ギターを置いて跳びはねる！　会場と一体感を全身で表現

5曲目「ネバーランド」を言葉を噛みしめるように、かつ、時折震えるような声で歌いあげると、ライブも後半戦に突入。ギターを弾く手にも、より力が込められていく。

「水槽の外の花を好きになって、会いに行くために水槽の外に飛び出して自殺してしまうお魚のお話」として披露した「スーサイドさかな」は、軽やかなリズムながら物悲しさのあるポップナンバー。まるで水槽を彷彿とさせるような照明のライティングも、そのアンバランスな魅力を引き出すのに一役買っていた。

続く「ふうせん」「ちよこれいと」は、いずれもリリックMVが渋谷で撮影されており、渋谷との結びつきが強いさユりさんを象徴するような楽曲だ。歌い出した瞬間から、会場が笑顔で盛り上がっていく。

「ふうせん」の“どんどん”というフレーズに合わせて上昇するテンションは、アップテンポな「ちょこれいと」でリミットブレイク。手を上げて、身体を揺らして、跳びはねて、さユりさんも全身を使ってファンに応える。ラストのサビではギターを置いて、会場と一緒に熱唱した。 盛り上がりは最高潮に達し、心地よい高揚感が漂うなか、ラストナンバーとなった「夜明けの詩」。「あなたが、あたたかい朝を迎えられますように」という願いとともに披露された曲は、突き刺さるような痛みはそのままに、どこかさユりさんが優しく包み込んでくれるような不思議な気持ちにさせる。

“何か残したくて叫んでいた”という彼女自身に通じるフレーズは、どことなく儚さを感じさせつつも、ラストは「明日も生きててください！」と力強く放ち、同番組史上最長となったライブは幕を閉じた。

言葉のひとつひとつが聴く者の痛みを包み込む

番組としては、トークも含めると2時間を超える長時間だったため、ライブ中のMCでは、「疲れていると思うので、心だけでも楽しんで」など、随所でファンを気づかっていたさユりさん。MCではほかにも、自身が好きな江戸川乱歩の誕生日（ライブ当日）を祝いつつ、らしいコメントを見せる場面もあった。

「私の誕生日って、私が死んだあと何年くらい覚えててもらえるんだろう？　（江戸川乱歩のように）亡くなってからも祝ってもらえるって、素敵ですね」

また「夜明けの詩」の演奏前にも、ファンへの感謝とともに、孤独にフォーカスしたメッセージが贈られている。

「みなさんは何を抱えて、どんな孤独を抱えて、この場にいるんでしょうか？ そういうことって、普段あまり言わないですけど、この曲は、“どうして私は何も残せないんだろう、私なんてダメなヤツだ、ひとりぼっちだ”と思ったときにつくった曲です。いろいろなもの抱えながら、それでも笑って生きてる──そういうみんなに、少しでも力になれればと願いを込めて！」

回を追うごとに会場との一体感が増す『夜明けのパラレル実験室」。次回は11月17日（火）に男性限定の男子会、翌週の25日（水）には女性限定の女子会と、今後も注目の内容がラインナップされている。彼女のロングセットによるライブを見れる機会はあまりないため、非常に貴重だ。詳細は2.5Dの番組ページで随時更新される予定となっている。

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