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クリプトン・フューチャー・メディア

クリプトン・フューチャー・メディアは、北海道札幌市に本社を置く音楽・テクノロジー企業。1995年設立、代表取締役は伊藤博之。初音ミク、鏡音リン・レン、巡音ルカ、MEIKO、KAITOなどの歌声合成ソフトウェアを開発するほか、音楽制作サービス「SONICWIRE」、投稿サイト「piapro」、音楽レーベル「KARENT」など、クリエイターの創作を支える事業を展開している。

概要

1995年7月に北海道札幌市で設立。

創業者で代表取締役の伊藤博之は、同社を効果音やサウンド素材を海外から輸入して日本国内で販売する「音の商社」としてスタートさせた。

当時はインターネットもDTMも現在ほど一般化していなかったが、海外メーカーのサンプリング素材、ソフトウェア音源、効果音ライブラリーなどを国内の音楽・映像クリエイターへ提供。

その後、商品の輸入販売だけでなく、音楽制作ソフトウェアの開発、Webサービス、モバイルコンテンツ、音楽配信などへ事業を広げていった。

2004年にはヤマハが開発した歌声合成技術「VOCALOID」を採用した日本語女性歌声ライブラリ『MEIKO』を発売。

2006年には男性歌声ライブラリ『KAITO』を発売。

2007年8月31日には「キャラクター・ボーカル・シリーズ」第1弾として『初音ミク』を発売。

ユーザーが初音ミクを用いて制作した楽曲をニコニコ動画などへ投稿し、別のクリエイターがイラストや動画を制作する「創作の連鎖」が急速に広がったことで、ソフトウェアのパッケージキャラクターだった初音ミク自体も大きな文化現象となった。

同年12月には『鏡音リン・レン』、2009年には『巡音ルカ』を発売。

現在では初音ミク、鏡音リン、鏡音レン、巡音ルカ、MEIKO、KAITOの6人を「ピアプロキャラクターズ」と総称している。

一方、クリプトンの事業はキャラクタービジネスだけではない。

世界各社の音楽制作ソフトウェアやサウンド素材を販売する「SONICWIRE」、投稿サイト「piapro」、ボカロ楽曲を配信する音楽レーベル「KARENT」、音楽発掘サービス「Kiite」、北海道の地域情報を発信する「Domingo」など多数のサービスを自社開発・運営。

音をつくる道具から、作品の制作・発表・流通・収益化、その後のキャラクター展開までを包括的に扱う企業へ成長した。

2025年7月には設立30周年を迎えている。

「音の商社」から始まった会社

クリプトン・フューチャー・メディアは、初音ミクを生み出すために設立された会社ではない。

創業時の中心事業は、海外で制作された効果音やサンプリング素材を日本へ輸入し、音楽家や映像制作者へ販売することだった。

1995年の設立時からBEST SERVICE、HOLLYWOOD EDGE、ZERO-Gなど海外のサウンドメーカーの製品を取り扱った。

その後もBIG FISH AUDIO、TOONTRACK、VIENNA SYMPHONIC LIBRARYなど、音楽制作分野で知られるメーカーとの取引を拡大。

パソコン上で音楽を制作するDTM市場の成長とともに、ソフトウェア音源、エフェクト、サンプルパックなどを扱う企業として事業を拡大した。

現在では、これらの製品を「SONICWIRE」でダウンロード販売している。

SONICWIREはソフトウェア音源、プラグイン、効果音、BGM、サンプル素材など「音」に関する製品を幅広く扱うサービスであり、クリプトン自身も世界最大規模の品揃えと説明している。

「初音ミクの会社」という知名度が突出している一方、音楽を制作する人へ素材や道具を提供することは、創業以来一貫した事業の中心となっている。

MEIKO、KAITO──キャラクターと歌声を結びつける

クリプトンが初めて開発した歌声合成ソフトウェアが、2004年11月5日に発売された『MEIKO』である。

MEIKOはヤマハが開発した初代VOCALOIDエンジンを用いた、世界初の日本語女性歌声VOCALOID製品。

歌声の提供者にはシンガーソングライターの拝郷メイコを起用した。

特徴的だったのが、音楽制作ソフトウェアのパッケージに「歌っている人物」を想像できるキャラクターイラストを採用したことである。

DTMソフトウェアが年間1000本売れればヒットとされた当時、MEIKOは約3000本を販売した。

2006年2月には、日本語男性歌声VOCALOIDとして『KAITO』を発売。

この2製品で得た経験が、その後の「キャラクター・ボーカル・シリーズ」へつながった。

歌声そのものだけを商品にするのではなく、「誰が歌っているのか」を想像できるキャラクターと組み合わせる。

この発想が、後の初音ミクを中心とする創作文化の重要な基盤となった。

『初音ミク』が変えた音楽制作

2007年8月31日、クリプトンは『VOCALOID2 初音ミク』を発売した。

キャラクター・ボーカル・シリーズ第1弾として、「未来的なアイドル」をイメージしたキャラクターと歌声を組み合わせた製品だった。

歌声は声優の藤田咲をもとに制作し、キャラクターデザインはKEIが担当した。

発売後、ユーザーによって大量の楽曲が制作され、ニコニコ動画を中心にインターネットへ投稿された。

さらに、投稿された楽曲を聴いた別のユーザーがイラストを描き、動画を制作し、「歌ってみた」「踊ってみた」など別の表現へ発展させていった。

一つの企業がコンテンツを完成させ、それをファンが消費する従来型のキャラクタービジネスとは異なり、ユーザー自身が作品をつくることによって初音ミクという存在の意味が拡張されていった。

クリプトンもこの動きを管理・制限するより、「創作の連鎖」を支える方向へ事業を展開するようになる。

初音ミクはクリプトンが制作したキャラクターである一方、その代表曲や物語、世界観の大部分は、世界中の無数のクリエイターによって生み出されている。

この構造は、クリプトンという企業を理解する上でも中心的な要素となっている。

「ピアプロ」と創作の連鎖

初音ミク発売から約3カ月後の2007年12月3日、クリプトンは投稿サイト「piapro(ピアプロ)」を開設した。

名称は「Peer Production=共同制作/創作の連鎖」に由来する。

楽曲、イラスト、歌詞など、それぞれ異なる分野のクリエイターが作品を投稿し、別のクリエイターがそれを利用して新しい作品を制作できる場所として設計された。

背景には、初音ミクの急速な普及によって生まれた著作権上の問題もあった。

音楽制作者が動画を制作する際、インターネット上で見つけたイラストを無断利用し、イラストレーターとの間でトラブルが生じるケースがあった。

そこでクリプトンは、作品を使用する際の条件や作者への連絡を明確化し、クリエイター同士が安心して素材を共有できる仕組みをつくった。

「ピアプロ」は単なる初音ミクのファン投稿サイトではなく、異なる専門性を持つ個人同士が作品を持ち寄り、一つのコンテンツを共同で制作するためのインフラとして生まれた。

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