大きくなったイラストレーターの責任──“絵を担当しただけ”とは言えない

──たとえばキャラクターデザインの案件で、クライアントから求められるものと、ご自身の好みやフェチズムがズレてしまう場合には、どう折り合いをつけているのでしょうか?

イリヤ 『攻殻機動隊 SAC_2045』では、素子の前髪をぱっつん(水平に切り揃えたデザイン)にしようとしたら、毛束感を出して不揃いにしてほしいというオーダーをいただきました。

理由を確認すると、前髪が不揃いな方が、アクションのときに髪がどちらの方向へ流れて、どう戻るのかがわかりやすくなるんですよね。そうやって一つひとつの要素について話し合いながら、私のセンスに任せてもらえる部分と、監督が持っているイメージを、双方が納得できるところまで調整していきます。

イリヤさんによる『攻殻機動隊 SAC_2045 Art Cards Collection』

イリヤさんによる『攻殻機動隊 SAC_2045 Art Cards Collection』/画像はAmazonより

LAM 監督が求めるもの、ユーザーに届けたいもの、今の自分が描きたいもの。その3つが重なっている部分を探すのが、商業におけるキャラクターデザインの面白さですね。

それから、キャラクターデザインは仕事によってゴールが全然違います。たとえばVTuberをデザインしたときは、配信画面に映るバストアップの状態で目を引くか、覚えてもらいやすいかが重要です。

一方で、『テクノロイド』のような音楽やダンスパフォーマンスがある作品は、踊ったときにグループ全体の個性が際立ちながら、きちんと調和するか。案件ごとの要点の違いは意識しますね。

LAMさんがキャラクターデザインを担当したホロライブVTuberのクレイジー・オリー(Kureiji Ollie)さん

LAMさんがキャラクターデザインを担当したホロライブVTuberのクレイジー・オリー(Kureiji Ollie)さん

──キャラクターデザインなど、企画の初期段階から関わる仕事が増える中で、イラストレーター自身の名前が作品の宣伝になったり、ある種作品の「顔」になる機会も増えているように思います。仕事への向き合い方や責任感にも変化はありましたか?

LAM 時には作品の看板を任せていただくこともあるので、単に「絵を担当しただけです」とは言えない立場も増えました。

スタッフやクライアントと一緒に仕事をする以上、自分の発言や行動が作品に与える影響まで考える必要がある。そういう意味でも、キャリアを積むにつれて責任は大きくなったと思います。

イリヤ 私のもとに、「10年前にイリヤの絵を見て、自分もこういう絵を描きたいと思いました。それから描き続けて、ようやくプロになれました」というDMが届いたことがありました。

とても嬉しいですし、同時に、自分の作品が誰かの人生の選択に影響することの重みも感じます。だからこそ、自分が何を言うのか、何を描くのかを考えて、本当に伝えたいものを見せていきたいと思っています。

『ペルソナ』副島成記、ゴルチエ、鳥……双方が受けた影響

──お二人には、『ペルソナ』シリーズで知られるイラストレーター・副島成記さんから影響を受けたという共通点もあります。LAMさんは副島さんへの憧れからアトラスに入社し、イリヤさんも以前から『ペルソナ』のファンアートを数多く描かれていました。同じ作家に惹かれながら、影響を受けた部分には違いがありますか?

LAM 副島さんのキャラクターは、性別に関係なく色気があるところをリスペクトしています。

自分も、性別を問わず、セックスアピールとは少し違う、自然と醸し出される色気を意識するようになりました。描いているキャラクターに、自分自身がときめくかどうか。「この子が好きか」「描いていて楽しいか」ということを大切にしています。

『副島成記 ART WORKS 2004-2010』

『副島成記 ART WORKS 2004-2010』/画像はAmazonより

イリヤ 私は、たしか『ペルソナ4』ではじめて副島先生の絵を見ました。何十人もキャラクターがいて、同じ人がデザインしているとわかるのに、一人ひとりがきちんと個性的で、違って見えるところがすごい。顔や目の形、髪のテクスチャー、服の着方まで、すべて勉強になりました。

当時はロシアにいたので、アルバイトをして、eBayで副島先生が特集されている日本のゲーム雑誌や先生の画集を、日本で売られている倍くらいの値段で買っていたんです(笑)。宝物のように、隅から隅まで見ていました。日本語は読めなかったけれど、イラストを全部吸収しようとしていました。

それから、副島先生のスケッチに残っている黒い線。あのブラシのストロークも大好きで、「最高だな」と思いました。副島先生が使っているペイントソフトは、たしか「SAI」ですよね?

LAM そうだったと思います。今でも「SAI」を使っているんでしょうか?

イリヤ 最近アメリカでライブドローイングをされたときも、おそらく「SAI」で描いていらっしゃいました。あのブラシのタッチも大好きなんですよね。

──イラスト以外では、どんなものから影響を受けていますか?

LAM 街を歩いていて「あの人かっこいいな」「おしゃれだな」と思うこともありますし、MVや映画を見ていても感じます。自分が生きている世界には、ときめく要素を持った人や物がたくさんある。その魅力を、絵やキャラクターに落とし込めないかと常に考えています。

たとえば、最近影響を受けたのは舞台ですね。ファッションデザイナーのジャン=ポール・ゴルチエさんの『ファッション・フリーク・ショー』(2023年)には、人生が変わるくらい感動しました。

『ファッション・フリーク・ショー』告知映像

イリヤ 私も『ファッション・フリーク・ショー』は2回観に行きました。

LAM 本当ですか! 僕は、その後の再演も含めて8回くらい観たんですよ。

イリヤ すごい!

LAM 最初に観たのが千秋楽の前日で、ものすごく感動して、すぐに翌日のチケットを一番いい席で取ったんです。実際に観たら、感動で立てなくなってしまって。

空間や時間を通して、あれほど素晴らしい体験をもらえたことが、自分の中では大きかった。それが、個展「千客万雷」を考えるきっかけの一つにもなったんですよね。

LAMさんが開催した個展「千客万雷」

LAMさんが開催した個展「千客万雷」/写真はKAI-YOU編集部撮影

イリヤ 私も実際の人物や物事から、インスピレーションを受けることは多いですね。

私は鳥が大好きなんですが、くちばしの形を見ると、何を食べる鳥なのかがわかる。形からその生き物の生活が見えるところが、キャラクターデザインにも通じていて面白いですね。

LAM 絵を描くことが一番好きだったとしても、それとは別の引き出しに入っているものが、その人の個性や武器になっていきますよね。

イリヤ 日本に来て感動したのは、買い物に出るだけでも美しい景色に出会えることです。コンビニに向かう途中、水たまりに看板が映っているだけで、写真を撮りたくなる。

ロシアで日本のアニメを見ていた頃は「こんなにきれいな街はないだろう」と思っていたのに、実際に来てみたら、そのままの景色があった。その感動は今も消えません。

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イベント情報

NIGHT HIKE 2026 in 幕張

日程
2026年10月31日(土)・11月1日(日)
会場
幕張メッセ 9・11ホール(千葉県千葉市美浜区中瀬2-1)
時間
11:00開場/12:00開演/終演21:00頃を予定
ステージ
ホール9「HIKE STAGE」
ホール11「NIGHT STAGE」
ホール11「3M(MAKUHARI MEGA MIX)」
エスプラナード内「CULTURE STAGE」
主催
TRIBALCON.

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