌ものが大好きで聴き込んでいました。
デビューから1年と2ヶ月ほどですが、本当に目まぐるしく、いろんなことが変わりました。もともとは「価値観が違ったら仲良くなんかしなくていいよ」みたいな、ひねくれた性格で、基本的に外にもあんまり出なくて(笑)。そんな性格だから、デビューしても、「ソロだから一人でがんばらなきゃ」と思っていて……でも実はそうじゃないってことを多くの人に教えてもらった1年です。楽曲もライブも、一人では絶対にできなくて、たくさんの人が関わっている。そんな当たり前のことに気付かされました。
そういったこともあって、2ndシングルの「Shake you*」のころから「みんなで歌える曲」をつくろうと強く思っています。繰り返しのメロディや、覚えやすい振り付けとか、みんなで話し合いながら、ポップな作品をつくっていく中で、人間としても変わっていったと思います。
Yun*chi - Shake you*
様々なクリエイターとの繋がり
──アートワークを吉田ユニさん、楽曲ではlivetuneのkzさんやYU-SUKEさん、Avec Avecさんをはじめ、第一線で活躍される多くのクリエイター陣と作品を共作されていますが、特に思い入れのある楽曲はございますか?Yun*chi:どの楽曲にも本当にいろんな想いがあって、全部挙げたいくらいです(笑)。話すとめちゃくちゃ長くなってしまうから、特設サイト(http://yunchi.asobisystem.com/sp/)に1曲ごとの解説を書いているので、それは是非とも見てほしいですね!
ただ、kzさんに書いてもらったリード曲「Reverb*」は中でも忘れられない。kzさんのことは普段は「先生」って呼んでるんですが(笑)、実は先生とはデビューより前に出会っていて、いまでも聴くとその頃のがむしゃらさが伝わってきます(笑)。デビューライブの時の、右も左も知らない当時のことも思い出します。自分で聴くと、まだ声に堅い感じが残っているかなと感じます。
その「Reverb*」を経て、最新シングルの楽曲「Perfect days*」へと繋がっていきます。kzさんはYun*chiの昔の頑固なところを知ってくれています。私の成長を見てくれているkzさんだからこそ、生まれた楽曲なのだと思います。
Yun*chi - Reverb*
──kzさんとの楽曲では「Believe*」だけご自身で作詞をされていますね。Yun*chi:今回のアルバムでは「Believe*」が最も古い曲なのですが、kzさんと2人で話し合って、どんな歌詞にするかと決める時、「完璧じゃなくてもいいよ」と言いながらもkzさんから完全に任せていただけたのは嬉しかったです。
その頃の私は実際に経験したことしか書けなくて……。そんな思いから派生させたものだけで書いていました。どうしてかなって考えると、信頼できる人に、自分の中身をとにかく見てもらいたかったんだと思う。
私はアニメや映画が好きで、作品のストーリーを客観的に楽しむことができる。私にとっては曲も同じで、徐々にそういったストーリーを意識しながら、自分の考えを素直に伝えることができるようになりました。
──中でも怖いプロデューサーさんなどはいらっしゃいますか?
Yun*chi:いや、みんな優しいですよ! もちろん楽曲に関しては厳しくて、真剣で、熱のある素敵な方たちです。凄くパワーがあるし、私からは光に満ちているように見える(笑)。私が挙動不審だし、興奮すると何も見えなくなるから……みんながしっかり支えてくれています。
レコーディングの時も、導いてくれて。例えば「Love*you」はバラードで、今までで一番音数がすくなくて、ボーカルがはっきり聞こえる曲です。声が前面に出ているから、自分の表現力、声一つで楽曲のイメージが変わる。最初は自信がなくて「私にはハードルが高すぎて歌えないかも」と思ったけれど、「悩み事を抱えつつも、多幸感のある感じの曲にしたいと」いう私の要望に応えて、プロデューサーのHUMさんが表情や歌唱の仕方にアドバイスをくれて、しっかり歌うことができました。
みんなに生かされている「Yun*chi」という存在
──アルバムのリリースパーティーを秋葉原MOGRAで行なうのは、何か理由はあるのでしょうか。文脈を持つ場所ですし、ポップスのアーティストとして、めずらしい選択肢だと思います。 Yun*chi:MOGRAは私にとって特別な場所なんです。「Believe*」ができる前、友達のDJさんと曲をつくっていた時期があって。まだ2〜3曲しかなかったのに、どうしても人前で歌いたいと思っていたら、Bunkai-Kei recordsを主宰されているVJのyakoさんに忘年会イベントみたいなものに誘っていただけたんです。それが人生初ライブでした。本当に何も分からない状態だったから、「リハって何するの!?」みたいな、初心者感丸出しで行ったんですが。それでも、みんなが優しくマイクのチェックや、モニターやスピーカーの出音とかを確認するんだよって教えてくれたり。その時にkzさんに挨拶させてもらって、歌を聴いてもらったんです。自分が出たのはノンジャンルのミックスイベントでしたが、ずっとアニメも見ていたし、音楽も大好きで、MOGRAには出会うべくして出会ったと思っています。
影響を与えてくれた人や場所はたくさんあるけど、そんな経緯で「Believe*」が生まれて、クリエイターさんとの繋がりもMOGRAから拡がっていきました。あの狭い階段でいろんなことを話しましたね(笑)。
──1stアルバムのリリースは、これまでの集大成でもあり、同時に最初の一歩だという部分も強いと思います。今後Yun*chiさんはどんな進化や変化を目指されていくのでしょうか。
Yun*chi:みんなの理想のYun*chi像というものがあって、それを一つ一つ実現させていきたいなと考えています。あとは「キラキラの歌声」と評されるのは嬉しくて、今後もキラキラはキーワードになっていくかも。曲数が増えてきたことで、チームの繋がりも強くなって、Yun*chiの個性も磨かれてきたと思います。
ジャケットのデザインをされている吉田ユニさんとも、通じるものが増えてきて、今回のアートワークのコンセプトもとても気に入っています。Yun*chiを知ってほしい、というみんなの気持ちに支えられて、Yun*chiは生きています。クリエイターさんだけでなく、ライブでのお客さんの反応が良くなったり、振り付けを覚えてくれたり、そういった多くの人の受け応えの一つ一つで私は構成されているんだなと思っています。みんなに知ってもらって、聴いてもらう人が増えていくことで、Yun*chiはこれからもどんどん変わっていく。
その度にみんなをビックリさせられたら良いですね。自分はやりたいことがたくさんありすぎて、夢もたくさんあって。曲調も打ち込みの中でも、AvecAvecさんに編曲してもらった「dual*」ではトラップに挑戦したり、幅の広さを見せられるようになってきました。
ビジュアル面では、MVの衣装の露出が高すぎるんじゃないかとか言われたけど(笑)、写真家のJulie Wataiさんの写真集『はーどうぇあ・がーるず』(http://hardwaregirls.jp/)などでグラビアもやっていたので、Yun*chiの一つの側面として見ていただけると嬉しいです。あんまりここで言っちゃうとビックリさせられなくなっちゃうかもしれませんが(笑)。
Yun*chi - Perfect days*
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Yun*chi
歌手
幼少期より両親の影響でボーカリストになることに憧れ、日々の生活の中で音楽に触れて育つ。印象的な声とキャラクターにも定評があり、デビュー前からlivetuneをはじめ様々なアーティストのコンピレーションアルバム等にボーカリストとして参加するようになる。アーティスト活動と同じくJulieWatai の作品集『はーどうぇあ・がーるず』にはモデルとしても参加。その後も「ちんかめ」「VANQUISH VENUS」など様々なモデルを経験。2012年11月のメジャーデビュー発表時にYahoo!急上昇アクセスランキング2位(9/14)、同年ナタリー「2012年今年はこんな感じでした」人気の画像1位、ニュース年間アクセスランキング3位になるなど注目を浴びる。デビューミニアルバムのリード曲「Reverb*」は全国FMラジオ局パワープレイ30 局 を獲得。2013年、ロンドンで開催された「HYPER JAPAN」に参加。そのパフォーマンスは、海外でも高く評価された。またデビューミニアルバム「Yun*chi」が「ミュージック・ジャケット大賞2013」において「大賞」を受賞。独自のヴィジュアルと、天然の倍音を含む透き通った印象的な歌声は、日本から海外へと羽ばたく。
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