山頂の景色を見せるか、想像させるか──わいわいが考える動画と生配信の違い
──「皆と同じものをつくらない」という部分に、わいわいさんの職人魂が垣間見えますね。
わいわい あとは、動画と生放送のどちらかで見せ方も変わります。登山で言うなら、山を登った後「頂上から気持ちよく景色を見渡す」のが動画です。
しんどい思いをして山を登ってる過程なんて見せる必要はなくて、美味しいところばっかり撮る。極端な話、コンマ1秒まで全部のシーンが面白くないといけないんです。
──では、生放送の場合はいかがでしょうか?
わいわい さっきとは逆に、「山を登る過程」を楽しむのが配信ですね。これは僕の考えですけど、生放送って面白くない時間が絶対にあるんですよ。その面白くない時間も視聴者と共有して、ゴールに到達する感覚を一緒に味わう。
テレビ番組みたいに、耳寂しくないよう、目的が無くてもとりあえずつけておくような感覚。そこが動画との違いですかね。
『スト6』の大会はなぜ、人を惹きつけるのか?
──そうなると、わいわいさんもプレイされている『ストリートファイター6』などのランクマッチの配信は、見せ場を作る上で難しい部分もあるのでしょうか?
わいわい ただ単にランクマッチをこなすだけの配信は難しいと思います。かなり変わったことが起こるとか、ものすごい饒舌に喋ることができるなら話は別だと思いますけど。
だから僕も裏では練習するけれど、わざわざ配信でやることはあんまりないですね。だって、同じことが延々続いても見ていて「面白い!」とは思わないでしょう?
──ストリーマー大会などがあると、普段のランク配信にも通常より視聴者が集まってくる印象を受けます。
わいわい 『スト6』の場合、大会があると普段のランク配信や練習も意味を持つようになるんですよね。
わいわい 要するに視聴者は、僕達が練習している光景を画面越しに見て、「もっと先で起こるかもしれない感動」に期待してると思うんです。
スクリムとか練習期間で視聴者と配信者が結束を強めて、本番でそれまで培ったものが爆発する……みたいな。
スポーツの世界大会を皆で応援するのと同じで、色んな壁にぶつかったけれど、最後は「よく頑張った」で終わる。あの一体感が良いんでしょうね。
CRカップで経験した挫折「どうしても喋ることができなかった」
──配信で言えば、わいわいさんは2022年より「CR」のストリーマー部門へ所属されています。活動に変化は生じましたか?
わいわい CRに所属したのはご縁があってのことですけど、これまでの活動スタイルが劇的に変わったわけではないです。ただ、CR関連だと「Crazy Raccoon Cup」への参加はかなり転機になりました。
参加したはいいものの、あんまり喋れなかったんです。そこで人と話すにも技術が要るんだということを学びました。
わいわいさんは、チーム全体の祭典「CrazyRaccoon Fes」ではMCもつとめることが発表されている
わいわい 僕が思うに、一人喋りが上手なのは、古くから活動しているゲーム実況者や配信者。逆に集団で面白い掛け合いをできるのがVTuberなんですよ。
だから両方の技術を学んで、上手く間に入っていきたいと思うようになりました。
──今のわいわいさんを見ていると、コラボ配信でもトークの流れや場の雰囲気を察して盛り上げているように思います。
わいわい でもね、最初はどうしても喋ることができなかったんです。実際によくあったのが、みんなが喋り出して自分の声が届かなくなる「かぶり」。そこからどうやって自分がしゃべる流れをつくろうかと考えた時に、同じことを3回言ってみることにしたんです。
例えば誰かが喋って、共感する時にあえて「あ~わかるわかるわかる」って連呼してみる。そしたらみんなのガヤが落ち着いた頃、僕の声だけ残るじゃないですか。
周りに負けないように色々と考えてました。じゃないと見てくれてる人に申し訳ないですから。
ただ真っ直ぐに生きる──わいわいの中に息づく教え
──イベント等に臨むわいわいさんの姿勢を「男気がある」と称賛する声が多く見られます。ご自身の中で「こうありたい」といった理想像や、後進のストリーマーへ「背中を見せたい」といった願望はございますか?
わいわい 難しい質問ですね(笑)。別に「こんな姿を見せたい」とかは無くて、単に僕が「そうするのが好きだから」だと思います。
まあ例えば、僕が若い頃にお世話になった人に、「いつか僕がご飯をご馳走しますね」って言ったら、その人に「自分はいいから、あなたの後輩に出してあげなさい」と教えてもらったことがあって。その姿に自分が憧れたから今もそんな風に生きているだけですね。
僕は別に真面目に生きてきたわけじゃないし、どこかバカなんですよ。だからバカらしく、変に気負わずに真っ直ぐ歩くぐらいの方が楽なんです。
──わいわいさんの潔さが感じられるエピソードですね。ちなみに、以前参加された「LEGENDUS スト6師弟杯(※)」では、「高木を男にするために来た」と仰っていました。
※ストリーマー・SHAKAさんが開催した、弟子と師匠のタッグで戦うコミュニティ大会。わいわいさんはRIDDLE所属のストリーマー・高木さん(19歳)の弟子として出場した。
激闘の後、わいわいさん(左)と高木さん(右)が見せた涙は、多くの感動を呼んだ/画像はLEGENDUS公式Xから
わいわい ありましたね。人間って危険な状況を乗り越えたら、本当に何かしら変わるんですよ。
僕は自分の母親をがんで亡くしてしまったんですけど、その母親は余命を宣告された次の日から雰囲気が変わってました──落ち込みもするけれど、気持ちを切り替えて前向きに何かを決意する。そんな風に死を意識すると、人間は変わるんでしょうね。
「高木を男にする」と言ったのも大体同じ意味です。僕は高木が腹を決めるためのスイッチを用意する。それで高木がスイッチを押すのか押さないのかは、完全にあいつ次第。
ただ、僕は彼を追い込むために「高木ならやってくれる」という風にプレッシャーを与えました。それで彼の中で何かが変わってくれるんじゃないかと思って。あいつも「頑張らなきゃ」って応えてくれたし、前向きに圧をかけるのはかなり大事だと思います。
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