7月30日に開催された「ワンダーフェスティバル2017[夏]」(以下ワンフェス)。大手メーカーから個人のディーラーまで、大量の立体作品が入り乱れたが、その中で、国民栄誉賞までも受賞する活躍を見せ、昨年7月31日に惜しまれつつも61歳で亡くなった第58代横綱 千代の富士 貢を題材にしたガレージキットが発売されていたのをご存知だろうか。
なんせワンフェスでの販売物といえば美少女キャラクターやメカ・ロボット、はたまた怪獣やクリーチャーといったモチーフが多くを占める。そんな中で力士、しかも実在する特定の力士を題材にした作品が販売されるのは珍しい。
このキットを製作されたのは、ディーラー「AMON WORKS」を運営するフリー原型師、AMON/阿紋さんだ。フルデジタルでの原型製作を得意とし、バットマンや『TIGER & BUNNY』のようなアメコミ的なディテールを持ったキャラクターを中心に、美少女キャラクターやLADYBEARDまでも手掛ける。造形対象の"見せ場"をフックアップすることに長けた、オールラウンダーの原型師である。 1周忌を翌日に控えたこのタイミングで出展・販売開始されたキットとあって、かねてから一部の注目を集めた千代の富士フィギュア(ガレキ)。製作の背景や経緯はどのようなものだったのだろうか?
文:しげる 撮影:Diora 編集:新見直
「実在する人物なのに、そのビジュアルや戦歴、生きた伝説のような存在感とか、まるでフィクションの登場人物みたいですよね。デフォルメを加えず本人そのままでフィギュアにしてもアスリート的な迫力があって絵になる。相撲を取るためだけについた無駄のない筋肉も立体として本当に魅力的ですし、絶対につくってみたかったんです」 どうしても千代の富士のフィギュアをつくって世に問いたい! そう思ったAMONさんは、今年2月、いきなりアポなしで千代の富士が親方を務めた九重部屋の扉を叩いた。
「『フィギュアつくりたいんですけど……』って電話をかけても何がなんだかわからないだろうし、怪しまれて断られてしまったらそこで終わりだと思ったんです。だから直接『千代の富士つくりたいんですけどどこにお聞きしたらいいですか』と訪問させていただきました」
驚くべき行動力である。普通なら追い返されそうだが、九重部屋の対応は丁寧だった。
「最初にアポなしで行った時はまずお弟子さんが出てきてくれて、『自分じゃよくわからないんで女将さんに聞いてもらえますか』とご自宅まで案内してくれたんです。でもその時は留守だったので、九重部屋の後援会事務局の連絡先を教えてもらって、そこの代表の方から女将さんに連絡を取っていただきまして。自分の過去の作品とかをお見せしたら『是非製作してください』ということで快諾していただけました」
「普段3Dで原型をつくる時に使っている、マッチョな男性の汎用素体データがあるんです。それをキャラクターの体型に合わせて調整しながら仕上げていくんですけど、千代の富士の原型をつくり始めたら筋肉の量が全然足りない。なので全身いたるところに大量に筋肉を盛ることになりました。実在の人物なのにフィクションの登場人物より筋肉量がずっと多いって本当にすごいですよね……。ボリュームがどんどん増して、3Dデータの出力費が普段の倍かかりました」
そしてAMONさんの千代の富士製作には、最高の監修がついている。
「今回の立体化では、女将さんやご家族の方に監修していただき、顔や体型を極力生前の千代の富士に近づけています。ただ、顔立ちはちょっと若くしています。横綱昇進時を再現したフィギュアなんですけど、その時点ではもうちょっと年季の入った感じの顔立ちなんですよね。なので、女将さんが一番好きな時期の顔立ちと全盛期の体格を組み合わせた感じです。特に体格に関しては、ご家族の方からも完璧と言っていただけました」 まさに九重部屋公認フィギュア! 確かに腰の後ろから太ももにかけてうねるように彫刻されている筋肉や、肩から胸にかけてのボリューム感、さらに脂肪の層を通しても割れているのが薄く見て取れる腹筋などなど、凄まじい再現度だ。
千代の富士が横綱に昇進、「ウルフフィーバー」と呼ばれた年は1981年。彼の最も輝かしい現役時代を知る熱心なファンは、40代以上が中心なのだろう。この年代のユーザーに、組み立てに関して独特のコツがあるガレージキットをいきなり販売するのはちょっと難しいかもしれない。
「まだ準備はこれからなんですけど、受注数次第では塗装済みの完成品も、キット版とそれほど変わらない価格(12000円)でいけるのではないかと。塗装済みのものは横綱千代の山・千代の富士記念館と九重部屋、あと『うるふ』っていうちゃんこ屋さんにも置いてもらえる予定なので、そちらでも見ていただけるはずです」 奇しくも今日は千代の富士の一周忌にあたる。千代の富士が選出されるかは不明だが、テレビ朝日では本日7月31日(月)19時から3時間、相撲特番として「力士・親方70人&ファン1万人がガチで投票!大相撲総選挙」が放送される。
また8月20日の19時からBSフジにて特番『ありがとう千代の富士 特別版』も放送される。最高の造形美を備えた名横綱をしのびつつ、塗装済み完成版の発売も楽しみに待ちたい。数ヶ月以内には受注開始予定とのことで、AMONさんのTwitterアカウント(@amonworks)をフォローして見逃さないように!
大迫力の「千代の富士」フィギュア画像をもっと見る
なんせワンフェスでの販売物といえば美少女キャラクターやメカ・ロボット、はたまた怪獣やクリーチャーといったモチーフが多くを占める。そんな中で力士、しかも実在する特定の力士を題材にした作品が販売されるのは珍しい。
このキットを製作されたのは、ディーラー「AMON WORKS」を運営するフリー原型師、AMON/阿紋さんだ。フルデジタルでの原型製作を得意とし、バットマンや『TIGER & BUNNY』のようなアメコミ的なディテールを持ったキャラクターを中心に、美少女キャラクターやLADYBEARDまでも手掛ける。造形対象の"見せ場"をフックアップすることに長けた、オールラウンダーの原型師である。 1周忌を翌日に控えたこのタイミングで出展・販売開始されたキットとあって、かねてから一部の注目を集めた千代の富士フィギュア(ガレキ)。製作の背景や経緯はどのようなものだったのだろうか?
文:しげる 撮影:Diora 編集:新見直
フィギュアにしたくて、アポなしで九重部屋を訪ねた
AMONさんが千代の富士を製作することになった理由は、力士としては小兵ながら引き絞られたその圧倒的な体格、そして通算1045勝・優勝31回という猛烈な戦歴からくる文句なしのかっこよさだった。 確かに、千代の富士の精悍な顔立ちと筋肉質な体つきは「ウルフ」の愛称に寸分違わない、独特のシャープさがある。「実在する人物なのに、そのビジュアルや戦歴、生きた伝説のような存在感とか、まるでフィクションの登場人物みたいですよね。デフォルメを加えず本人そのままでフィギュアにしてもアスリート的な迫力があって絵になる。相撲を取るためだけについた無駄のない筋肉も立体として本当に魅力的ですし、絶対につくってみたかったんです」 どうしても千代の富士のフィギュアをつくって世に問いたい! そう思ったAMONさんは、今年2月、いきなりアポなしで千代の富士が親方を務めた九重部屋の扉を叩いた。
「『フィギュアつくりたいんですけど……』って電話をかけても何がなんだかわからないだろうし、怪しまれて断られてしまったらそこで終わりだと思ったんです。だから直接『千代の富士つくりたいんですけどどこにお聞きしたらいいですか』と訪問させていただきました」
驚くべき行動力である。普通なら追い返されそうだが、九重部屋の対応は丁寧だった。
「最初にアポなしで行った時はまずお弟子さんが出てきてくれて、『自分じゃよくわからないんで女将さんに聞いてもらえますか』とご自宅まで案内してくれたんです。でもその時は留守だったので、九重部屋の後援会事務局の連絡先を教えてもらって、そこの代表の方から女将さんに連絡を取っていただきまして。自分の過去の作品とかをお見せしたら『是非製作してください』ということで快諾していただけました」
女将さん監修の「九重部屋公認フィギュア」
製作中には、3Dデータでの原型作成というプロセスからくる、千代の富士の体格への驚きもあった。「普段3Dで原型をつくる時に使っている、マッチョな男性の汎用素体データがあるんです。それをキャラクターの体型に合わせて調整しながら仕上げていくんですけど、千代の富士の原型をつくり始めたら筋肉の量が全然足りない。なので全身いたるところに大量に筋肉を盛ることになりました。実在の人物なのにフィクションの登場人物より筋肉量がずっと多いって本当にすごいですよね……。ボリュームがどんどん増して、3Dデータの出力費が普段の倍かかりました」
そしてAMONさんの千代の富士製作には、最高の監修がついている。
「今回の立体化では、女将さんやご家族の方に監修していただき、顔や体型を極力生前の千代の富士に近づけています。ただ、顔立ちはちょっと若くしています。横綱昇進時を再現したフィギュアなんですけど、その時点ではもうちょっと年季の入った感じの顔立ちなんですよね。なので、女将さんが一番好きな時期の顔立ちと全盛期の体格を組み合わせた感じです。特に体格に関しては、ご家族の方からも完璧と言っていただけました」 まさに九重部屋公認フィギュア! 確かに腰の後ろから太ももにかけてうねるように彫刻されている筋肉や、肩から胸にかけてのボリューム感、さらに脂肪の層を通しても割れているのが薄く見て取れる腹筋などなど、凄まじい再現度だ。
塗装済み完成版も販売予定
「今回のワンフェスではキットの形式で販売しましたけど、年内には塗装済みの完成品を販売しようと思っています。やっぱり相撲のファンの方にガレージキットを組んで塗装していただくのは無理があると思うので……」千代の富士が横綱に昇進、「ウルフフィーバー」と呼ばれた年は1981年。彼の最も輝かしい現役時代を知る熱心なファンは、40代以上が中心なのだろう。この年代のユーザーに、組み立てに関して独特のコツがあるガレージキットをいきなり販売するのはちょっと難しいかもしれない。
「まだ準備はこれからなんですけど、受注数次第では塗装済みの完成品も、キット版とそれほど変わらない価格(12000円)でいけるのではないかと。塗装済みのものは横綱千代の山・千代の富士記念館と九重部屋、あと『うるふ』っていうちゃんこ屋さんにも置いてもらえる予定なので、そちらでも見ていただけるはずです」 奇しくも今日は千代の富士の一周忌にあたる。千代の富士が選出されるかは不明だが、テレビ朝日では本日7月31日(月)19時から3時間、相撲特番として「力士・親方70人&ファン1万人がガチで投票!大相撲総選挙」が放送される。
また8月20日の19時からBSフジにて特番『ありがとう千代の富士 特別版』も放送される。最高の造形美を備えた名横綱をしのびつつ、塗装済み完成版の発売も楽しみに待ちたい。数ヶ月以内には受注開始予定とのことで、AMONさんのTwitterアカウント(@amonworks)をフォローして見逃さないように!
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立体造形は沼だ!!!
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