鈴木このみの歌声は「キャラ5割、自分5割」で紡がれる
──シンデレラストーリーにも思える裏には、地道な練習とオーディションの積み重ねがあったんですね。そして、デビュー後、アニメタイアップ曲を歌う日々が始まります。時代として見ると、鈴木このみさんがデビューして以降より顕著に見えてきた傾向として、作中人物を演じる声優がOPやEDの曲を歌うようになっていると感じます。いわゆる「声優アーティスト」と呼ばれる人たちは、歌一本で関わる立場から見てどのように映っていますか?
鈴木このみ やっぱり意識しないわけではないですねー! いつもすごいなと思いながら見ているんですけど……うーん、声優アーティストさんって演じているからこそ、キャラクターのことを深く知っている強みはありますよね。だから逆に、自分は自分にしかないものを出したいなと思っていて。私はアニソンを歌うときは、アニメの世界観やキャラクターの気持ちを5割入れて、自分の気持ちを5割入れるようにしています。
歌が作品に沿っているのはもちろん大事なんですけども、それだけだと「私が歌っている意味ってなんなんだろう」と思ってしまうので、半分ずつにしているんです。
アニメによっては自分に経験のないこと、たとえば戦場に行ったりだとか、想像はするんですけど、それだけだと説得力がなくて薄っぺらくなっちゃうのも気になります。だから自分の気持ちを足して、説得力を持たせようって毎回気をつけています。
──その心がけは、どのタイミングから意識し始めたことなんでしょう?
鈴木このみ 徐々に身についていきましたね。デビューシングルの『CHOIR JAIL』あたりはレコーディングに必死で全然考えられてなかったです(笑)。心に余裕ができてくるにつれて、するべきことに気づけていけました。
──以前、他のインタビューで、マイク前でも振り付きで歌えるようになったとお話されていましたね。やはり動きが入ると違いますか?
鈴木このみ やっぱり気持ちが入りますね。おかげでマイクにぶつかりまくっています(笑)。それは、安心感もあるからなのかな。『CHOIR JAIL』の時は「はじめまして」のスタッフばかりがブースの外で難しい顔をしていて……でも、今は打ち解けて良い意味でリラックスして歌えていますし、逆に自分から意見を言えるようにもなりました。
──主人公のイメージを頭に置いて、シンクロさせていくような歌のつくり方はよくやりますか?
鈴木このみ はい。毎回、アニメソングを歌うときは原作を読んで、その世界観をイメージして、頭の中で映像にします。レコーディングのときも「ここでしゃくる」「ここはビブラート」みたいに技術で考えるのではなくて、だいたい映像とかキャラクターの表情が思い浮かぶんですよ。それを声で表現している。
たとえば原作がマンガなら絵があるので、キャラクター同士の関係性も想像しやすいんですけど、ライトノベルで活字だったりすると結構難しかったりもしますね。
以前『Beat your Heart』がOP主題歌になった『ブブキ・ブランキ』は完全オリジナルアニメーションだったので、シナリオをいただいて読み込んでからレコーディングに臨みましたが、その当時映像が完成していなかったのですごく難しかったです。実際に完成したアニメを見て「本当はこうだったんだ!」と気づくこともあったりして。
主人公のスバルとシンクロ! 新曲『Redo』に込めた「諦められない」
──このまま新曲『Redo』について聞かせてください。レコーディングは順調でしたか?鈴木このみ 大変でしたね! すごく難しくって、ゴールに辿り着くまで時間もかかったので……仮歌をいただいて、納得いく歌になるまで3日かかる、過去最長のレコーディングでした。「もうちょっと限界超えれそうな気がする! まだ越えてないだろう!」っていうところでずっとムズムズしていて、やっと3日目に突破できた感じです。
──どんなあたりにムズムズしたんですか?
鈴木このみ 『Redo』は必死感がありつつも、「絶対に諦めないんだ!」という気持ちも入れたかったので、そこを同時に出すのが難しかったですね。必死感というと、どうしても暗めになりがちなんですけど、この曲は『Re:ゼロから始める異世界生活』で何度も時間を巻き戻りながら奮闘する主人公のスバルくんが持つ執念みたいな気持ちを歌っていて、でも彼の明るい性格を忘れたくなかった。
──『Redo』では“5割ずつの工夫”はどう意識しましたか?
鈴木このみ 「アニメ5割」はスバルくんが持つ「死に戻り」の力を使って、自分が大切に想う女の子のエミリアのために「未来を絶対変えてやるんだ」っていう強い想いを込めたいなって思いました。
普通ならちょっと気がおかしくなるくらい、スバルくんは何回も死に戻りしている。でも、それはスバルくんにとって当たり前になっているので、狂気じみた歌詞だったりしても、あえてなんでもない当たり前のように歌ってみたりとか。その異常さとは対称的に、エミリアへの素直な気持ちも入れたいなと気をつけました。
──素直な気持ちが詰まっている部分は、どのあたりの歌詞でしょうか?
鈴木このみ グッとくるのは、1番のサビ前「掴んだ愛はそう 離しはしないから」がスバルくんらしい粘り強さが出ているなって思いました。
──残り5割の「鈴木このみさんの気持ち」については?
鈴木このみ あの、私、結構悩むことがたくさんありまして……レコーディングの頃にちょうど前にも悩んだようなことで、また悩んでしまったんですよ。そんな自分がちょっと情けなくも感じて、ふさぎ込みそうになっていた時期だったんですよね。
──その悩みはどういうもの?
鈴木このみ 「アーティストとしての個性ってなんなんだろう?」と考えたときに、自分を表すのがすごく難しくて悶々と悩んでいました。まだ答えは見つかっていないんですけど、個性が見つかっていない分、まだまだいろんな挑戦もできるなって前向きに捉えられたので、今はもやもやせずに済んでいます!
自分の中でのそういうもやもやもあって、残りの5割には「歌だけは絶対にあきらめられない!」っていう気持ちを込めました。
──MVでは演技に初挑戦とのことですが、やってみていかがでしたか? 「黒鈴木」と呼ばれる、黒い衣装をまとった役では視線の流し方がグッときました。
鈴木このみ 演技、むずかしかったですっ!(笑)
意外とファンのみなさんからも「黒鈴木」のほうが人気だったのもびっくりでした。あまり見せない表情だったからかもしれません。あの挑発的な笑みは、ちょっといじわるな女の人をイメージしたんですよね。
でも、MVを撮っている時には向かい側に誰も居てなかったし、セリフがあるわけではなく顔で表現しなければいけなかったので……最初は睨んでいるみたいになっちゃって(笑)。
好きだから真似をする。真似から吸収して自分のものに
──アニソンシンガーとしてデビューして、May'nさんがシェリルとして歌っていた19歳に追いついた現在、今度は「鈴木このみさんのようになりたい」と下の世代が出てくると思います。憧れられる立場になったとき、彼らにどのような声をかけてあげますか?鈴木このみ 絶対に「好きな気持ちは好きな気持ちのまま」置いておいたほうがいいよって言いたいですね。私もデビューしてから4年経って、いろんな経験をしてきたんですけど、「歌が好き」って気持ちは1ミリも変わっていないし、もっともっと大きくなっています。「好き!」って思うと、歌を良くしようと突き詰めたくなるんですよね、自然と。
良いことなのか悪いことなのかはわからないんですけど、私は仕事って割り切ってやりたくないっていう気持ちもあって。ベースはいつも「好きだから、歌う」にあります。
──加えて、具体的な行動としては何かありますか?
鈴木このみ 行動かぁ……んー……いろんな人を真似る! 私は真似するのが大好きで。たとえば、好きだからMay'nさんの歌やライブ中の動作で「スパッ!……(右手を大きく払う)」ってやるのとか(笑)、そうやって真似たことが自分の中でどんどん吸収されていって、自分にしっくりくるように修正しながら、スタイルとして出てきていると思います。
ライブでのMCの盛り上げ方もそう。歌い方にしても、音楽を聞いているときに「この一部分だけが気になる!」みたいのは、すごく耳に残って「自分もやりたい!」って率直に思うんですよね。そこだけ何回も巻き戻して、こうやって歌っているのかなー……って試してみたりしますね。
26歳の私が歌う『DAYS of DASH』が楽しみ!
──19歳のMay'nさんがシェリルとして歌っていた19歳から、いまは7年後の地点にいます。鈴木このみさんは同じく7年後、どうなっていると想像しますか?鈴木このみ 26歳なら今よりもっともっと多くの経験を積んでいると思うので、もっといろんな曲調を歌ってみたいですね。ジャズっぽい感じとかも挑戦してみたいけれど、「まだなんか今じゃない」と思っていて。
あとは、今歌っている曲を26歳になって歌ったらどうなるんだろうっていうのは、すごく楽しみです。たとえば、2枚目のシングル『DAYS of DASH』なんかは「フレッシュさ」が出ている曲なので、あれを26歳で歌うのは、どういう感じなのかなっていうふうに思いますね。
絶対に、生き方とか、過ごしてきた時間とか、もらった言葉とか、そういうのって素直に歌に出ちゃうと思うので……素敵な人になっていたら、素敵に歌えるはずです。
──『DAYS of DASH』に込めた5割の気持ちが、成長と共に変わっていくことも考えられますか? それとも、当時の気持ちをトレースして歌おうとするのでしょうか?
鈴木このみ 私は変わっていてもいいかなって思います。もうすでに『DAYS of DASH』に対する思い入れって変わっていて、より大きくなっているんですよね。海外でもみなさんが口ずさんでくださっているのを見て、思い出も増えていってますし。
大きな違いとして、リリース時は高校生で青春まっただ中だったんですけど、今は上京して一人暮らしをはじめて、ちょっと大人になっているじゃないですか。自分の中で青春を「なんでもない日常だけど、すごく楽しかったな」ってなんとなく理解できるようになったので、曲に対する解釈もちょっと変わったかもしれないですね。
──いま現在の目標があれば教えてください。もしくは、今後挑戦してみたいことは?
鈴木このみ 今年の目標のひとつが、20歳の誕生日までに「ワンマンライブを20本やりたい」って決めているんですけど、またさらにライブに関することで、プラネタリウムでライブしてみたいなって。
※ワンマンライブの記念すべき20本目は、誕生日である11月5日(土)に幕張メッセで開催することも決定した
小学生の時に自由研究でブラックホールを調べにプラネタリウムへ行ったんですけど、すごく面白かったのが印象に残っていて。星をイメージするような私の楽曲もあったりするので、ロマンチックな場所で歌ってみたいなという思いがあります。あぁ、野外ライブもいいかもしれませんね。星空をバックに!
──鈴木このみさんが両手を広げて、大好きな歌を歌う姿が浮かんできました。実際に見られるのを楽しみにしています!
編集部のムチャ振り「生歌聞いてみたいです!!」に…!
インタビュー中、鈴木このみさんが歌に込めたまっすぐな想いを受け止め続けた、KAI-YOU.net編集部たち……頭の中には鈴木このみさんが歌ってきた楽曲が蘇ります。さらに、その歌唱力は「口から原音再生」と評されるウワサを確かめてみたくもなり、図々しくもムチャ振りしてみると……。
鈴木このみ // スズキコノミ
アニソンシンガー
1996年生まれ、19歳。全日本アニソングランプリで優勝、畑 亜貴リリックプロデュース「CHOIR JAIL」で15歳でデビュー。アニソン最大の祭典、Animelo Summer Live にはデビューから4年連続で出演を果たす。「さくら荘のペットな彼⼥」ED「DAYS of DASH」、「ノーゲーム・ノーライフ」OP「This game」など多くのTVアニメ主題歌を担当、「This game」はBillboard JAPAN Hot Animation で初週2位を獲得。
4th「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い」ではヲタイリッシュデスポップバンド・キバオブアキバと、8th「Absolute Soul」ではアニソン界のレジェンド・奥井雅美と、TV東京の大人気バラエティ「ゴッドタン」の人気企画「マジ歌選⼿権」ではマキタスポーツ扮するダークネス率いる最高齢!?V 系ロックバンド「Fly or Die」と、様々なジャンル・アーティストとのコラボにも挑戦。Fly or Die とは、COUNTDOWN JAPAN15/16 のステージでも再共演し、その迫⼒の歌唱をぶつけた。2ndツアーを含めた20本ワンマンライブを敢⾏中。ブリリアントな声で楽曲ごとに魅せ続ける、進化するアニソンシンガー。
イベント情報
鈴⽊このみ20歳バースデーライブ(仮)
日程 | 2016年11月5日(土) |
会場 | 幕張メッセイベントホール |
時間 | 16:00 開場/ 17:00 開演 |
料⾦ | 6500円(税込) |
チケット発売日 | 5月11日(水)朝10時よりオフィシャルファンクラブ「このまにあ!!!」先⾏ |
主催 | MAGES./文化放送 |
企画 | MAGES. |
制作 | LIFE |
協⼒ | イープラス |
関連商品
TVアニメ「 Re:ゼロから始める異世界生活 」オープニングテーマ「 Redo 」【初回限定盤】
鈴木このみ
発売 : 2016年5月11日
価格 : 1,944円(税込み)
販売元 : メディアファクトリー
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