主演・八木奈々「我慢を重ねて衝動にかられる人はいる」
撮影の合間を縫って、主演の八木さんに今回のドラマ撮影にあたっての心境を聞いてみた。「台本を読ませてもらったときは、自分が演じる役柄に対する理解に苦しみました。私は恋愛経験があまりないので、恋人に対して逆上して暴れるシーンなど、主人公の気持ちが理解できなかった。でも、台本を何度も読み込んで、なぜ主人公が”メンヘラ化”してしまうのか考えて……」
その結果「なぜ彼女はこんなふうに行動するのか」という理由がわかるようになったという。
「感情移入できるようになってからは、とても演じやすかったです。恋人への我慢が重なって、衝動的な行動を取ってしまう人は少なくないはずだから、共感できるところも多いはずです」 「いつものAVの現場であるようなシーンがないので、演じる側としても新鮮でした。普段と比べると、演じることに集中できてすごく楽しかったです」と八木さん。
ほのぼのと穏やかそうな雰囲気の彼女だが、第2話で演じるのは感情の起伏の激しいメンヘラ彼女だ。ストーリーではリアルな1人の女の子がメンヘラ化していく過程が描かれる。
演者はシーンに合わせて、衣装替えやヘアメイクを何回も行う。自分の番を待つ演者たちの表情も、緊張がうかがえる真剣な表情だ。ドラマの撮影中は状況に応じて撮影スケジュールも変わっていくので、演者も気が抜けない。
「なぜメンヘラ化するのか?」その過程は男性でも参考に
八木さん演じるインフルエンサーの恋人役として、メンズ地下アイドルを演じるのは、実際にメンズアイドルグループ・BLACK IRIS(ブラックアイリス)で活動している西玲人さんだ。「僕は実際にアイドル活動をしているので、台本を読んだときの感想は”妙にリアルだな”という感じでした。わかりみが深いというか。メンヘラ彼女の恋人役として出演しましたが、彼女役の八木さんの演技力に圧倒されてしまって、演技中なのに本気でビビりました(笑)」 西さんは「ぜひ男性にも見てほしい」と語る。
「ストーリーもおもしろいので、僕としては男性にもぜひ見てみてほしいですね。キレてしまった女性の恐ろしさや、どうしてメンヘラになってしまうのかなど、1人の男性として参考になる部分も多かったです」
中心実物を演じる2人からここまで言われると、俄然第2話の内容が気になるところ。続いては、その物語づくりの一端を担う脚本を手がけた妹尾ユウカさんにも話を聞いていきたい。
脚本担当の妹尾ユウカ「変な“好き”だけどよくある“好き”」
当日、撮影現場を訪れていたコラムニスト・妹尾ユウカさん。さまざまなメディアで恋愛コラムを執筆している彼女は、人生経験豊富で若者のリアルについても造詣が深い。全話の脚本を担当しながら、キャスティングに加え、現場にも足を運んで撮影指示なども行う、さながら監修のような立ち回りだ。
「脚本を書くにあたって一番大事にしたのは“リアルさ”ですね。見た人がちゃんと“あ〜、いるよねこういうやつ”と感情移入できるような、リアルなステータス、リアルな人物像。10代〜30代くらいの人なら、自然に物語に入り込めると思います」 「撮影現場でもとにかく、リアル感や違和感のなさにこだわっていて、撮影して違和感があった部分は、その場で脚本やセリフを変えながら撮り直すこともありますね」と妹尾さん。周りの友人たちの恋愛もアイデアソースにしながら「今どこにでもある恋愛」というテーマで脚本を書いているという。
「タイトルは『私の好きって変ですか?』だから。ちょっと普通とは違う、変わった『好き』。だけど、今どきのよくある『好き』の1つではある、ということにこだわって、毎話脚本をつくっています。ちょっと上の世代でいう普通の恋愛って、ドラマの『ロンバケ(編注:ロングバケーション)』だったと思うんですよね。でも、今の私たちにとっての普通の恋愛って、意外と今回のドラマみたいな恋愛なんじゃないかなって」
昔なら「ちょっと変」だった恋愛も、令和の現在では「普通の恋愛」なのではないか、ということか……。ドラマではそんな今どきの恋愛を主題としながら、妹尾さんは裏テーマとして「女の友情の儚さ、もろさ」というものも描いているそうだ。女性なら誰もが頷ける部分でありながら、男性にも参考になるはずだ。
『私の好きって変ですか?』令和的恋愛観を代弁
とにかく無料公開とは思えないくらい、制作現場にはカネと熱量がかかりまくっていた。現場と本編の両方を見ている筆者としては、地上波で放送されても絶対見ちゃうレベルと太鼓判を押したい。『私の好きって変ですか?』の第2話配信は◯月◯日の予定だ。「寝取り女子」や「メンヘラ彼女」といった、ネットではよく聞くけど本性がわからない女性たちの生き様と心情。毎回主人公を演じるセクシー女優さんたちの「普通の女の子」としての演技も見逃さないでほしい。
1990年代後半に「月曜日はOLが街から消える」と評されるほど共感を呼んだドラマ『ロングバケーション』。そして、映画『愛がなんだ』が「エモい!」「私のこと!」と話題を呼んだのは平成の終わりだった。
じゃあ令和的恋愛ドラマって何だろう? 言われてみればたしかに“変”だけど、そんな好きもあるかもねと共感できる『私の好きって変ですか?』が、候補の1つになってもなんら不思議ではないだろう。
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