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POPなポイントを3行で

  • アジアでのインディー系トイブランドが台頭
  • 台湾のブランド「PEWPEWGUN」に直撃インタビュー
  • フィギュア経験なし、他社製品から構造を学ぶ

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「既製品を買ってきて…」経験ゼロの台湾メーカーが高品質フィギュアを生み出せた理由

「PEWPEWGUN」@ワンダーフェスティバル2018[冬]

日本が北東アジア圏におけるホビーの巨大なハブであることに、疑いの余地はない

トイ、フィギュア、プラモデルに至るまで大量の商品が常時購入可能で、「ワンダーフェスティバル」のような巨大即売会が年に2回も開催されるという点で、立体を愛でる人間にとっては世界的に見ても恵まれた環境である。

しかし、日本だけが特異点というわけではない。わけても近年では、香港や台湾、韓国や東南アジアなど、アジア各国でのインディー系トイブランドの勢いが凄まじい。巨大なトイメーカーがコンテンツを押さえ込む日本のホビーシーンに比べ、これらインディー系のブランドは「自分たちがやりたいことをやりたいようにやる」という気概に満ちているのだ。

今回「ワンダーフェスティバル2018[冬]」でも、そんなアジアのトイメーカーの出展は目立っていた。その中から、精密な1/6スケールのロボットフィギュアをリリースする台湾ブランド「PEWPEWGUN」にインタビュー。 RE_MG_0196 猛烈な勢いで進化するアジアのトイ・フィギュアシーンの当事者たちの姿をお届けする。

取材・文:しげる 編集:新見直

北東アジアで台頭する、インディー系メーカー

北東アジア、わけても中国は長い間日本をはじめ各国のメーカーの製品を製造する下請けとしての時期があった。金型製作から組み立て、着色に至るまで、国内でフィギュアやトイを製造する技術的蓄積が積み重ねられてきたのである。

しかし近年、原材料費や人件費の高騰によって各国のメーカーの製品の内容や価格のバランスが激変。変わって台頭してきたのが、独自の商品を開発してネットで販売するインディー系メーカーだ。

北東アジアでのフィギュアの一大中心地としてまず名前が挙がるのは、間違いなく香港である。プラモメーカーやトイメーカーが90年代から活動しており、緻密な設計のキットから正規のライセンス商品、はたまた誰が製作したのかわからない怪しげな1/6フィギュア用のヘッド(有名俳優似)や海賊版トイなどなど、混沌とした状況で知られていた。いわばメジャーとインディーが同じ土俵で戦う場として長年機能してきたのが香港であり、現在の新興インディー系メーカーも数多く活動している。

例えば「ワンダーフェスティバル2018[冬]」では、香港のメーカーであるBEAVERのトイ「ACID RAIN」シリーズが日本の株式会社アート・ストームと代理店契約を結ぶことが発表された。「ACID RAIN」シリーズは3.75インチおよび2.5インチのフィギュアとロボット型のビークルを組み合わせて遊べるシリーズで、『Titanfall』などのSF系FPSと『GIジョー』などハズブロ系アクションフィギュアの文脈を組み合わせた感じの製品である。 さらに現在、その勢いは北東アジア各部に波及。その証拠に、今回取材させてもらった「PEWPEWGUN」は台湾で活動するブランドだ。彼らは1/6スケールの精密なロボットフィギュアを製作/販売しており、そのデザインはアーロン・ベックを始めとする近年のSFコンテンツのコンセプトアートを思わせる。 RE_MG_0212 人間用の防弾装備や既存の火器など部品も、これまで多数のアイテムが発売されている1/6スケールのアクションフィギュアから流用できる。インディー系のブランドとは思えないほど高い完成度を持ったフィギュアである。

フィギュアメーカーでの経験なし、他社のフィギュアから構造を学ぶ

今回「PEWPEWGUN」は香港のセレクトトイブランド「TOY ZERO」と合同で来日、ワンフェス会場にブースを構えた。
「TOY ZERO」ブース

「TOY ZERO」ブース

「TOY ZERO」はアジア周辺のトイデザイナーが製作した商品を取りまとめてブランディング、販売しており、図らずも香港と台湾のインディー系フィギュアブランドが合同出展したような形となっている。 「TOY ZERO」ブース 「PEWPEWGUN」を主催するのは施 淳皓氏と姚 廷諺氏。2人とも商品のデザインを担当しており、今回は施氏が主に回答してくれた。

「我々が活動を始めたのは2016年からです。元々工業系のデザイナーをやっていたんですが、SF的なテーマに興味があって、自分のデザインをそのまま形にしたいと思っていました。トイやフィギュアも前から好きでしたし。今回は日本の皆さんに我々の製品を直に見ていただきたいと思い、ワンフェスに出展しました」
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左:施 淳皓さん 右:姚 廷諺さん

まだ活動開始から2年ほど。しかも以前に他のフィギュアメーカーで働いた経験ゼロ。その時点で高い完成度の製品を投入できるのには、やはりデジタルでのモデリングの進歩があった。

施「我々の造形はフルデジタルです。最初は3Dプリンターで出力して、その後全部品をプラスチックに置き換える形で製品化しています。他のメーカーのフィギュアを買ってきて、デザインではなくその構造を参考にすることはよくあります。自分たちのデザインをその構造に組み合わせたり置き換えたりして、独自のフィギュアをつくり出していく形です」 RE_MG_0200 デジタルでの造形作業の普及が大きくオリジナルフィギュア作成のハードルを下げつつあるのは、全世界的なムーブメントであることがわかる。特にアナログの造形では難しい「精度」の面で極めて高い水準を最初から出せるデジタルでの造形は、「PEWPEWGUN」の得意とするようなメカのデザインにおいて極めて高い効果を発揮する。

相互に影響し合い活発化するアジア圏

しかし、「PEWPEWGUN」の活動も、北東アジアにおけるストリームの一部である。彼らの活動の源流には、各国からもたらされた相互の影響がある。

施「台湾でも我々のようなインディーのフィギュアメーカーは増えています。自分のデザインを立体化したければ、自分でやるしかないので。香港でも我々のような立ち位置のブランドが活発に活動しており、台湾ではそのトレンドを受ける形で増えている、という感じでしょうか。

さらに言えば、我々自身が日本のロボットのおもちゃから大きな影響を受けています。子供の頃からガンダムなど日本製のSF作品はよく見ていましたから。日本のおもちゃやロボットやキャラクターは、世界でもトップの水準だと思います」 RE_MG_0191 施氏のコメントからは、日本製のトイやフィギュア、さらにそれを製造していた中国国内と、その技術的蓄積が流れ込んだ香港、そしてその影響下で活発に活動する台湾や各国の新興フィギュアブランド、という構造が見て取れる。北東アジア圏のフィギュアやトイは、想像以上に相互の影響を受けて発達してきたのだ。

デジタルでのモデリングとネットでのボーダレスな販売方法によって、今後こういったメーカーの動きはますます活発になると考えられる。これらの動きが、今年4月6日から初めて開催される予定の「ワンダーフェスティバル上海[プレステージ]」にどのような形で現れるのか、大いに楽しみだ。

ワンフェスの気になるブースを取材してます

しげる // shigeru

Writer

1987年岐阜県生まれ。プラモデル、アメリカや日本のオモチャ、制作費がたくさんかかっている映画、忍者や殺し屋や元軍人やスパイが出てくる小説、鉄砲を撃つテレビゲームなどを愛好。好きな女優はメアリー・エリザベス・ウィンステッドとエミリー・ヴァンキャンプです。
https://twitter.com/gerusea
http://gerusea.hatenablog.com/

しげる

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