ガレージキット自体がプラモデルに隣接した文化だったため、どうしても男性参加者の方が多かったこれまでの「ワンダーフェスティバル」(以下ワンフェス)。日本最大級の造形イベントとして愛されるワンフェス会場では、売られているキットのモチーフも美少女にメカに怪獣が大半、というのが長年の当たり前の光景だった。
しかし、近年デジタル造形ソフトの進化や版権元の理解の普及といった複合的な要因を背景に、「女性による女性のためのガレージキット」と呼べる作品が出現している。
そんなキットの中でも7月30日に開催された「ワンダーフェスティバル2017[夏]」ではとりわけエッジの立った作品を発見! それがピュアさとハードコアさが混じり合った、おげれつたなか先生によるBLコミック『ヤリチン☆ビッチ部』をモチーフにしたキット。 製作は、「オニギリ」という女性2人組のディーラー。インパクトのあるネタのチョイスと作品の魅力をいきいきと表現したフィギュアは、いかにして生まれたのだろうか。
取材・文:しげる 撮影・編集:新見直
ディーラーとしての活動開始の影には、伝説の「大雪のワンフェス」があったとMINさんは言う。
「フィギュア自体はもともと好きで、ワンフェスにもよく買い物に行ってたんです。で、2014年の冬ワンフェスもダイレクトパスまで用意して出かけたんですよ。そしたら大雪で入場がすごく遅れて。これじゃダイレクトパス買った意味ない! ってめっちゃ悔しかったんですよね。それで、少しでも早く会場入りできる手段として、出展側に回ったら必ず早く入れるじゃんと思った……というのがディーラー参加の理由です」
ディーラーパスがあれば早めに会場入りできる……というところまでは誰でも考えつくが、実際にキットをつくるところまでたどり着けるかは全く別問題。すごいバイタリティである。しかもその時点で造形の経験はゼロ。
「今も原型製作は3Dでやってるんですけど、最初は全く経験がなかったんで、本当にパソコンを用意するところから始めました。グラフィックボードなんかも、Quadroとはなんぞや、GeForceとはなんぞや……というのを間違いながらもちょっとずつ調べて、勉強して」
尊敬すべき熱量としか言いようがない……! そして初めてつくった作品が、『刀剣乱舞』(愛称は「とうらぶ」)三日月宗近の胸像だった。
「もともとニトロプラスさんの作品のファンで、とうらぶもサービス開始前から事前登録してまして。で、とうらぶが実際に始まった当日から2週間で一気に原型を仕上げて、Twitterに画像を上げたらけっこういろんな原型師さんやメーカーさんから反応をいただけました。多分とうらぶ関係の立体物としては最速だったと思います」
今やワンフェスでも、プロアマ問わず多数のフィギュアや関連グッズが見られるようになった『刀剣乱舞』。そのフロントランナーはMINさんだったのである。以降コンスタントにワンフェスに出展。今回で通算5回目になるという。
「今回のはもう原作が好きだからそのままつくった、としか言いようがないフィギュアですね。ワンフェスってニッチで、知らない人が見たら全然わからないような物を売っていい場所だと思うんです」
まさにワンフェス主催の海洋堂が提唱する"ガレージキットスピリッツ"そのもの! 一見際どいネタのフィギュアでも、その中には至極真っ当な「この作品が好きで好きで仕方ない」という熱量が込められている。
「ゆくゆくは女性向けで8ホール(ワンフェス一般ブースにおける18禁ゾーンがあるエリア。身分証がないと入れない)に行きたいんですけど、悩んでるんですよね……。次につくりたいものがギリギリ(18禁)になりそうなんですけど、今まで女性向けで18禁のフィギュアってほぼ見たことがないので」
確かにワンフェスの18禁ゾーンで販売されているキットは、圧倒的に男性向けが多い。そこで行われているのと同じくらい豊かな表現を、女性向けのフィギュアに持ち込む。それが今MINさんが目指していることだ。
「男性向けのフィギュアって、下着の部分とかでフェチ的なものを表現しているものが沢山あるじゃないですか。そういう部分を比較した時に、女性が食いつく表現が筋肉だけって思われてたりする現状はちがう気がするんですよね。女性向けでも男性向けと同じくらい過激で細分化された表現が求められている気がしていて。
女性が好きだろうと思われているような、ふわふわした可愛い感じみたいなのはやりたくないんです。あくまで狙ってやってるわけじゃなくて、自分がそういう表現が好きっていうのが一番大きいんですけど」 豊かなバイタリティと熱意を持ち、前人未到の「フィギュアによるBL」という表現に乗り出す"オニギリ"。その活動はフィギュアの世界を多様化し、豊かにすることに直結している。 見逃せない今後の活動は、Webサイト(外部リンク)とTwitter(外部リンク)でチェックしていただきたい。
しかし、近年デジタル造形ソフトの進化や版権元の理解の普及といった複合的な要因を背景に、「女性による女性のためのガレージキット」と呼べる作品が出現している。
そんなキットの中でも7月30日に開催された「ワンダーフェスティバル2017[夏]」ではとりわけエッジの立った作品を発見! それがピュアさとハードコアさが混じり合った、おげれつたなか先生によるBLコミック『ヤリチン☆ビッチ部』をモチーフにしたキット。 製作は、「オニギリ」という女性2人組のディーラー。インパクトのあるネタのチョイスと作品の魅力をいきいきと表現したフィギュアは、いかにして生まれたのだろうか。
取材・文:しげる 撮影・編集:新見直
2年前から活動開始、まずはパソコンから用意した
ガレージキットディーラー「オニギリ」は造形担当のMINさんと企画担当のZEROさんの2人組で、2015年から活動を開始。今回は造形や完成見本の塗装を担当するMINさんにお話をうかがった。ディーラーとしての活動開始の影には、伝説の「大雪のワンフェス」があったとMINさんは言う。
「フィギュア自体はもともと好きで、ワンフェスにもよく買い物に行ってたんです。で、2014年の冬ワンフェスもダイレクトパスまで用意して出かけたんですよ。そしたら大雪で入場がすごく遅れて。これじゃダイレクトパス買った意味ない! ってめっちゃ悔しかったんですよね。それで、少しでも早く会場入りできる手段として、出展側に回ったら必ず早く入れるじゃんと思った……というのがディーラー参加の理由です」
ディーラーパスがあれば早めに会場入りできる……というところまでは誰でも考えつくが、実際にキットをつくるところまでたどり着けるかは全く別問題。すごいバイタリティである。しかもその時点で造形の経験はゼロ。
「今も原型製作は3Dでやってるんですけど、最初は全く経験がなかったんで、本当にパソコンを用意するところから始めました。グラフィックボードなんかも、Quadroとはなんぞや、GeForceとはなんぞや……というのを間違いながらもちょっとずつ調べて、勉強して」
尊敬すべき熱量としか言いようがない……! そして初めてつくった作品が、『刀剣乱舞』(愛称は「とうらぶ」)三日月宗近の胸像だった。
「もともとニトロプラスさんの作品のファンで、とうらぶもサービス開始前から事前登録してまして。で、とうらぶが実際に始まった当日から2週間で一気に原型を仕上げて、Twitterに画像を上げたらけっこういろんな原型師さんやメーカーさんから反応をいただけました。多分とうらぶ関係の立体物としては最速だったと思います」
今やワンフェスでも、プロアマ問わず多数のフィギュアや関連グッズが見られるようになった『刀剣乱舞』。そのフロントランナーはMINさんだったのである。以降コンスタントにワンフェスに出展。今回で通算5回目になるという。
「ワンフェスではニッチでいい」 超人気BL『ヤリチン☆ビッチ部』をフィギュアに
そして出品したのが、インパクトのあるタイトルで知られる人気BL漫画『ヤリチン☆ビッチ部』のフィギュア。モチーフにしたのは単行本に付属の冊子の表紙イラスト、というマニアックなネタ選定だ。「今回のはもう原作が好きだからそのままつくった、としか言いようがないフィギュアですね。ワンフェスってニッチで、知らない人が見たら全然わからないような物を売っていい場所だと思うんです」
「特にSNSが流行ってからはどのネタに人気があるかがすぐ可視化されちゃうから、人気のあるネタのキットがたくさん出るけど、自分はやっぱり『誰もやっていないけど好きで好きでしょうがない物』を立体化したい。とうらぶは今でももちろん好きですけど、今はもういろんな方がフィギュアをつくっているので私はもういいかな……と」WF2017夏で販売予定の「ヤリチン☆ビッチ部」より、(再販)胸像「百合くん」と(新作)胸像「たむ先輩」、「男子高校生、はじめての」より(再販)クマローと(新作)二見先輩と志馬ちゃんの版権許諾頂きました?ありがとうございます?現在、版元様に監修して頂き修正中です? pic.twitter.com/jKCh9REbAg
— オニギリ@6-32-09 (@onigiri_min) 2017年6月7日
まさにワンフェス主催の海洋堂が提唱する"ガレージキットスピリッツ"そのもの! 一見際どいネタのフィギュアでも、その中には至極真っ当な「この作品が好きで好きで仕方ない」という熱量が込められている。
野望は、女性向けで18禁ゾーンという未踏のエリア…!
そしてMINさんの今後の展望も熱い。「ゆくゆくは女性向けで8ホール(ワンフェス一般ブースにおける18禁ゾーンがあるエリア。身分証がないと入れない)に行きたいんですけど、悩んでるんですよね……。次につくりたいものがギリギリ(18禁)になりそうなんですけど、今まで女性向けで18禁のフィギュアってほぼ見たことがないので」
確かにワンフェスの18禁ゾーンで販売されているキットは、圧倒的に男性向けが多い。そこで行われているのと同じくらい豊かな表現を、女性向けのフィギュアに持ち込む。それが今MINさんが目指していることだ。
「男性向けのフィギュアって、下着の部分とかでフェチ的なものを表現しているものが沢山あるじゃないですか。そういう部分を比較した時に、女性が食いつく表現が筋肉だけって思われてたりする現状はちがう気がするんですよね。女性向けでも男性向けと同じくらい過激で細分化された表現が求められている気がしていて。
女性が好きだろうと思われているような、ふわふわした可愛い感じみたいなのはやりたくないんです。あくまで狙ってやってるわけじゃなくて、自分がそういう表現が好きっていうのが一番大きいんですけど」 豊かなバイタリティと熱意を持ち、前人未到の「フィギュアによるBL」という表現に乗り出す"オニギリ"。その活動はフィギュアの世界を多様化し、豊かにすることに直結している。 見逃せない今後の活動は、Webサイト(外部リンク)とTwitter(外部リンク)でチェックしていただきたい。
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