数年にわたり、エンタメ産業を大いに苦しめ続けたコロナ禍。しかし一方で、インターネットと高い親和性を持ち、この数年で強い存在感を発揮してきたカルチャーもある。
それこそが、進行役のゲームマスター(GM)が用意したシナリオに沿い、プレイヤーたちが自由な発想を武器に即興で物語をつくり出していくTRPGだ。
会話で進行するアナログゲーム・TRPGには、プレイヤーたちが物語の世界を“脳内で想像し、共有しなければならない”というハードルがあった。
しかしその現在は、グラフィック等の素材がネット上で気軽に共有できるようになったことで大きく変化している。
オンラインでTRPGを遊ぶためWebツール・ココフォリアなども発展。演出やデザインを凝らした遊び部屋「ルーム」をSNSに投稿するTRPGユーザーも増加。自作素材やエフェクトのデータを作成・販売するクリエイターたちによる市場も形成されている。イラストレーター・しまどりるさんが手掛けたルームも楽しめる「大悪党 地獄ケ原斬人」
一方で、そういったクリエイターたちの活躍やTPRGシーンにおけるグラフィック/デザインの盛り上がりによって「クリエイティブを凝らないといけない」とプレッシャーを感じる人も少なくない。
そこで今回は、TRPGにドハマりしているバーチャルYouTuber・コーサカさんに協力を依頼!
簡単にオシャレなデザインがつくれて、無料(※)のデザインツール「Adobe Express」を使用。デザインした素材を使って、ある幻のシナリオのルームを作成するようお願いした。 非デザイナーであるコーサカさんは、どんなTPRGの世界を表現してくれるのだろうか?
取材・文:ゆがみん 編集:小林優介
※Adobe Expressは基本無料、有料版でも1,078円
コーサカ 元々少しだけ遊んだことはあったんですけど、配信でしっかりと遊んだのは、2020年6月にVTuberの茶越きよかが主催した『ダブルクロス The 3rd Edition』の「Awaken from a nightmare!」っていうシナリオが最初です。
同じくVTuberの歌衣メイカ、天開司と一緒に参加したんですけど、そのセッションが楽しくて。
その後に、九条林檎のチャンネルで行われた「 I wish... 」っていう、探偵になって怪奇事件を調査するシナリオのセッションで、ロールプレイの楽しさを実感しました。コーサカさんが参加した「 I wish... 」セッション
コーサカ TRPGって、シナリオというレールはあるけど自分たちで自由にどんな展開にもできるのが魅力だってよく紹介されるんですけど。
当時はまだ勝手がわかってなかったのもあって……導入部分で依頼主から電話がかかって来たのをボケとして「まだ起きるには早いしな…シカトしよう」って無視してみたんですよ。
本当はそういうことをされたら話も進まないし、物語の外でプレイヤーとしてのオレに注意してもいいはずなんです。
ただ、その時GMをやってた夢オチが「5分間無視し続けても電話は鳴りやまないですね」って返してきて。
それがかなり衝撃で。「すげえ! オレの無茶に対して、物語を壊さないまま柔軟に対応してきた!」って驚いたのを覚えてます。
またその少し後、TRPG関連のクリエイターをやってるぱぱびっぷの「Life goes on ~人生は続く~」というシナリオを遊ぶ機会があって。コーサカさんが参加した「Life goes on ~人生は続く~」セッション
コーサカ そのセッションも、自分の価値観が物語に反映されてしまうところとか、ロールプレイの自由度の高さとかがバチバチっと1つの体験としてかみ合ったのがすごい楽しかったんですよ。
それぞれの経験を経て、3回もこんな体験が続くんなら、これは偶然じゃなくて本当に面白い遊びなんだって確信しましたね。
魅力として挙げるなら、やっぱり打ち合わせをせずともお互いの意図を汲んで、即興でドラマチックな展開をつくり出せたときの「伝わった!」っていう快感ですね。
気心の知れた仲間が「ツーカー」な感じでこっちの無言のパスを受け取ってくれた時はもう最高に気持ちいい。
──このやり取りは気持ちよかった! というセッションはありますか?
コーサカ たくさんありますね(笑)。
あえて挙げるなら、友達でTRPGの配信をやってるあれまさんがGMで、佐藤ホームズと一緒にプレイヤーとして参加した「ある天才文筆家の消失」です。コーサカさんが参加した「とある天才文筆家の消失」セッション
コーサカ オレはこのセッションの中で一回、意図的にキャラクターの設定とは真逆のロールプレイをしたんです。
しかもそのシーンは、ロールプレイの真意に気付いた上で、「設定と逆」であることを指摘してもらわないと先に進まないような場面でした。にも関わらず、ホームズは瞬時に汲み取ってツッコんでくれて。
意図も説明してない「気づいてくれ!」っていう完全なノールックパス。なのに、完璧に欲しいラリーをしてくれたんですよ!
元々ホームズとはロールプレイの息が会うことが多かったんですけど、このときばかりは「佐藤ホームズ、最高!」ってなりましたね。
コーサカ 今、YouTubeのTRPGの再生リストには186本の動画が入ってますね(笑)。
2020年の6月からで……2021年が月に6本くらい。2022年はペースが上がって月8本くらいだったと思います。
──ものすごいペースですね…!それだけのセッションをこなす中で、プレイヤーとして気をつけていることはありますか?
コーサカ 絶対に自分のやりたいことをやること。でも、それは人を無理やりオレのやりたいことに付き合わせたり、ゲームマスターを困らせるという意味じゃなくて。
プレイヤーたちとGMがつくる世界の中で、自分のやりたいことを妥協せず、全部つかみ取るような表現をしきるっていうことなんです。
とはいえ、さっきのノールックパスにはまっちゃって、パスを出しまくってた時期もあったりしましたね(笑)。
TRPGって、同じプレイヤー、同じシナリオで遊ぶことってほとんどなくて。一期一会な遊びなので「まあいいや。今度やろう」は絶対やらないようにしています。
コーサカ 可能な限りプレイヤーがやりたいことをやらせてあげることですかね。
物語とルールはあるけれど、GMの手によって自由に物語の舵を切れるというのもTRPGの良さだと思っていて。その自由さがページをめくったり再生ボタンを押したりっていう物語とは違う部分なんです。
プレイヤーがキャラクターの前にある運命に手を加えたい、抗いたいと思ったなら、可能な限りそれを反映させてあげないと。ページをめくっているのと変わらなくなってしまう。
自分もGMたちに自由に遊ばせてもらったので、自分がGMをするなら、可能な限り自由な選択肢をあげたいんです。
あとプレイヤー/ゲームマスター両方でめっちゃ気をつけてるのは、連絡をすぐ返すこと。連絡が遅くなると、本当にいつまでたっても遊べないんですよ……(笑)!
それこそが、進行役のゲームマスター(GM)が用意したシナリオに沿い、プレイヤーたちが自由な発想を武器に即興で物語をつくり出していくTRPGだ。
会話で進行するアナログゲーム・TRPGには、プレイヤーたちが物語の世界を“脳内で想像し、共有しなければならない”というハードルがあった。
しかしその現在は、グラフィック等の素材がネット上で気軽に共有できるようになったことで大きく変化している。
オンラインでTRPGを遊ぶためWebツール・ココフォリアなども発展。演出やデザインを凝らした遊び部屋「ルーム」をSNSに投稿するTRPGユーザーも増加。自作素材やエフェクトのデータを作成・販売するクリエイターたちによる市場も形成されている。
そこで今回は、TRPGにドハマりしているバーチャルYouTuber・コーサカさんに協力を依頼!
簡単にオシャレなデザインがつくれて、無料(※)のデザインツール「Adobe Express」を使用。デザインした素材を使って、ある幻のシナリオのルームを作成するようお願いした。 非デザイナーであるコーサカさんは、どんなTPRGの世界を表現してくれるのだろうか?
取材・文:ゆがみん 編集:小林優介
※Adobe Expressは基本無料、有料版でも1,078円
目次
- 1. TRPGに得た確信──「この楽しさは、偶然なんかじゃない!」
- 2. 言葉を交わさなくても、通じ合える仲間がいる喜び
- 3. TRPGは一期一会、全力で自分のしたい表現をつかみ取る
- 4. 自分たちで物語を紡ぐTRPG、だからこそ自由に遊んでほしい
- 5. TRPGも動画も、目の前にいる仲間のことを考え続ける
- 6. 「お前らが遊ぶシナリオはオレが書く!」トップクリエイターたちへの恩返し
- 7. 友だちを喜ばせたいから、必死にデザインする
- 8. 幻のシナリオ「舌へ参ります」のルームをお披露目!
- 9. 素材を置くだけでいい感じに、手軽なAdobe Express
- 10. 「お前Adobe Express使え!」コーサカが叫んだ理由
- 11. シナリオ制作の動機は「仲間と楽しく遊び続けるため」
TRPGに得た確信──「この楽しさは、偶然なんかじゃない!」
──コーサカさんは、ここ数年で一気にTRPGにハマったように見えています。TRPGにハマるきっかけはなんだったのでしょうか?コーサカ 元々少しだけ遊んだことはあったんですけど、配信でしっかりと遊んだのは、2020年6月にVTuberの茶越きよかが主催した『ダブルクロス The 3rd Edition』の「Awaken from a nightmare!」っていうシナリオが最初です。
同じくVTuberの歌衣メイカ、天開司と一緒に参加したんですけど、そのセッションが楽しくて。
その後に、九条林檎のチャンネルで行われた「 I wish... 」っていう、探偵になって怪奇事件を調査するシナリオのセッションで、ロールプレイの楽しさを実感しました。
当時はまだ勝手がわかってなかったのもあって……導入部分で依頼主から電話がかかって来たのをボケとして「まだ起きるには早いしな…シカトしよう」って無視してみたんですよ。
本当はそういうことをされたら話も進まないし、物語の外でプレイヤーとしてのオレに注意してもいいはずなんです。
ただ、その時GMをやってた夢オチが「5分間無視し続けても電話は鳴りやまないですね」って返してきて。
それがかなり衝撃で。「すげえ! オレの無茶に対して、物語を壊さないまま柔軟に対応してきた!」って驚いたのを覚えてます。
またその少し後、TRPG関連のクリエイターをやってるぱぱびっぷの「Life goes on ~人生は続く~」というシナリオを遊ぶ機会があって。
それぞれの経験を経て、3回もこんな体験が続くんなら、これは偶然じゃなくて本当に面白い遊びなんだって確信しましたね。
言葉を交わさなくても、通じ合える仲間がいる喜び
──コーサカさんが考える、TRPGの一番の魅力はなんでしょうか?魅力として挙げるなら、やっぱり打ち合わせをせずともお互いの意図を汲んで、即興でドラマチックな展開をつくり出せたときの「伝わった!」っていう快感ですね。
気心の知れた仲間が「ツーカー」な感じでこっちの無言のパスを受け取ってくれた時はもう最高に気持ちいい。
──このやり取りは気持ちよかった! というセッションはありますか?
コーサカ たくさんありますね(笑)。
あえて挙げるなら、友達でTRPGの配信をやってるあれまさんがGMで、佐藤ホームズと一緒にプレイヤーとして参加した「ある天才文筆家の消失」です。
しかもそのシーンは、ロールプレイの真意に気付いた上で、「設定と逆」であることを指摘してもらわないと先に進まないような場面でした。にも関わらず、ホームズは瞬時に汲み取ってツッコんでくれて。
意図も説明してない「気づいてくれ!」っていう完全なノールックパス。なのに、完璧に欲しいラリーをしてくれたんですよ!
元々ホームズとはロールプレイの息が会うことが多かったんですけど、このときばかりは「佐藤ホームズ、最高!」ってなりましたね。
TRPGは一期一会、全力で自分のしたい表現をつかみ取る
──ちなみに、コーサカさんは今、これまでにどれくらいTRPGをプレイされているんですか?コーサカ 今、YouTubeのTRPGの再生リストには186本の動画が入ってますね(笑)。
2020年の6月からで……2021年が月に6本くらい。2022年はペースが上がって月8本くらいだったと思います。
──ものすごいペースですね…!それだけのセッションをこなす中で、プレイヤーとして気をつけていることはありますか?
コーサカ 絶対に自分のやりたいことをやること。でも、それは人を無理やりオレのやりたいことに付き合わせたり、ゲームマスターを困らせるという意味じゃなくて。
プレイヤーたちとGMがつくる世界の中で、自分のやりたいことを妥協せず、全部つかみ取るような表現をしきるっていうことなんです。
とはいえ、さっきのノールックパスにはまっちゃって、パスを出しまくってた時期もあったりしましたね(笑)。
TRPGって、同じプレイヤー、同じシナリオで遊ぶことってほとんどなくて。一期一会な遊びなので「まあいいや。今度やろう」は絶対やらないようにしています。
自分たちで物語を紡ぐTRPG、だからこそ自由に遊んでほしい
──逆に、GMとして物語を進行する際に気をつけていることはありますか?コーサカ 可能な限りプレイヤーがやりたいことをやらせてあげることですかね。
物語とルールはあるけれど、GMの手によって自由に物語の舵を切れるというのもTRPGの良さだと思っていて。その自由さがページをめくったり再生ボタンを押したりっていう物語とは違う部分なんです。
プレイヤーがキャラクターの前にある運命に手を加えたい、抗いたいと思ったなら、可能な限りそれを反映させてあげないと。ページをめくっているのと変わらなくなってしまう。
自分もGMたちに自由に遊ばせてもらったので、自分がGMをするなら、可能な限り自由な選択肢をあげたいんです。
あとプレイヤー/ゲームマスター両方でめっちゃ気をつけてるのは、連絡をすぐ返すこと。連絡が遅くなると、本当にいつまでたっても遊べないんですよ……(笑)!
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