1000人が熱狂したメタバースのkawaiiボイス対決「バ美肉紅白2022」レポート

「ボイチェン」軍

続いては「ボイチェン」軍。最先端科学の力・ボイチェン（＝ボイスチェンジャー）を利用して、元の声に機械でエフェクトをかけてkawaiiボイスを手に入れようとする、メタバース内の一大勢力です。

物理的な音響加工機器を用いる「HW（ハードウェア）ボイチェン」と、コンピュータによる高度演算処理を用いる「SW（ソフトウェア）ボイチェン」の主に2種類のアプローチが存在。

前出の「ソーシャルVR国勢調査2021」によれば、住人の約9%がボイチェンを利用しているとされています。「バ美肉紅白2022」では、ねむが主催した「メタバースデイ」歌ってみたコンテスト（外部リンク）から、精鋭ボイチェン美少女シンガーが選抜され、リベンジを誓いました。

①バーチャル美少女ねむ

私、バーチャル美少女ねむは、「バーチャルでなりたい自分になる」をテーマに2017年から美少女アイドルとして活動している自称・世界最古の個人系VTuber。

私の目標は「訓練ゼロ＆スイッチひとつで誰でもkawaiiボイス」。使用ボイスチェンジャーは「Roland M-100FX（HWボイチェン、ピッチ＆フォルマント＋12以上）」です。

男女の間には約1オクターブ（＝12ピッチ）の高さの差があります。簡単に言うと、これを筋肉で上げるのが両声類、機械で上げるのがボイチェン勢です。

今回登場する私以外のボイチェン娘たちは、基本的には地声も結構頑張って変化させた上で、足りない部分をボイチェンで補っています。私が他のみんなとちょっと違うのは、声そのものはは地声のままだということ。 ボイチェンの性能にはざっくり分けて「パワー（人の声としての品質を保ったまま高さを上げる性能）」と「スピード（遅延なく声を変換する性能）」があります。

両者は反比例の関係にあって、両立しているものはほとんどないのが実情です。ボイチェンで歌を歌うというのは、遅延がちょっとでもあるとテンポがずれてしまうので、単にしゃべるより数段難しいです。

そこで私以外のボイチェン娘たちは、スピード重視のボイチェンを使って、パワー不足を補うために地声を変化させた上でボイチェンを使っています。

機械であまり大きく声をいじってないので、自然で可愛い声になりやすいけど、やはり一般人にはかなり難易度が高いです。 私の目標はあくまで、全人類を美少女にすること！ 「訓練ゼロ＆スイッチひとつで誰でもkawaiiボイス」を実現するため、パワーとスピードを両立した奇跡のボイチェン「Roland M-100FX」に辿り着きました。

欠点はちょっと大きいのと、とっくに生産終了していて非常に手に入りづらいこと。Rolandはメタバース時代の今こそM-100FXを再販して！（Rolandが現在売っている「VT-4」はパワーが全く足りなくて私には何の役にもたたないのです）。

②松尾悠里

ボイチェンとの融合を目指し日々修行を重ねる自称「世界一のボイチェン大好きおじさん」である悠里ちゃん。

目標は「絶対にボイチェンバレしない完璧アイドルボイス」。使用ボイスチェンジャーは「Little AlterBoy（SWボイチェン、ピッチ＆フォルマント＋4）」です。「メタバースデイ」歌ってみたコンテスト総選挙では10位に入りました。 悠里ちゃんは、前述したボイチェン性能の反比例問題を解決して自然なアイドルボイスを実現するため、「パワー型（高品質・遅延あり）」と「スピード型（低品質・低遅延）」の2つのボイチェンを同時に使用しています（いわゆる「マグロナ」システム）。

その歌声は……「ただの歌がうまいJKでは！？」という声が上がるほど。

③月山ゆかり

関西弁による個性的なトークと、リアルな女性ボイスとは一線を画す、ボイチェンでしか出せない「デジタルkawaiiボイス」を得意とするゆかりちゃん。

「メタバースデイ」歌ってみたコンテスト総選挙では17位。目標は「究極のデジタルkawaiiボイス」。使用ボイスチェンジャーは「Graillon 2（SWボイチェン、ピッチ＆フォルマント＋2.76）」です。

YouTubeチャンネル登録者数は1.3万人以上。高度な技術力を持つ自作キーボード系VTuberで、キーボードの設計から3Dプリンタによる組み立てまでを配信しています。 その歌声は、いわゆる自然な女声とは一線を画す、ボイチェンでなければ出せない「デジタルkawaiiボイス」。まるでボーカロイドに魂が宿ったかのような異次元の歌声は衝撃です！

かわいいボイチェンに必要なもの……それは、超低遅延のモニター環境。遅延が大きいとどうしても自分の地声が聞こえてしまい、「オジ」がまろび出てしまい、可愛くなりきれない！

超低遅延の環境をつくることにより、「可愛い→褒められる→もっと可愛くなりたい」の「メタバースkawaiiスパイラル」が周り始めます。 ボイチェンはノイズも増幅してしまうので、ノイズの少ない収録環境をつくるため、マイクや機材などに「お金をかける価値がある」というのも印象的なセリフでした。

④セイ・クイーン

メタバース内に新興勢力「私立バ美肉学園」を設立して、声楽部と麻雀部の部長を兼任し、日々VTuberとして歌配信や麻雀配信を行っているセイちゃん。

シンガーソングライター・Miliaも認める高い歌唱力と、高音域に定評のある独自の歌声をもつボイチェン界の新星です。「メタバースデイ」歌ってみたコンテスト総選挙では7位、加えて「Milia」賞（歌唱部門特別賞）も受賞しています。

目標は「誰もを虜にする高音域の歌声」。使用ボイスチェンジャーは「Graillon2（SWボイチェン、ピッチ＆フォルマント＋5）」です。

ボイチェンでなければ出せない「超高音域」で透明感のある綺麗過ぎる歌声と超絶歌唱テクニックは衝撃で、まさに伝説のステージでした。 究極のkawaiiを実現するためには「筋肉7：ボイチェン3」が黄金比だと語ります。

ボイチェン最大の敵は男声ならではの「エッジボイス」。これが地声にあるとボイチェンがエッジを増幅してしまいきれいな声にならないため、常に裏声でしゃべっているそうです。

「両声類」軍が3連覇達成！ 健闘を称え合い全員で合唱

「バ美肉紅白2022」は来場者投票の結果、「42対47」の僅差で「両声類」軍が3連覇を達成し「紅組」の栄冠を獲得！ 最後は健闘を称え合い、全メンバーで合唱を行いました。