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MCバトルはスポーツではない。単純に数字だけでは測れないからだ。
18章_GIL

GIL

2回戦第4試合 GOTIT vs GIL。

試合中にラップをしながらフィジカルで、手で、GILさんのケツを叩くGOTITさんに対し「ケツを叩くのは“手”じゃねぇ、“メッセージ”だ」と一蹴し、GILさんの圧勝だった。

ただ、この試合が終わった後、GOTITさんは「俺とGILは超仲良いいから! 今日一番やりたくなかったのもGILだったんだけど」と前置きして「控え室で『俺たち当たっちゃうねー』なんて言ったらボコボコにされちゃうっていうね」とハートフルなコメントを残した。

この18章、僕個人の見解としては「自分の器より大きい言葉を吐くラッパーが少なかった」ように思える。

それぞれのMCがそれぞれの境遇、それぞれのキャラクターに見合った言葉を扱っていた。自身に対する先入観に対して従順だったという言い方もできる

その分「バトルに勝つためだけに存在するような付け焼刃のライン」もほとんど無かったと感じている。
18章_呂布カルマ vs TK da 黒ぶち

呂布カルマ vs TK da 黒ぶち

2回戦第8試合 呂布カルマ vs TK da 黒ぶち。

シードの呂布さんが初めて登壇するやいなや物凄い歓声が上がった。一番人気と言っても差し支えない存在感だった。

そして呂布さんは開口一番「まだ誰も怪我人が出てねえ」と、ここまでのなんとも形容しがたい生温い空気感を変えようとした。

対するTK君の「その傷口に俺は速攻で塩対応」というラインはこの大会で一番印象に残った(呂布さんのアルバムのタイトル、というか帯文からの引用である)。

続けてTK君は「俺のこといい奴って言うけど、呂布さんもマジでいい人だって思ってる」と“呂布カルマじつはいい人説”を唱え始める。結果として呂布カルマが勝利をおさめたが、会場の空気はここまでの混沌を引き継ぎつつTK君のつくった空気感が残ったように見えた。

呂布さんの望んだ緊張感のある戦場とは異なる流れは、俯瞰者の僕としても意外だったし、特に意外だったのは僕がその空気を悪くないなぁと思っていたこと

MCバトルは殺し合いだ。怪我人がいない試合なんてつまんない

最初はそう思っていた。

TK君は「呂布さんマジでいい人なんで、これは俺的に本音の意見です」とコメントを残し爽やかに去って行った。

僕はこの感じを馴れ合いだなんて一切思わなかった
18章_小池潔宗 vs 漢 a.k.a.GAMI

小池潔宗 vs 漢 a.k.a.GAMI

2回戦第9試合 小池潔宗 vs 漢 a.k.a.GAMI。

1ヴァース目。「都知事みてぇな名前で気に食わねえ」

この一言で完全に勝利を掌握したと言ってもいい。MC漢の圧勝だ。だが、本当に面白いのはその後だった。

小池さんが敗者コメントで「ウチのカミさんの許可が出ればアレを吸える」という話をする。

そして、話の締めに「なので、漢さん! 許可が出たら吸わせてください! ウチのカミさんを説得してください!」と帰ろうとしていたMC漢に懇願する。

それに対し、あの人はこう言い放った。「小池! ……何の話だ?

その絶妙な間と言い方のトーンで会場は爆笑に包まれた。

形容しがたい生温さに対して「18章、なんかバチバチとは対照的な空気だけど大丈夫か?」なんて思っていた僕だが、この漢さんの一言で「あっ、これでいいんだ」と溜飲が下がったのを覚えている。

この日の「戦極」は負けたMCたちがいつもよりも多くの言葉を残していったように思える。それは言い換えるとそれだけ悔しかったのだと察することもできる

3回戦は「ふぁんく vs SAM」「呂布カルマ vs GOLBY」「MC漢 vs MOL53」「JAKE vs MAKA」などの好カードが続いたが特に印象深かったのは、やはりここでもバトルからはみ出した言葉だった。
18章_MOL53 vs 漢 a.k.a.GAMI

漢 a.k.a.GAMI vs MOL53

それはMC漢を相手に惜敗を喫したMOL53の口から綴られた。

言葉と言えども、それをここでそのまま文字に起こしてもあまり意味がない。

敗者コメントからそのままフリースタイルとなって彼の言葉は観客席に降り注がれた。その徐々に“ソング”が立ち上がってくる光景は憑依的で驚異的だった。

ここまで平熱のような生温さを保っていた会場が、ピアノ線のようにピンと張り詰めたことが最大の変化だったと思う。
18章_JAKE vs MAKA

JAKE vs MAKA

「大好きな先輩は無理にディスりたくねぇ」というMAKAのラインが印象深かったJAKE vs MAKA。

MAKAのレゲエフロウに「1ヴァースだけ俺も付き合おう!」とJAKEが同じくレゲエノリで合わせる。という高度な試合だった。

JAKEの3ヴァース目「1ヴァースだけっつったのに2ヴァース引きずられてんじゃねぇか! あっ、俺か!」とノリツッコミとかましながら「相変わらず玄関には鍵はかかっておらん」と自身の過去のバトルのセルフサンプリングで試合を締める。

勝者はJAKEだった。MOL53との試合を終えたMC漢は、その様子を静かに眺めていた。

準決勝へ

準々決勝第3試合 JAKE vs 漢a.k.a.GAMI。

この18章における時事ネタは大きく言えば2つあった。その2つ目がここで登場する。
SEEDA vs 晋平太/BodyBag (5分×2本アカペラ)
この試合もほとんどの観客が認知していた。それに加えて漢さんの口から綴られるという点で威力が乗算されていた。SEEDA氏から拝借した「2枚舌」というワードが会場を大いに沸かす。

「(さっきの試合で)1ヴァースだけっつったのに3本もレゲエでやってたコイツは2枚〜舌!」

漢a.k.a.GAMIの圧勝だった。

ここで漢さんへの期待値が一層高まったのは言うまでもない。
じょう

じょう

準々決勝第4試合 じょう vs mu-ton。

「ハッ? またコイツかよ、ハッ? またコイツかよ」とじょう君のセルフサンプリングから試合が始まる。

後攻の3ヴァース目。「自分が大嫌い、自分のつくった曲は大好き」というmu-ton君のラインが決定打となり、勝利を収める。

この日の「戦極」は負けたMCたちがいつもよりも多くの言葉を残していったように思える。それは言い換えるとそれだけ悔しかったのだと察することもできる。

しかし、コメントを一切残さない悔しさもある

それは観ている側に十分伝わった。じょう君の背中は言葉を要せずに語っていたのだ。
18章_GIL vs 呂布カルマ

GIL vs 呂布カルマ

準決勝第一試合 GIL vs 呂布カルマ。

この時点で前大会の戦極17章は正確に過去のものとなった。

なぜならこれが17章の決勝戦と同じカードだからだ。この二人の戦歴は2勝0敗で、GIL側に白星が付いている。

二度あることは三度ある。呂布カルマにとって非常に厳しい局面の中、待たずしてビートが試合の開始を告げる。

“レペゼン”の解釈について徹底的に討論をし合ったこの再戦は、17章の決勝戦からの正当な続編だ。

結果として、ここでは呂布カルマが勝利をおさめ、決勝行きを決める。

過去に2敗を喫している相手へのリベンジを達成したのだ。
18章_mu-ton vs 漢a.k.a.GAMI

mu-ton vs 漢a.k.a.GAMI

準決勝第2試合 mu-ton vs 漢a.k.a.GAMI。

ビートは般若「最っ低のMC」とKEN THE 390「真っ向勝負」。準決勝からは先攻のMCがバトルビートと試合の尺(「8小節4本勝負」か「16小節2本勝負」か)を選択することができる。

先攻の漢さんが16小節2本を選択すると会場は期待を高めて盛り上がった。

覚えてるか? 俺がキレミナだ」とミュージックステーションに出た時のセルフサンプリングから試合に入る。

その後も「お前も二枚〜舌なんじゃねぇか?」「お前も後で握手してくるんだろ?」「赤ん坊のおまるにハマっちまう、まるで晋平太が言ってたみてえにな!」と時事ネタとセルフサンプリングが数珠繋ぎで贅沢なまでに応酬される。

mu-ton君も4の倍数の小節で確実にパンチを打ち返し、減点のないヴァースを蹴り続けた。

判定は八文字さんの即決で「延長!」。それに対し「厳しいな! 厳しいな!」と笑いを取るMC漢。

漢さんと言えば「怖い」というパブリックイメージがあるかもしれないが、この日のあの人は頭からケツまで「ユーモア」に溢れた人だった。

「怖さ」と「ユーモア」は紙一重で表裏一体なのかもしれない。

そして、その紙一重のバランスこそが「戦極MC BATTLE 18章」の裏テーマだったような気がしてならない。

延長を制したのは漢a.k.a.GAMI。漢さんが勝ち上がることに歓喜するヘッズは多い。だが、本当に勝ち上がるとは信じ切れてないヘッズも少なくない

決勝のカードは当初眺めていたトーナメント表からは到底想像できなかったものだった。

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