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  • 2023.09.27

推し活の究極系「応援広告」解説 費用や掲載までの流れ、その効果とは

VTuber関連トピックをピックアップし、よりPOPに、より深く掘り下げていく『VTuber経済ニュース』。

今回はファンが推しを応援するために広告を掲示する“応援広告”について解説。

推し活の究極系「応援広告」解説 費用や掲載までの流れ、その効果とは

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この記事の制作者たち

バーチャルYouTuber(VTuber)関連トピックをピックアップし、よりPOPに、より深く掘り下げていく『VTuber経済ニュース』。

第22回は、ファンが誰かを応援するために費用を支払って掲載する「応援広告」について解説する。

目次

  1. ひろがる「応援広告」「センイル広告」とは?
  2. 応援広告が掲載されるまでの流れ
  3. 著作権や肖像権、事務所の許諾と応援広告
  4. 応援広告にかかる具体的費用は?
  5. クラウドファンディングで出資を募る応援広告も
  6. データから見る応援広告

ひろがる「応援広告」「センイル広告」とは?

応援広告またはセンイル広告は、一ファンが推しのアイドルやVTuberを応援するために駅やバスなどに広告を掲示することだ。

「センイル広告」と呼ばれることがあるのは、これが元々は韓国のアイドルのファンダムの中で生まれた文化で、現地語で誕生日を意味する생일(センイル)に由来する。現在でも出資するファンは、推しの誕生日など記念日に合わせて、推しを祝うために広告を掲示することが多い。

応援広告を出稿するファンの心理としては「推しに喜んでほしい」「推しを知ってほしい」という側面が大きい。K-POPではこうしたファンの心理が暴走し、 中には借金までして資金を捻出するケースもあるとされており、飛行機に推しのイラストをラッピングさせ、2ヶ月間運航させる計画を立てるなど派手な行動に出るものもいる。

しかし、このプロジェクトを計画したコミュニティは「違法なキャンペーン」をしたとして、現地SNSの微博からアカウント停止をされている。こうした行き過ぎた行動は韓国、中国などですでに問題になっているようだ。幸い日本のVTuberファンダムからは、今のところそのような行き過ぎた行為は聞こえてこない。

第20回で触れたように、東京工業大学准教授の映画研究者・北村匡平さんは、ファンフィクション/ファンアートなどの二次創作について「ファンたちはSNSでVTuberのイメージを拡散し、無意識のうちにプロモーションにも加担する」と論文「デジタルメディア時代の有名性──〈アニメーション〉としてのバーチャルYouTuber」の中で解説している。この場合ファンが自主的に推しのプロモーションをする行為と言えるだろう。

応援広告が掲載されるまでの流れ

広告というと、これまでは法人が自社や商品のプロモーションなど営利目的で出資することが当たり前だった。しかし応援広告では、個人が非営利的な目的──推しを祝うために出資するという真逆の現象が起きている。

広告を出稿したいファンは、X(旧Twitter)やDiscordなどで出資する他のファンを募り、必要な資金を出し合う。広告出稿にあたっては、有志による専用アカウントをXに作成したり、Discordに作成した特定のVTuberファンが中心となって集まる「ファンサーバー」内で出資者を募ることも少なくない。

実は筆者も先日、にじさんじに所属する来栖夏芽さんの広告に出資をした。出資したファンは筆者以外にも約50人ほどおり、1口につき1,000円。1人につき3口まで申し込みできた。

出資した広告は実際に東京メトロ池袋駅にポスターとして7日間掲載され、ファンをにぎわせた。

掲載箇所の周辺には来栖夏芽さんの他にも、同じくにじさんじに所属するローレン・イロアスさん、戌亥とこさんのポスターも掲載されており、その一角では平日夕方に1分に1~2組程度、10代~30代くらいのファンと思しき人がポスターの撮影に訪れていた。

ポスターを撮影する人々にあわせて、道中の通行人もポスターに注目する様子が何度も見られたので、新たにそのVTuberを知る手立てになっているのではないだろうか。なお今回の来栖夏芽さんの応援広告の場合、企画立ち上げから実際の掲載までは2~3カ月を要した模様だ。

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