110

集英社はなぜ日本漫画の帝王なのか?先駆者たちが語るWebtoon業界の課題

集英社はなぜ日本漫画の帝王なのか?先駆者たちが語るWebtoon業界の課題

セッション「早くも危機を迎える日本のウェブトゥーン制作」の登壇者

10月21日から23日にかけて開催された、漫画・アニメ業界のカンファレンス「IMART2022」(「国際マンガ・アニメ祭 Reiwa Toshima」)。

セッションには、アニメや漫画の制作を行う企業の代表などが登壇。急速に変化する業界で何が起きているのか知見を共有した。例えば、アニメ『チェンソーマン』で注目されるスタジオ・MAPPAの担当者による基調講演も実施されている。

本稿では、Webtoonを扱うニュースサイト「Webtoon INISIGHHT」の編集長兼、同媒体を運営するフームの代表取締役・福井美行さんがモデレーターをつとめたセッション「早くも危機を迎える日本のウェブトゥーン制作」の内容をレポートする。

目次

李ヒョンソク、芝辻幹也、岩本炯沢、3人の登壇者について

セッションには、『俺だけレベルアップな件』など多数のヒット作を手掛けるレッドセブンの代表取締役・李ヒョンソクさん、漫画・Webtoonの制作を行うフーモアの代表取締役社長・芝辻幹也さん、編集プロダクション・シャインパートナーズと制作スタジオStudio TooNの代表取締役・岩本炯沢さんらWebtoonに携わる3人が登壇。

業界が迎えた危機や課題はなんなのか。Webtoonと漫画の違いについても意見を交わされた。

「comico」と『ReLIFE』から始まった日本のWebtoon業界

福井美行さん

セッションが始まると、福井美行さんが現在の日本国内のWebtoon事情を「PVがすごく上がってきていて、急に皆さんの注目が集まっているので戸惑っています」とコメント。

日本のWebtoonの原点として、国内初のWebtoonプラットフォーム「comico」とヒット漫画『ReLIFE』があったことに触れ、その後しばらく続いた停滞期の中で登場したのが「待てば無料」のビジネスモデルを持った「ピッコマ」であり、日本ではWebtoonの代表作として知られる『俺だけレベルアップな件』だったと振り返った。

そして「ピッコマ」や「LINEマンガ」が牽引する現在のWebtoon業界では、ファンタジー作品が需要と供給の多くを占めていることに言及。レッドセブンなどのヒットメーカーはすさまじい売り上げを出しているものの、その陰にはWebtoonに参入してみたものの思うような収益をあげられていない作品が多くあり、それこそが「早くも訪れた危機」なのだと提起した。

『俺レべ』のレッドセブン代表が語る国内の現状

李ヒョンソクさん

これに対し、登壇者である3名はそれぞれの立場から意見を交わした。

まず李ヒョンソクさんは、韓国でも日本でもWebtoonの市場は成長しており「危機は起きていない」との立場を表明。

コロナ禍での電子書籍バブルの収束、さらに海賊版の影響による電子書籍の売り上げが停滞する中、むしろWebtoonは売上を伸ばしていると述べ、「危機に陥っているのは市場分析が足りない状態で参入してきた一部に限っての話」だと厳しい意見を示した。

そもそも、Webtoonは出版を前提にしていないため、文字組みや彩色指定といった編集作業が存在せず、いわゆる編集者に相当する役割はIPや作品を管理するプロデューサーと呼ばれていると話す。

『週刊ヤングマガジン』で漫画原作者としてデビューし、2013年にはcomicoの運営に参加。長きにわたって2つの業界を経験している点から、Webtoon文化やその制作体制への誤解が生じている原因を、日本独自の漫画雑誌というシステムが関係していると語る。

李ヒョンソクさんが原作者をつとめた作品『軍バリ!』/画像はAmazonから

日本の漫画雑誌をベースとした漫画文化は長い時間をかけて進化の極致に達しているのに対し、Webtoonが文化として登場したのは2002年ごろ。

ビジネスとしてIPの制作に注力し、海外進出したのも日本に「comico」が到来した2013年頃であり、ブームと呼ばれる現在でも成立から20年ほどしか経っていない新しい文化であると説明。

上記のように、日本の漫画とWebtoonは、その歴史、人材からビジネスとしてのマネタイズ方法まで別物だ。それを認識できていないことが、一部の企業が危機を迎えてしまっている原因だと分析した。

1
2
3

こんな記事も読まれています

75
Share
4
LINE

0件のコメント

※非ログインユーザーのコメントは編集部の承認を経て掲載されます。

※コメントの投稿前には利用規約の確認をお願いします。

KAI-YOU.netでは、ユーザーと共に新しいカルチャーを盛り上げるため、会員登録をしていただいた皆さまに、ポップなサービスを数多く提供しています。

会員登録する > KAI-YOU.netに登録すると何ができるの?

コメントを削除します。
よろしいですか?

コメントを受け付けました

コメントは現在承認待ちです。

コメントは、編集部の承認を経て掲載されます。

※掲載可否の基準につきましては利用規約の確認をお願いします。

このページは株式会社カイユウのKAI-YOU.net編集部が作成・配信しています。株式会社カイユウについては、会社サイトをご覧ください。
KAI-YOU.netでは、文芸、アニメ、漫画、YouTuber、VTuber、音楽、映像、イラスト、アート、ゲーム、ラッパー、テクノロジーなどに関する最新ニュースを毎日更新中! 様々なジャンルを横断し、世界をよりワクワクさせるあらゆるポップなインタビューやコラム、レポートといったコンテンツをお届けします。

ページトップへ