なぜ自分は選ぶ側ではなく、選ばれる側なのか?
──毎回Podcastに、女性を中心に寄せられるお悩みも切実で、みなさん大変な状況にいるんだなと実感します。
恭子さん その悩みは、ご自身でつくっているところもあると思うのですね。「選ばれる女性になりましょう」という言葉が一人歩きしていますが、わたくしからすると「なぜ選ばれないといけないの?」「なぜ自分が選ばないの? それが自分の人生でしょう?」と思うのですね。
宗教的に、日本では結婚しないといけないこともないですし、恋愛をしなきゃいけないわけじゃない。だから、そんな風なことに自分自身が縛られないでもいいのにと、わたくしはそう思います。
美香さん 「選ばれたい」という相談はけっこう多いのですね。ゲームの景品のように、それを獲りにいく側として考えるか、それとも獲られる景品側になって考えるかだと思うのです。その違いについて、姉がよく話しています。
恭子さん 人生をなぜご自身で選択しないのか、と考えればいいのですよ。ご自身の選択は、当然、ご自身の人生になる。もちろん、どうしても選択できないこともあると思いますが。
──どうしても選択できない状況を除いては、選ばれる側になって悩むよりも、人生同様、自分自身が選ぶのがいい、と。
恭子さん ご自身の力量で考え、それでも解決できなければ、もう放っておくしかないのです。そこまで言っていいと思います。
──ではお二人は、選択する側の視点にはいつから至ったのでしょうか?
恭子さん 「クレオパトラは、いつからクレオパトラになろうとしたのか?」と問いますか? 彼女は「自分はクレオパトラになろう」とは考えていなかったのじゃないかと思うのですね。
わたくしは『クレオパトラ』の映画を何度も見ました。クレオパトラは絨毯にくるまれて、時のローマ帝国の将軍であるシーザーのところに運ばれていったのですが、彼女はシーザーの前でごくごく普通のふるまいをした。それはきっと、シーザーにとっては新鮮だったと思います。その時もクレオパトラは「クレオパトラであろう」としたわけではないのじゃないかしら。そんな風にふるまえたのは、ただ自分として自信があったからだと思います。
──そうですね。ただ、生きているだけで自信がなくなってしまうような状況に陥ってしまう人もいるのかなと思ったりもします。
恭子さん 相談でも、もともと自信がないから悩んでいるというものが多いのですね。もちろん、コツンと殴られる、蹴られるとかそういうことがあったらそれはもう警察や弁護士案件です。そうではなく、もし否定されたり比べられたりしても、たった一人、ご自身がしっかりと堂々と立っていればいいのじゃないでしょうか。わたくしの場合も自分自身にまつわることを選択しているというだけで、決して「わたくしは自信があるのよ」と言っているわけではないのです。
ご招待されて海外でレッドカーペットを歩いた際に、海外のセレブリティが横に来て、「あなたたちはなんでそんなに自信があるの?」って言われることも多いのですが、自分では自信があると外に向けて公言しているわけではないのです。そうすると決まって驚かれるのですけれども(笑)。では「自信ってなあに?」と聞かれれば、自分自身の生き様すらもきちんと表現して歩くということじゃないかと、わたくしは勝手に思います。
美香さん これはあくまでも私たちの考えで、決してファンの方、読者の方に押し付けたりするつもりはないのです。
恭子さん そうです。それこそがわたくしたちの大切なポリシーで、わたくしたちの考えを絶対に人様には押し付けないということ。それは、人様の大切な場所に土足で踏み込まない、ということと同じだと思っています。
自分自身をよく知り、ベストフレンドになれるように
──お話をうかがっていると、お二人は、自分自身が何を求め、何を感じているかをよく知っているのだと思いました。それを知るのは、とても難しいことでもあります。
恭子さん そうでしょうか。自由で良いのだと思います。もちろん、責任と覚悟は必要ですが。
わたくしが出しているいくつもの著書の中でも、「ご自身とベストフレンドであることがとても大切で、その後にご自身以外のベストフレンドができるはず」と書いているのです。
美香さん その通りだと思います。姉は、私にとってはすべてにおいて完璧で、ただ「私はそうではない」ということを自分でわかってるのですね。姉に言われて何かをクリアしたり、いろんなことに挑戦したりと積み重ねをすることによって、自信というものではないかもしれないのですけど、「できないかもしれない」と思ってしまうことがなくなりました。
後ろを向かずに、どうやったらできるかを考えながらやっていくと、「自分にもできるんだ」という達成感が得られるようになるものです。そのことが自信に繋がるということを、姉のおかげで知ることができたし、経験できるようになりました。
恭子さん 美香さんにはいつも、「あなた以外に、あなたよりもできる人がいると思っているの?」と問いかけています。その答えを探しているうちに、今の美香さん自身を知るきっかけとなるのではないかしら。
美香さん 例えばPodcastをやっていて、人に何かを伝えることが難しいと思うときがあるのです。そこで伝えたいことを何度も何度も書いて、それを暗記するくらいしゃべることで、人に伝えることが少しずつできるようになりました。
姉が言うには、「野球選手であっても、素振りを100回するのと1000回するのとでは違うのよ」と。そういう感覚で、「ここまでやってるのだからできる」と自分でも思えるようになりました。
伝えないといけないことがたくさんあるとどうしても早口になってしまうこともあるのですけど、そんなときは姉から「美香さん、早口すぎるわ」とたしなめられます。姉に気付かせてもらうことは、本当にたくさんあります。
──自分自身が伝えたいことを何度も文字にし、言葉にすることで、自分自身を知っていく。美香さんはそうしてご自分自身を知り、それが自信に繋がっているんですね。
恭子さん ただ、美香さんは当初、ちょっと噛んでしまったり言い間違えたりした際に、「どうしよう、ちゃんとした番組なのに」となることがあって、わたくしは、「美香さん、間違ってもいいのよ、もっと自由に、もっとしたいように」と伝えました。
そうやって思い詰めてお話ししていることすらが、あの番組のメッセージとして違うのじゃないの、と思うのです。
先ほど美香さんが話してくれた通り、わたくしは台本を読まないで、いつも思ったままに話しているのですね。Podcastに限らずいろんなところであるがままの自分を出しているだけなのです。
対話やビジネスを始めるときに、「僕は社長だよ」とかそういうことをおっしゃる方がいるのです。たとえ国王であっても、どんな偉い方でも、どこかの先生でも、そうは言ったってみんな同じ人間でしょうとわたくしは思っているのです。だからわたくしがありのまま、人間と人間の対話としてお話しするので、余計に誇示してしまうのかもしれません。
ですが、そういう方はある意味では弱いのです。その肩書きや実績のようなものを一番の武器にしているのかもしれませんが、その刀はもう錆びてしまっていると、わたくしは思います。時代は、目まぐるしく変わっているのです。
──恭子さんのしばしば口にされる「自由に生きる」というのも、つまり虚飾を誇示せず、自分を良く知って生きるということなんでしょうか。
美香さん そうですね。ただ、叶のポリシーとしては、その中には責任と覚悟は必要だという前提をしっかりと持っていまして、それを崩さない中での自由なのです。
恭子さん それは大事なことだと思います。
美香さん 自由に生きる、あるがままに生きるとは、そういうことだと考えています。
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