湯浅政明監督の『キックハート』は、話題の多い作品だ。製作中からクラウドファンディングのKickstaterで資金支援を呼びかけて、新作短編アニメとしては異例のファンから直接、資金を集めることに成功した。その金額は20万ドルを超えた。
製作は大手アニメスタジオのプロダクション I.G、湯浅監督は文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の大賞を2度受賞するほど実力に定評がある。それがあえて日本のアニメとしては初の本格的なクラウドディングを活用した。これでいっきに知名度をあげ、大きな成功を収めた。

さらに完成した作品は、世界最大のアニメーション映画祭であるアヌシー国際アニメーションフェスティバル短編部門のコンペティション、さらにオタワ国際アニメーション映画祭短編部門でノミネートされた。先日カナダで開催されたファンタジア国際映画祭では、ついに短編アニメーション賞を受賞している。その映像も高く評価されたかたちだ。

その『キックハート』の新たな話題は、Blu-ray Discの発売である。プロダクション I.Gは、本作のBDを2013年12月27日にリリースすることを明らかにした。発売、販売ともプロダクション I.Gが、直接行う。
製作委員会を中心に分業が進む現在のアニメ業界では、作品のDVD、BDは、映像・音楽ソフトメーカーが手掛けることが多い。アニメ制作会社から自ら行うことは少ない。
今回は『キックハート』の製作を、クラウドファンディングも含めてプロダクション I.Gがほぼ自社で行ったことから可能になったとみられる。また、これまでと違う成立をした作品だけに、映像ソフトについても新しい試みを取り入れる狙いがありそうだ。

BDの商品構成も面白い。作品本編は長さ12分に過ぎない。それに約48分もの特典映像が盛り込まれる。BDにはメイキング映像26分、それにプロダクションI.Gと湯浅監督が手がけた幻の作品『なんちゃってバンパイヤン』がDVDで収録される。
ブックレット、描き下ろしジャケットもあり、さらなる企画も検討中とのことだ。これだけ詰め込んで、税込1575円と手頃な価格も野心的である。リージョンコードはフリーのため、どの地域でも視聴できるなど、細かな部分で工夫をこらす。
『キックハート』は、決して大きな作品ではない。しかし、今後のアニメ製作を考えるうえで、その存在感は格別に大きい。

『キックハート』
http://www.production-ig.co.jp/works/kickheart
twitter (英語) @kick_heart
Facebook(英語)　Kick-Heart

[スタッフ]
原作・監督：　湯浅政明
監修：　押井守
キャラクターデザイン・作画監督：　三原三千夫
副監督・カラーコーディネート：　Eunyoung Choi
美術・カラースクリプト：　Kevin Aymeric
音楽・音響監督：　オオルタイチ
アニメーション制作：　プロダクション I.G

[キャスト]
マスクマンM：　鈴木達央
レディS：　本田貴子

『キックハート』ブルーレイディスク
発売・販売：　Production I.G
発売日：　2013年12月2７日　価格：1575 円（税込）
仕様：本編BDと特典DVDの2枚組
収録分数：　約60分（本編約12分、特典映像合計約48分）
リージョンコード：　AL
L
[BD収録内容]
キックハート本編（約12分、音声:日本語/英語、字幕:英語/仏語/スペイン語）
メイキング映像（約26分、字幕:日本語/英語）
[特典DVD 収録内容] ※全て日本語音声のみ
CM4種（合計約2分）／『なんちゃってバンパイヤン』（約20分監督:　湯浅政明）
その他企画中
[その他仕様]
描き下ろしジャケット、ブックレット付き