連載 | #8 コミックマーケット102特集

広がり続けるTRPG、コミケ参加者はどう感じてる? まだら牛や鈴木翔平らの実感

ニコニコ動画で人気のニコライ・ボルコフが、コミケに出展する理由

ニコライ・ボルコフさん

TRPGエリアには、ニコニコ動画で長らくTRPGの動画を投稿し続けているサークル「日本語読めない卓」のニコライ・ボルコフさんも参加していた。

ニコライさんは今回、同じくニコニコ動画で人気の「酔っ払い卓」メンバー・妙楽さんとともにTRPGシステム『シノビガミ』のシナリオ集「所詮は娑婆の一生」を共作。 アナログゲームの即売会である「ゲームマーケット」ではなくコミケを頒布の場として選ぶ理由を尋ねると「僕の場合はニコニコ動画から知ってくれている人が多くて。そういう人たちは、ゲムマよりもコミケの方が来てくれやすいんです」と教えてくれた。

会場の活気については「コロナ前に比べたら(コロナ禍では)だいぶ落ち着いていましたが、今回はだいぶ活気が戻ってきていますね」とコメント。

一方で、コロナ以前とは様変わりしてしまった部分もあったようで、「コロナ禍のイベント制限でコミケ自体に出展できるサークル数が絞られてしまい、TRPGに壁サークル(※)が割り当てられなくなってしまったんです」と、ジャンル自体のコミケへの影響力が減ってしまっていることを吐露。

コミケにおけるTRPGというジャンルの盛り上がりについては、まだら牛さんと同じく「何年も前から同じくらいだと思います」とのことだった。

※壁サークル 混雑が予想されるため、購入者の列が形成しやすいよう通路の広い壁際に配置されるサークルのこと。壁際に配置されるということは、運営からそれだけ人気があるサークルだと認められたということの証左でもある

ほほえましい場面を見せてくれた鈴木翔平

鈴木翔平さん

もう一人お話を聞いたのが、静岡県掛川市とTRPGを掛け合わせるプロジェクト「掛川TRPG先進都市化計画」の一環として制作された『エモクロアTRPG』のシナリオアンソロジー「掛川シ集」などにも参加する配信者・鈴木翔平(すずき)さん。

今回は「掛川シ集」と、『エモクロアTRPG』のシナリオ「超推理!トッテツケ探偵社 トテタン」を頒布。 今回のコミケの盛り上がりについて鈴木翔平さんは、「今年はコミケ自体に来てる人がめっちゃ多いですよね。その流れで、TRPGの方にも人が来てます」「TRPG島全体で見ても並ぶところには人が並んでいるし、例年より盛り上がってると思います」とコメント。

一方で、「2日間開催になってから(TRPGジャンルでの)壁サーがなくなっちゃってるんで。もうそろそろ返してほしいですね」と、やはり壁サークルがなくなっている状況に苦慮をのぞかせた。

小学生くらいの子どもが、お札を握りしめながら新刊を両方購入し、鈴木翔平さんに「応援してます!」と声をかけていたのが印象的だった。

ここまで若い世代からの応援は鈴木翔平さんにとっても珍しいことだったようで、「ほぼ初めてクラスですね」と嬉しそうに語ってくれた。

「掛川TRPG先進都市化計画」など、TRPGというカルチャー自体がこれまでの枠を超えて広がっていることが新たなファン層の獲得につながっているのかもしれない。「その可能性はあると思いますね」。

TRPGは同人文化の枠だけには収まらなくなり始めている

全てのシナリオが世界観やルールをまとめた「システム」の2次創作にあたるということもあり、かつてのTRPGは同人文化としての側面が強かった。

もちろん、これからもそういった側面がなくなることはないだろう。

しかし、鈴木翔平さんと小さなファンとの交流は、今のTRPGがもはや単なる同人文化という枠だけには収まらないものになってきているのではないかと感じさせてくれる一幕だった。

TRPGという遊びは、脳内のイメージと参加者たちのコミュニケーションによって物語をつくっていくため、普段TRPGで遊んでいる筆者としては、どうしても対象年齢が高いものだと思っていた。

コミケという場も、成人向け作品が多く流通したり、夏は夏で冬は冬で体調管理や入念な準備が必要だったりと、決して子供が来やすい場所とは言い難い。

だからこそ、鈴木翔平さんと小さな子供の交流には大きな価値があった。これからも、そういった新規のファンたちが育まれていくことで、新たな盛り上がりをつくっていってくれることだろう。
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連載

コミックマーケット102特集

2023年8月12日(土)・13日(日)の2日間にわたって東京ビッグサイトの東・西・南展示棟(サークル・企業ブース)で開催される「コミックマーケット102」(C102)を特集。 近年はコロナ禍の影響で、来場者数の上限をはじめ様々な制限を設けてきたコミケ/コミケット。しかし、今回の夏コミではそれらを大幅に緩和。 各種のガイドラインが廃止されたことを受け、1日あたりの来場者数の上限を撤廃し、さらに当日午後からの入場が可能になるなど、かつての熱狂を取り戻す準備が整いつつある。

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